第351話
アオガネを手助けしながら時間を稼ぎつつ、アカガネを相手にするにはあれしかないか。
「クモガネ、準備は出来ているか?」
『いつでもいいよ。あいつを凍らせてアカガネを助ける』
クモガネと共鳴をして雪の結晶のような模様がある白い翅が広がり、体中に霜が出来る。
『ほう……! この灼熱の世界を凍結させるとはな!』
アカガネは炎の矢を再び放ってくるのを沢山の氷柱を飛ばして迎撃する。すかさず、頭上に氷塊を生成して落とす。
『良い選択だが、我には届かないぞ』
アカガネは翅を広げて体を回転させて炎の竜巻を作り、氷塊を一瞬で溶かされてしまった。
「それなら、これならどうだ!」
翅を羽ばたかせて俺も氷の竜巻を生み出して炎の竜巻にぶつける。二つの竜巻がぶつかり激しい爆発が起きた。俺は吹き飛ばられないように床に伏せてコガネの糸で固定させた。
煙が晴れるとアカガネの体力は一割ぐらい減っていた。残り七割か。
『やるではないか! もっと我に力を示してみよ!』
「言われなくても! シロガネ! 今だ!」
『分かってる!』
『ん? なんだあれは?』
透明化していた空艇蜂兵が姿を現して高圧縮レーザーを放った。
『フハハハハハ! 面白い面白いぞ!』
強烈な光を放ったアカガネはレーザーを跳ね返して空艇蜂兵に壮大なダメージを与えた。
『はあああああ!? そんなの聞いてないんですけど!? 早く戻って戻って!』
シロガネは耐久力が無くなる前に空艇蜂兵を強制帰還させた。
『ハルナ、ごめんだけど、もう私の兵達は出せないわ』
「了解。悪かったなシロガネ」
『クモガネ、早くあいつを倒してよね』
『言われなくても分かってるけど……そろそろキツイかも……』
クモガネのスキルは周囲の水分を凍らせて操る為、消費魔力は少なくて済んだけど。今は周囲にほとんど水分がない。有っても使えない為、魔力の消費量がエグイ。あと何発スキルが使えるか。こうなったらコガネを使うか。
「クモガネ、温存したいから共鳴を解いてくれ。コガネ、出番だ」
『僕の共鳴を使うの? ハルナに扱えるかなぁ?』
「そんなの余裕だよ」
『初めて使うのに……まぁ頑張ってよね』
コガネは俺と共鳴をして四角いキューブに姿を変えた。
『スキャンする対象は?』
「俺の武器とクモガネだ」
キューブが開き、中から放つ光が俺の武器とクモガネを照らす。すると、キューブは浮かび上がり、六枚のひし形の白い翅が背中に付く。
コガネの共鳴はスキャンした対象同士を合成させて新しい武器を生成する能力だ。俺の武器の変形能力に加えてクモガネの能力を足した武器がこの六枚の翅だ。
『おお、新しい姿か! お主は見てて飽きぬな!』
アカガネは巨大な火球を作りだし放った。その攻撃を盾で構え、翅を四枚展開して盾の周りに配置。冷気を纏った盾で防ぐ。残りの二枚の翅を槍の形状に変えて両サイドから攻撃をするも軽くアカガネに弾かれた。
守りに回していた翅を二枚を弓に変え遠距離の攻撃と、翅を二枚回転刃にして槍と共にぶつける。
『無駄だ無駄だ! 我には一切届かん!』
アカガネは俺の怒涛の攻撃を簡単に防いでいき、俺のスタミナだけ減っていく。
「ハァ……ハァ……」
『どうした? もう終いか? つまらないのう……これで終わりにしよ』
金色の炎が集まりだし、頭上に小型の太陽が出来上がり俺に向かって飛んでいくる。
「【パーフェクトガード】!」
一日一回の使用制限があるどんなダメージも無効にするスキルを使い攻撃を防いだ。
『ほう、まだそんな手札を持っていたとはな、だが、次は……ん?』
アカガネは空を見上げるとぽつぽつと雨が降り出して強くなっていく。ようやく雨が降り始めたな。
『ハ、ハルナ……そ、空に、水が溜まりだして、は、早く降らせれたよ……! な、なんか、したの?』
俺の元に戻ってきたアオガネが戻ってきて尋ねてくる。
「アカガネの炎に氷をぶつけを水蒸気を作ってたんだ。あとはフィーアの風属性のスキルで風向きを操って空に留まるようにしたんだ。ありがとなアオガネ」
アオガネの額を撫でると嬉しそうに表情をした。
「クモガネ、一気にかたをつけるぞ」
『うん!』
コガネとの共鳴を解除して、クモガネと再び共鳴をした。
「【共鳴技・フィンブルヴェトル】!!」
俺から放たれたマイナス零度の冷気は一瞬にして辺り一面を凍らせ、無音の世界が訪れた。一瞬で凍ったアカガネは地面に落ちた衝撃で氷は割れ、ぐったりと地面に横たわる。
「アカガネ……!」
急いで駆けつけアカガネの抱き上げた。体力は残り一割まで削れている。頭部の草冠と腹部の太陽のマークも消えている。終わったのか……?
『見事だ、人間よ』
上空に光る人型が表れて俺は武器を構えた。
『もうお主とは戦わぬから武器を降ろせ』
「……認めてくれたってことでいいのか?」
光る人型は頷く。
『勿論だ。お主と其奴になら、我の力、太陽神アポロンの力を託せると思ったまでよ。お主たちの動向は天から見ておるから精進するのだぞ!』
そう言って光る人型は空に消えていった。
『ハ、ルナ……?』
『アカガネ! 目が覚めたんだね! よかった~~! よかったよ~~!!』
目が覚めたアカガネにクモガネが泣きながら頬を擦る。
「体は大丈夫か? 痛いところとかない?」
アカガネは翅を動かして軽く飛んで見せてくれた。
『うん。大丈夫だよ。助けてくれてありがとう、みんな……』
コガネたちは共鳴を解いてアカガネと頬を擦りあう。安堵した俺は地面に座り、アカガネのスキルを確認しようとウインドウ画面を開く時に、画面端にある時計に目が行く。
「げっ!? もう七時じゃん! 兄ちゃんに怒られる! みんな、帰るぞ!」
全員を戻して拠点に戻ってから俺はログアウトした。




