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第358話

「貴様はもう少し自重をだな」


「はい、大変申し訳ございませんでした……」


 戦いが終わり何故かベーラに説教をされている。

 その光景を見ている三人の会話が後ろから聞こえてくる。


「春名がボスモンスターに説教されている。記念写真を撮っておこう」


「俺も撮っておこう」


「ナツキ、僕にもあとで送って」


「兄貴も自分で撮れよ」


 この三人は他人事だと思って……


「話を聞いているのか?」


「はい、大変申し訳ございませんせした……」


「はぁ……明日には元通りになるしこのくらいにいておいてやろ」


「はい、大変申し訳……はあ? 明日には直んの! じゃあこの説教の時間は!?」


「決まっておるだろう、ただの八つ当たりだ。ほれ、さっさとこの核を持って去れ」


 ベーラは目の間に霜の巨人の核とひときわ大きい真核と言う素材を放り投げた。


「二度と来るのではないぞ」


「ちょっと待った。聞きたいことがあるんだ」


 俺は立ち去ろうとしているベーラを止める。


「……彼女は森林の守護者、獣たちの友、野生の美しさを愛する者。夜空に輝く月の光を操り、狩りの女神として称えられる。草原を走る鹿や、森の生命たちを彼女の愛と保護の下に守る。我が伝えられるはここまでだ」


 ベーラは言い切ると突然吹雪が吹き荒れて、気が付くと雪景色が広がる地上に戻されていた。

 俺はマップを開いて場所を確認した。


「マップを見る限りだと山の麓みたいだけど、山が無くなっているな」


「あんな大きいの一瞬で消せるんだ。流石はボスモンスターってとこだな。あーあ。俺も戦いたかったなぁ~」


「まだベーラを含めて五体はボスモンスターがいるからいつか戦えるさ」


「それもそうだな……あ、今何時?」


 ウインドウ画面を見ると夜の七時を過ぎていた。


「夜の七時過ぎたところだけど」


「マジ? やっべぇ急いでログアウトしないと! 先に落ちるな」


「お、おう」


「アキさん、ナツキさん。お先に失礼します!」


「お休み~」


 そそくさとログアウトした颯音を見送り、アキさんとナツキさんと別れてから俺は拠点に一旦戻ってから海原エリアの街に転移をした。そのまま中層にあるオピオさんの店に向かった。


「オピオさん、居ますか~?」


「痛っ」


 お店の奥から声が聞こえて進んで行くと、床に本を散らばらせて尻餅をついているオピオさんの姿があった。


「イテテ……お、ハルナか。いらっしゃい」


「大丈夫ですか?」


「ちと足を滑らしてしもうてのう」


 散らばっている本を拾いあげて、オピオさんと一緒に片付けた。


「助かったのう。それで今日は何用じゃ?」


「素材が揃ったので持ってきました」


 俺はインベントリからオピオさんが指定した素材を並べていく。


「セフィロトドラゴンの果実、リヴァイアサンの鱗、サンドデスワームの生き血、キングヴェノムコブラの毒液の四つに、上位素材の百竜眼の邪眼に霜の巨人の真核と。上位素材がもう一つ増えているのは予想外ではあるが、無事に儂の依頼は達成したの。約束の報酬だ。マップを開いてくれ」


 マップを開いてオピオさんに見せた。


「人魚族の街は……ここじゃ」


 オピオさんは俺がまだ探索をしていない未知の場所を指した。


「ほぼマップの端の方か……」


「街からもお主たちの拠点からもかなり離れた場所にあるから時間に余裕を持って行くがいい」


「わかりました。ありがとうございます、オピオさん」


「気を付けて行くのだぞ」


 オピオさんのお店を後にして拠点に戻る。外にはウィルとルラーシャの姿は無く、ウィルの部屋の電気が点いていた。

 ウィルの部屋に行きドアをノックするとウィルが開けてくれた。


「ウィル、今大丈夫か?」


「はい。大丈夫ですけど、何かありましたか?」


「ルラーシャもいる?」


「ハルナ、呼んだ?」


 ウィルの後ろからルラーシャが顔を出す。


「丁度二人揃ってるし、伝えるな。人魚族が住んでいる場所がわかった」


「ほ、本当なの……?」


「ああ。さっき素材が揃って見せに行ったんだよ。その報酬で場所を教えてもらった」


「ありがとうハルナ!」


 ルラーシャは嬉しさのあまり俺に抱きついてきた。


「これから行くんでしょ?」


 そう言われては頬を掻いた。


「本当は今すぐにでも行きたいんだけどさ、かなり離れていて時間が掛かるんだよ。それで悪いんだけど明日にしようと思う」


「明日……」


「ごめんな。俺の都合のせいで……」


「ううん。大丈夫。これぐらい平気だよ」


「そうか。じゃあ俺はこれで落ちるよ。明日の夕方ぐらいに来る」


「わかりました」


 拠点の自室に入り俺はログアウトした。


「はぁ……喉乾いた」


 部屋を出て冷たい水を飲んでいると玄関のドアが開く音がした。


「お帰り兄ちゃん。なんか飲む?」


「……コーヒーで」


「了解」


 部屋着になって戻ってきた兄ちゃんに淹れたてのコーヒーを渡す。


「仕事忙しい感じ?」


「そんなところ。まぁ明日は休みだけど」


「それなら明日の弁当は自分で作るよ。兄ちゃんはゆっくり休んで」


 兄ちゃんは俺の頭に手を置く。


「そんなに疲れてはいないから明日は俺が作るよ」


「兄ちゃんがそう言うならわかった。じゃあ俺は部屋に戻るね」


 部屋に戻った俺は少し勉強してから眠り就いた。

 

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