第355話
少し飛行してモンスターの群れを見つけて中心に降り立つと、擬態をしていたモンスターたちは一斉に動き出した。
「【神炎の舞】」
八枚の双円錐の翅が飛翔して、金色の炎を噴き出し、次々とアイスゴーレムを腹部を貫いて行く。
アイスゴーレムは時間を掛けずに倒せるな。その一方でロックゴーレムはアイスゴーレムに比べて倒し難い。苦手属性じゃないし仕方ないか。
「それなら……アイン、ツヴァイ、ドライ。共鳴だ」
『『『お任せあれ!』』』
三体は共鳴をすることで槌頭が巨大な戦槌になった。
ロックゴーレムが振り下ろそうとしている腕を弾き、体を回転させて腹部に思いっ切り一撃を入れた。
吹き飛んだロックゴーレムは別の個体にぶつかり二体の体力はなくなり消滅した。
「おお、すっげぇ飛ぶなっ……!」
後ろから近づいてくるロックゴーレムの攻撃を躱して顎下に重たい一撃を入れる。その隙に上昇して戦槌を振り下ろし、ロックゴーレムは頭から崩れた。
まだまだ敵は多いしペースを上げよう。柄のグリップを捻り、槌頭で地面を突いた。
「【ハードプラント】!!」
雪が解けた地面から蔦が溢れ出してロックゴーレムとアイスゴーレムを雁字搦めに捕縛をする。上空に舞い上がり地面に向けて戦槌を振り下ろした。
「【共鳴技・タイタングラビティインパクト】!!」
広範囲に重力が増し、地面が耐え切れなく亀裂が入り崩壊した。それに巻き込まれたモンスターは残らずに全滅した。
「ふう……全滅したようだな」
『ハルナ、さっきの衝撃で雪崩が起きそうだよ』
「え、マジか!」
共鳴しているヒガネに言われて俺は急いで上空に逃げると、直ぐに山が揺れだして雪崩が起き、凄い勢いで雪が流れて行った。
「……ヒガネ、この山の麓に人っていない……よね?」
『自分で確かめたら? ハルナのせいなんだし』
「わかったよ……雪崩の被害を受けた人は…………居ない、な。うん、よしセーフだ」
広範囲に索敵をして被害を受けた人が居ないことに安堵した。
「「セーフじゃねーよ!」」
「痛っ!」
頭を殴られて振り向くと颯音と海都が怒った顔をしていた。
「あはは……その……何というかごめん……」
「本当だよ、たく……春名のせいでモンスターが流れちゃったんだからな! やるなら人が居ないのを確かめてからやってよね!」
「次から気を付けまーす」
二人は溜息をついてから離れて行った。
気を取り直して次の場所に向かっているとナツキさんからメッセージが届き、返事をする前にとナツキさんが目の前に現れた。
「すぐに返事出来なくてすま……ん……俺、飛べないんだよな」
そう言ってナツキさんは落ちて行った。俺は急いで落下するナツキさんに追いついて空中で受け止めた。
「もう、返事する前に転移してこないでくださいよ」
「あはは、申し訳ない。まさかこんな空中にいるとは思わなかった」
「地上に降ろしますね」
ゆっくりと下降してナツキさんを地上に降ろした。
「サンキューな。それで進捗はどんな感じ?」
「えっと……俺が五十ずつの計百体。颯音と海都も……大体俺と同じくらいかな」
二人にメッセージで数を聞くと、俺とほぼ同じ事をナツキさんに伝えた。
「全然進んでいないんだな。よし、俺が来たからには今日中に終わらせるぞ」
「おお、ナツキさん頼もしい。モンスターの場所わかっているから情報を送りますね」
「それは助かる。索敵系は兄貴に任せっきりだからさ。うし、やるか」
ナツキさんは刀を抜くと炎が舞い上がった。
「近くは任せてくれ」
そう言ってナツキさんは一瞬で目の前からいなくなった。目で追えなかったナツキさんをゴーグル越しで見つけると、もうすでにアイスゴーレムを十体倒していた。
「そう言えば二人にナツキさんが加わったの教えてないや」
俺は二人にナツキさんが加わったことと、そのおかげで討伐数も一人二五〇ずつに変更ってことをメッセージで伝えた。二人から「了解」と返事が来て、俺は次のモンスターの群れがいる場所に向かった。
それから無我夢中でモンスターを倒し続けてアイスゴーレムとロックゴーレムを目標数を討伐し終えて三人にメッセージを送ると、三人も丁度倒し終えたようで、集まることにした。
「めちゃくちゃ疲れた……春名、この後はどうするんだ?」
「お疲れ、颯音。この後は――」
「またお主か」
突然、声が聞こえてきて振り向くと、そこにはこの雪原エリアのボスモンスターのベーラが姿を現した。




