第341話
シロガネの攻撃が止まったことでドラゴンのヘイトが俺たちに向けられ、もう一度ブレスを放とうと口を大きく開いた。
「ブレスの攻撃はヤバイ……!」
「ハルナ、あいつ攻撃は俺が止める」
「ベオルさん、危険です。俺も一緒に!」
「いや、俺一人だけで十分だ。メインタンクは俺がやる。ハルナにはサブを任せる」
「了解!」
そう言ってベオルさんが大盾を構えて先頭に立った。光の十字架が浮かび放たれたブレスを受け止め、上空に流し、広範囲に爆発が起きた。
「こっちだ! 【重騎士の気迫】!!」
ベオルさんがスキルを使い、ドラゴンの攻撃の矛先を自身に向け弾き返した。その隙に、トオルさんとディオガさんが翼を斬りつけ、颯音は下顎にアッパーをいれ、グレンさんとナツキさんが頭から尻尾にかけて流れるように斬りつける。残りの体力七割。
ドラゴンは翼を羽ばたかせ風を起こし五人を吹き飛ばす。体勢を崩したナツキさんをドラゴンが捕らえようと鋭い爪がある腕を伸ばそうとしていた。爪が届く瞬間に遠くからの攻撃によって腕が弾かれた。その間にナツキさんを俺の近くに転移させた。
「ナツキさん、怪我は無いですか?」
「お、おう。……一瞬の移動……これもハルナのスキルなのか?」
「皆に付与しているこの黒蝶は繋がっていて、俺の黒蝶を経由して転移をしたんですよ。まぁ急にされたら驚くから避けれなそうな時にしますけど……」
「そうか。ハヤトの近くに転移をしてくれ」
「了解!」
ドラゴンの真上に居る颯音の近くにナツキさんを転移させる。
「【炎天・乱れ桜】!!」
ナツキさんの刀から炎が溢れ出して、勢いをつけた一振りは目玉に攻撃が当たり、ドラゴンは藻掻き苦しむ。
「今が絶好のチャンスだ! 全力をぶつけろ!」
トオルさんの合図で各々が攻撃をぶつけた。
トオルさんはもう一本の黒い大剣を持ち翼を引き裂き、ディオガさんは光を纏った剣で背中に傷を負わせ、グレンさんは目にも止まらない剣速で脇腹を斬りつけ、颯音が下から急上昇して腹に一撃をお見舞いし、飛行艇に居る海都が重たい一撃を入れ、降らせドラゴンの体力を大きく削り五割まで減った。
――ゴオオオオオオオオン!!!
傷だらけのドラゴンが雄叫びを上げると、何もない空中に大量の蝙蝠のモンスターと山羊頭と4本の腕を持つ赤く体格がいいレッサーデーモンが出現した。困惑していると海都から飛空艇に戻ってくれとメッセージが飛んできた。
「ベオルさん! 少し飛空艇に戻ります!」
「わかった。直ぐに戻るんだぞ」
「了解!」
俺は予め飛空艇に配置していた黒蝶を経由して戻った。
「春名、雨を降らしてくれ。一気に殲滅する」
「出来んのか?」
「やってみないと分からないけど、自信はある」
「なら、やってみる価値はあるな」
俺と海都はアオガネとリュウオウを共鳴を解除すると、目の前にウインドウ画面が現れた。
「これってまさか……?」
「こんな形で出来るとはな……!」
俺はアオガネに顔を向け、顎下を撫でる。
「アオガネ、力を貸してくれるか?」
『う、うん……ぼ、僕でいいなら……』
「ありがとう。リュウオウもよろしくな」
「グラ!」
リュウオウは頷き、頭を下げてくれた。頭を撫でろってことかな。
撫でてやるとリュウオウは嬉しそうな表情をしてくれた。
「そんじゃやりますか」
「いつでもいいぞ」
「アオガネ、やってくれ」
アオガネが頷くと、上空に向けて水球を飛ばす。その間に五人を飛空艇に転移させた。
雲が広がり月が隠れより暗くなっていく。そして、ぽつぽつと雨が降り出し、やがて豪雨になっていく。
「おい、ハルナ! なんで俺たちを戻した!」
トオルさんは怒りながら聞いてくる。
「今からやることはみんなを巻き込むからです。シロガネ、回復を頼む」
『仕方ないわね』
シロガネは【治癒蜂兵】を召喚して五人の体力を回復させていく。
「グラアアアアアア!」
リュウオウが咆哮を上げると体の突起部分から蒼白い電気の球体現れ上昇し、雲の中に入っていき光が弾ける。
「「【共鳴技・リバースディバインセーバー】!!」」
轟音と共に蒼白い雷が地面に向かって降り注ぐ。無数の雷が次々とモンスターに落ち、雷が直撃していないモンスターにも感電し、凄い勢いで敵の数が減っていく。
「すっげぇ……いつの間に二人で共鳴技を発明したんだよ!」
「俺と海都って言うよりかは……俺とアオガネ、海都とリュウオウの共鳴技かな」
「へぇ~そんなことが出来るのか! いつか俺も二人と共鳴したい!」
「いつかできるさ」
雷が止み、雲も晴れて元の夜空に戻る。新しい共鳴技のおかげで沢山いたモンスターは居なくなってドラゴンのみになった。ドラゴンの体力も大分削れたな。
――グラャアアアアアアアア!!!
ドラゴンが雄叫びを上げると、背中から新たなに翼が生えて、ギランと額が開き、赤くて不気味な瞳が現れ、それを境にドラゴンの体中にも同じ瞳が現れた。




