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第353話

 家に帰宅した俺は部屋に鞄を置いてから、冷蔵庫にある弁当箱を温め、昼飯を食べ始めた。

 約束の時間までまだあるし、後回しにしていたアインの進化を先にやろうかな。うん、そうしよ。

 急いで昼飯を食べ終え、部屋着に着替えてからゲームにログインした。

 拠点の自室を出て、外に出ると浜辺で遊んでいるウィルとルラーシャの姿があった。二人は気づいていない様子だったからそっと雪原エリアに転移をした。


「さて、氷結の原石はどこかな……」


 マップを広げて場所を確認。そこまで遠くない西の方にあるみたいだな。

 俺は街を出てからアカガネを呼び出した。アカガネが現れた場所の雪が解けて緑の地面が現れた。

 進化前のアカガネを呼び出しても雪は解けなかったのに……神の名は伊達じゃないな。


「アカガネ、少しだけスキルを確認してもいいか?」


『いいけど……私を呼び出して大丈夫?』


 アカガネは動く度に雪が解けていく光景に動揺しているようだ。


「誰にも迷惑を掛けてないし、気にしなくていいさアカガネ」


『そ、そう? うーん、じゃあハルナの近くに行こっと』


 そう言ったアカガネは俺の背中に止まった。背中から日向ぼっこしているような温かさが伝わってくる。アカガネをそのままにしておいてスキルを確認。アカガネが覚えていたスキルは【神炎】と言うスキルの名が付いたスキルに一新されていた。それに、新しく加護も授かっていた。

 【太陽神の加護】火属性の最上位スキル【神炎】が使えるようになり、効果は下位スキルの火属性は無効にし、相手の火属性のスキルを奪取し操れるようになった。うーん……なかなかのぶっ壊れなスキルだな。神の名は伊達じゃないな(二回目)。まぁアカガネを呼び出していない場合は無効だけだけど。よし、ついでにアカガネの共鳴を確かめよう。


「アカガネ、共鳴をお願いしていい?」


『うん、わかった』


 アカガネは共鳴をすると双円錐型の翅が八枚も展開された。先が長い方にから金色の炎が放出され宙に浮いた。

 それぞれの翅も自由自在に操れる感じか。コガネがスキャンしたクモガネの時と操作感は一緒みたいだな。

 ある程度扱いに慣れてから空に舞い上がり、目的の場所に向かう。進化したアカガネの飛行速度は一段と速くなっていてあっという間に目的地に到着した。


「すっげぇ速くなってんじゃんアカガネ」


『えへへ、凄いでしょ? それよりでここで合ってるの?』


「おう。ちょっとここら辺を解かすか。アカガネ、やってくれ」


『うん、任せて』


 四枚の翅が動き出し、地面に向かって金色の炎が放出されて雪がどんどん解けていく。


「お、あったあった」


 雪の中に隠れている氷結の原石を見つけ地面に降り、アインを呼び出した。


「お待たせ、アイン」


『主! 感謝致しますぞ!』


 アインが氷結の原石の触れ激しい光が放たれ、姿が大きくなっていく。やがて光が収束をすると、氷のような甲殻に、大きい角の他に胸部に二本、前方に真っ直ぐ伸びる短い角が氷になっていた。


「タイタンアイスビートル……おめでとう、アイン」


『感謝感激ですぞ、主!』


 アインは嬉しいのか俺の周りを飛び回る。巨体だから羽ばたくときの風圧凄いな。


「アイン、嬉しいのは分かったから落ち着け」


『も、申し訳ない主……』


 しゅんとするアインの頭に手を置く。


「街に戻るから戻すぞ。また力を貸してくれよな、アイン」


『その時が来ましたら全力を尽くしますぞ、主!』


 アインを戻して街に向かって飛んでいく。あっという間に街に到着。外で待っていると颯音からメッセージが届き外にいると返信した。   


「おーい、春名! おまた……せ……? え、雪が解けているんだけど、どうなってんの?」


「俺も困惑しているから俺に聞くな、本人聞け」


 しばらくしてから来た颯音と海都は俺の周りの雪が解けていることに驚いているようだ。


「それに、なんかアカガネの姿も変わった?」


「お、颯音にしては目の付け所がいいじゃん」


「俺にしてはって……まぁそれは今は良いとして、この光景はアカガネのせいなの?」


 俺は頷く。


「種族名を聞いてもいい? って聞いても答えない――」


「アポロンラヴァルバルモス」


 俺がしれっと言うと二人は目を丸くした。


「アポロンってあの有名な太陽神の?」


「それしかいなだろう。昨日手伝ったのはアポロンの試練的な奴だったのか」


「めちゃくちゃ大変だったけどな」


「いいなぁ~他の神様もいそうだし、今度探してみよ。てか、どこでその情報を知ったんだよ」


「道すがら話すよ」


 

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