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第36話

 街の西側に歩いていくとカンカンと鉄を叩かく音が聞こえてくる。少し歩くと作業着姿の人がちらほら見かけてきた。

 ここら辺は鍛冶屋が並んでいるけど奥に進めば色んな生産職のお店が並んでいる場所だ。

 ちなみに生産職をやるには最初の武器を選ぶ段階で生産系の武器を選ぶか、この前調べて分かったことだけど組合所で申請すればなれるらしい。


「颯音、どんなのにするか決めているのか?」


「特にはないけど、カッコいいのがいい!」


「大雑把だな~」


 そう言いながらどの店に入るか歩きながら悩んでいると他の鍛冶屋と違ってお店の外には一切装備類はなく小奇麗なお店を見つける。


「こういうお店って拘り強そうだけど、カッコいいのが揃っている気がする!」


「どういう理屈だよ!」


「とにかく入ってみよう」


 先に颯音が入り、俺は後に続いてお店に入る。

 中はそこそこ広く等間隔に色んな装備を着たマネキンが置かれていた。


「おお、カッコいいのいっぱいだ!」


 颯音はワクワクしながら店内を回る。本当にこういうの好きだよな。

 今の装備で十分満足しているから要らないけど見ているだけでも楽しい。


「お客さんかい? いらっしゃい」


 声を掛けられ振り向くと眼鏡をかけていてエプロン姿の優しそうでのんびりした性格そうな男性が立っていた。

 名前を見ても表記がないってことはプレイヤーだな。この店の店主かな?


「僕はアトラ。この店の店主をしているよ」


「俺はハルナって言います。で、あっちに居るのが友達の」


「ハヤトです! ここにあるの全部アトラさんが製作したんですか!」


「うん。製作したのもあるけど、ダンジョンでドロップしたのも飾ってるよ」


「おお、すっげぇ! ちなみにどれですか!」


「あっちにあるよ」


 颯音を連れてアトラさんが案内して装備の説明をする。颯音は真剣な表情で真面目に聞いている。

 少しは勉強に回せよと俺は内心思った。

 一通り説明が終わると颯音が話し出す。


「あのアトラさん装備製作を依頼したいんですが……いくらぐらい掛かりますか?」


「製作する防具によって変わるし、素材持ち込みかどうかで変わるからね。ちなみにイメージとかあるかな?」


「あ、はい!」


「ここじゃあれだし個室に案内するよ。えっと……ハルナくんだっけ? ちょっと友人を借りるよ」


「あ、はい。どうぞ気が済むまで話し合ってください」


 アトラさんと颯音は奥の部屋に消えていく。

 取り残されたけどどうしようか。暇だしコガネとシロガネのステータスを見よう。


「コガネ、シロガネ」


 二体を呼び出すと初めての光景でキョロキョロと見渡して俺に寄り添ってくる。なんか可愛いな。


「ここ、お店の中だから大人しくしてるんだよ」


 そう言いながらコガネには串焼きを、シロガネには蜂蜜を上げる。

 大人しく食べている間にステータスを確認。

 まずはシロガネからだ。

 レベル15になったシロガネ。新しいスキルは二つ。

 集めた蜜を味方に当てると体力が回復する【蜜団子】。初めての回復技、使用回数は五回と少ないけど地味に嬉しい。もう一つは粘着力のある蜜を相手に当て機動力を奪う【ハニートラップ】の二つだ。

 シロガネの進化の項目は進化条件はどれも不明。コガネと同じと考えるならレベル18が条件の一つの筈……多分だけど。


「ビー?」  


 ステータスを確認しているとシロガネが腕に掴まって見上げてくる。俺は空いている手で軽く頭を撫でた。

 コガネのステータスをっと。


「おお、進化条件達成してる!」


 しばらく見ない間にスキルの使用回数の条件も達成されていて、レッドスパイダーとイエロースパイダーに進化できるみたいだ。

 食べることに夢中になっているコガネを持ち上げ正面に向ける。


「シュ!」


 ご飯を邪魔されてコガネは怒り出す。


「ごめんごめん。少し真面目な話がしたいんだ」


 雰囲気を察したのかコガネが大人しくなって見つめてくる。


「コガネ、条件を達成して進化出来るようになったんだ。俺はコガネの進化を見てみたいけど、進化をするかどうかはお前が決めてくれ。コガネの意思を尊重するよ」


 言い終わるとコガネが急に光りだし俺は慌てて床に置いた。

 光が収まると濁っていた黄色の体色は明るめの黄色に変わり、四つ瞳は黒から赤く染まり、大きさは膝近くまで大きくなって、腹部にあった特徴的な紋様の見た目も大きく変わった。

 姿が変わったコガネのステータスを俺は確認して名前を呟いた。


「イエロースパイダ-……」




次回更新予定は8/24です。

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