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第357話

 アキさんを連れて祭壇がある場所に向かう。


「ナツキ、少し寒いから炎を纏ってくれない?」


「俺を暖炉かなにかと思ってる……?」


 アキさんとナツキさんの会話が聞こえてきて、翅を一つを二人の方に移動させる。


「温かい……ハルナ君ありがとう」


「まだ寒かったら言ってください」


「十分だよ」


「便利な翅だな。一つ一つ動かせるのか?」


 翅に手を当てながら温まっているナツキさんが尋ねてくる。答えるより見せた方が早いと思い、残りの翅を別々に動かした。


「へぇーすげぇな。戦い方次第でかなり応用して使えそうだ」


「はい、自慢の仲間の共鳴ですから」


「そうか。なんか俺もテイムしたくなったなぁ~」


「卵が見つかったらいつでも孵化装置を貸しますよ」


「マジで? それなら全力で卵を見つけないとな」


「そろそろ見えてきた。降ります」


 祭壇が見えて近くに着地すると、突然強風が起きて瞬きしている間にベーラが姿を現した。


「逃げなかったことを褒めてやろう!」


「協力してまで湧く条件を揃えてるんだ。逃げる訳ないだろうが。さっさと始めてくれ」


「ふん。良い心掛けだ……ここにいる者共で挑むのだな?」


 俺は首を横に振った。


「いいや、俺一人だ。この三人は観戦」


「精々巻き込まれないようにすることだな」


 ベーラは踵を返して祭壇の方に歩いて行き、触れると祭壇が光り、大きな揺れと共に三つの顔と複数の腕の巨人が姿を現した。


「っ! いきなり霜の巨人かよ……!」


 霜の巨人は咆哮を上げると、地面から鋭利な氷が突き上げてきて急いで上空に逃げる。広範囲の攻撃で颯音たちにも攻撃が向かうが三人はそれぞれ対処してくれた。

 ベーラが言っていた巻き込まれないようにってこういう事か。あいつが俺のことしか見ないようにダメージを与えないとだな。


「アカガネ、あいつの足を潰すぞ」


『操作はハルナがする?』


「アカガネに任せるよ。思いっ切りやってくれ」


『任せて。【神炎の槍】』


 二枚の翅が高速回転しだし金色の炎を放ち飛行していく。翅は分厚い足を難なく貫いて穴が開き、そこから霜の巨人の体勢が崩れた。霜の巨人の足を一撃で貫くとは神の加護は伊達じゃないな。


「馬鹿な!?」


 高みの見物をしていたベーラが驚愕の声を上げた。


「貴様! 神の系譜と出会ったのか!」


「ご想像にお任せするさっ!」


『【神炎の火球】』


 四枚の翅が動き出し金色の炎を一点に集めて火球を作り、倒れている霜の巨人に放つ。霜の巨人は地面を殴り、氷の壁をいくつも作りだし攻撃を防いでいく。


『これならどう! 【神炎の流星】』


 八枚の翅から金色の小さな火球が流星のように降り注ぐ。


「グオオオオオオ!」


 霜の巨人は対抗して氷柱を放つもアカガネの方が手数が多く押し切り、体力をどんどん削っていく。七割を切ると、魔法陣が現れて新たに霜の巨人が二体召喚された。


「二体も追加は聞いてないぞ!」


「貴様に言われたくないわ! 神の系譜と縁を繋ぎおって!」


 神について知っているようだしちょっと言ってみるか。


「こいつらを倒せたら一つだけ質問に答えてくれるか?」


「ふん。傲慢は身を滅ぼすぞ?」


「答えてもらうからな! クロガネ、行くぞ」


『……面倒くさいんだけど』


「そう言うなよ【共鳴技・エレメンタルドリル】」


 面倒くさそうに言うもクロガネは共鳴をしてくれて巨大なドリルが右腕に装着された。


「【エンチャント・ブレイズ】」


 ドリルの色がみるみるうちに真っ赤に変わり高速回転しだす。

 新しくなったクロガネの共鳴技はドリルに五つの属性を付与できるようになった。


『アカガネ、これ使うね』


『……好きにして』


 四枚の翅がドリルの周囲に取り付くと更に回転が早まる。


「ぶちかましてこい、アカガネ!」


『うん!』


 翅から金色の炎が放出され右腕に装着された巨大なドリルが唸り、凄い速さで右腕から発射された。

 一体の霜の巨人はいくつも分厚い氷の壁を作りだして、残りの二体は巨大な氷塊を飛ばしてくる。発射されたドリルは方向を変え、飛んでくる二個の氷塊を難なく砕いた。そのまま、ドリルは氷の壁も貫通し、霜の巨人の腹部を貫いて、二体にぶつかり体力が半分まで削れた。


「ぐぬぬ! 我の眷族が負けるわけにはいかないのだ!」


 モンスターの足元に魔法陣が展開されると、もう二体の霜の巨人が現れ、五体のモンスターは一つになり更に巨大化した。


「体力が全快するのズルくねぇか!?」


「ハハ! 負けるのは貴様だ!」


 体力が回復した霜の巨人を見ていると、体が光り出して、自分のステータスがかなり上昇をしていることに気付く。


「ハルナ君ー! 頑張れー!」


 手を振っているアキさんを見ると四体の召喚獣を呼んでいた。この上昇したステータスはアキさんのバフか。これなら勝てる。


『ハルナ、そろそろ限界だから決めて』


 俺は頷き、八枚の翅を円になるように配置。手を伸ばすと弓が表れ、弦を引くと金色の炎で出来た矢が生成された。


「【共鳴技・アガナベレア】」


 俺が放った矢は空に向けて飛翔し、雲を突き破って、雲が晴れると魔法陣が展開され、無数の矢が降り注いだ。

 矢が止むと霜の巨人は消滅していた。


「貴様! 雪山の雪ごと解かすとかやり過ぎだ!」


 周囲を見渡すと雪が一切なくなり、緑の大地が姿を見せる。観戦していた三人に視線を向けるとドン引している表情をしていて、俺は苦笑いを浮かべた。


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