第346話
ルカを連れて孵化装置の前に行き、装置の蓋を開けると、明るい緑色の蛇のモンスターがこっちを見ていた。
「さっき教えた通りにやってみて」
ルカは頷き、手を伸ばしてモンスターの額に手を翳した。
「……シュナイダー」
ルカが呟くとシュナイダーと名付けられた蛇は光の粒子になり、右手に吸い込まれ手の甲に紋章が浮かび上がる。
「無事にテイム出来たみたいだな。おめでとう」
「ありがとうございます……! ハルナさんみたいこいつと一緒に強くなって見せます!」
「お、頑張れよ。そんじゃ船で街まで送るよ」
来た時よ同じぐらいの時間を掛けてルカを街まで船で送った。街に到着した俺は船を桟橋に停泊させる。
「そう言えば、プレイヤーの一人が火山エリアでドワーフと接触して解放されたの知ってます?」
「へぇ~そうなんだ、初めて知った」
「今日の朝頃に解放されたみたいです。そのおかげでドワーフの街に行けるようになったそうですよ。噂だと、そこにいるドワーフに武器を強化できるみたいです」
「ドワーフの街か……面白そうだな」
「ハルナさん、この後予定が無かったら一緒に行きませんか?」
「この後? うーん、今日は色々とやることあるから行けないかな。ごめんな」
「いえいえ全然大丈夫です。それじゃ俺はこれで」
「おう、頑張れよ。なんか困ったことあればいつでも聞けよ」
俺はルカにフレンド申請を送る。
「え、いいんですか! やった!」
ルカは嬉しいそうにガッツポーズをする。
「そんな喜ぶもん?」
「嬉しいですよ、普通に!」
嬉しいそうなルカを見送ってから船を仕舞い、火山エリアに転移した。向かう場所は前回見つけたボロボロの建築物があった場所だ。アカガネの進化に関係している筈。進化が出来れば霜の巨人との戦いも大分有利になる。
街に転移して普段よりもプレイヤーの数が多く、ドワーフが街を歩いていた。人魚族と貿易が始まったら海原エリアもこんな感じに盛り上がるのかな。
ゆっくりと街を散策してから外に出て、白と赤の翅を展開して目的地に向かう。しばらく上空を飛行して目的地に降りた。
「さて、なんか見つかればいいんだけども」
そう思って隅々まで確認するも何も見つからなかった。適当に地べたに座り溜息をついていると、足音が聞こえて顔向けた。
「おや、こんなところにプレイヤーが来るなんてな」
筋肉隆々の身長が低めで特徴的な髭がある男性がやってきた。頭上に名前があるってことはNPCか。
「どうも」
「はい、こんばんは」
軽く挨拶を交わすと、ドワーフは崩壊した柱らしきものに松明を設置をして行く。
「なにをしているんですか?」
「ん? 松明を設置をしているんだ。今はこんなボロボロだけど、ここは神聖な場所でな、昔は賑わっていたんだ」
「神聖な場所……神殿ってこと?」
「そんなところだ。それで、お前さんは何用だ?」
正直に話そうか迷ったが、何か知っていればと思い打ち明ける。
「俺のスキルにテイムしたモンスターの進化条件に必要な物が分かるスキルがあるんだけど、そのスキルがここを指していたんです。まぁ何もわからなくてお手上げ状態なんですけどね」
「……美味い酒を持ってくるなら教えてやってもいいぞ」
「本当ですか! ちょっと買ってきますからここに居てくださいね!」
俺は直ぐに街に転移した。街にある道具屋に入って店員さんに尋ねた。
「すみません、ドワーフが思う美味い酒って置いてますか?」
「ドワーフが思う美味い酒……ドワーフに人気なのはサラマンダーの地酒という度数がかなり高いお酒なのですが、あいにく今は在庫切れでして……」
「そうなんですか……他に買える所って知ってます?」
「ドワーフの街でしたら購入できるかと思いますが……こちらでは在庫状況が調べられないので品切れの可能性もあるかと」
「なるほど……わかりました。ありがとうございます。ちなみに、ドワーフの街にはどうやって行くのか知ってますか?」
「街は南の方にある一番大きい火山の洞窟にあります。ですが、街に入るには招待状が必要になります。招待状はドワーフの依頼を達成することで貰える代物です」
「なるほど……色々助かりました。あ、ここにある高い酒を頂いても良いですか?」
「畏まりました。少々お待ちください」
会計を済ましてお店を後にし、ドワーフが経営している鍛冶屋に向かった。




