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第356話

 ボスモンスターが目の前に現れて颯音と海都、ナツキさんの三人は武器を構えた。


「……何しに来た」


 ボスモンスターのベーラは三人を見渡してから俺の方に視線を向けてくる。


「なぁに、我が眷族の出現条件が揃ったから案内してやろうとわざわざ来てやったのだ。喜ぶがいいぞ!」


 ベーラが指をぱちんと鳴らすと祭壇が後方に現れた。


「さぁ! 抗ってみせ――」


「ちょっと待った!」


 ボスモンスターが今にもアイスタイタンを呼び出そうとしていて俺は止めた。


「な、何故止めるのだ?」


「悪いんだけど、これから夕飯だからさ、その後でもいいか?」


「夕飯、だと……?」


 ウインドウ画面の時間は夕方の五時と表示されていた。予想以上にアイスゴーレムとロックゴーレムの討伐に時間が掛かってしまったな。


「本当は挑みたいけどさ……夕飯の時間を過ぎてやってるの知られたら兄ちゃんに怒られてからの没収されての二度とこの世界に来れなくなっちゃう可能性があるんだよ」


「そうなのか……? うぬ……そのような事情なら仕方ない。その、夕飯が終われば挑むのだな」


「おう、勿論来るさ。アイスタイタン……いや、霜の巨人は俺が倒しにな」


「ふん。では、待っておるぞ!」


 そう言ってボスモンスターのベーラは突然吹き荒れた吹雪に紛れて姿を消した。


「春名、あのボスモンスターと知り合い? めっちゃ自然に話してんのびっくりなんだけど」


「その様子だと他のエリアのボスモンスターも会ってそうだな」


「俺が会ったのは樹海と雪原だけ。他のエリアは知らん」


「ふーん、まぁいいや。そんじゃ夕飯後は霜の巨人?を倒すんだな。やる気が漲ってきた!」


「やる気満々なところ悪いけど、俺一人でやるから」


「ええ、なんでよ。一緒にやった方が楽勝だぜ?」


「一度、そいつに敗北したんだよ。だから一人でリベンジをしたいんだ」


 そう言うと颯音は溜息をついた。


「わかったよ。今回は譲るけど、観戦はいいよな? 春名の全力が見れそうだし」


「うーん、まぁそれならいいけど」


「よし、じゃあ夕飯終わったら集合な。海都はどうする?」


「俺は夜から予定があるからいけない」


「そうなんだ。雫恩とデートとか?」


「黙秘権を行使する」


 ニヤニヤする颯音と面倒くさそうな表情をしている海都を見ているとナツキさんが話しかけてくる。


「なぁ、俺も観戦してもいいか?」


「ナツキさんも? うーん、別にいいですけど……」


「ボス戦の情報って貴重だから助かるよ。夕飯終わってからだから、一時間後ぐらい?」


「それぐらいかな。場所は雪原エリアの街でいいですか?」


「雪原エリアの街だな。了解した」


 そう言ってナツキさんは転移して去って行った。その後、残った俺たちは拠点に戻ってからログアウトした。

 ヘッドギアを外して部屋のドアを開けてリビングの方を見ると、電気は付いていなかった。あれ? 兄ちゃんまだ帰ってない?

 スマホを見ると兄ちゃんから連絡が来ていて、遅くなるから夕飯はいらないとのこと。兄ちゃんの分は作らなくていいし残り物で夕飯を済ますか。

 冷蔵庫にある残り物を温めてぱぱっと夕飯を済まし、軽くシャワーを浴びた。明日の準備をしていると丁度時間になり、再びヘッドギアを付けてログインした。


「おっす。春名も今来た感じ?」


 俺の少し後に颯音もログインをした。


「今来たところ。ナツキさん待っているし、もう移動をしよう」 


「おう」


 ナツキさんにメッセージを送ると転移門の近くにいるとのことで、急いで雪原エリアに転移して、少し歩いて転移門に向かう。


「おーい、ハルナ、ハヤト! こっちだ!」


 ナツキさんの声が聞こえて視線を向けると、ナツキさんの他にアキさんも居た。


「アキさんとトオルさん? なんでこの二人が?」


 ナツキさんに尋ねると答えてくれた。


「丁度仕事帰りだった兄貴は俺が誘った」


「ほぼ無理無理だったけどね」


 膝にビャッコを乗せて撫でいるアキさんは苦笑いを浮かべていた。


「それじゃ行きますか」


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