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第340話

「春名、地上が大変なことになったぞ」


 援護射撃している海都から報告を受けて、ゴーグル越しに辺りを見渡すと大量の骸骨のモンスターが出現していた。颯音たちが加わって少しだけ押し返したと思っていたのにまた押され始めたな。 

 お、颯音が三体の狼と一体化した。笑っている表情をしているし、楽しんでいるな、あいつ。


 ――グラアアアアア!!


 しばらくすると、突然ドラゴンが雄叫びを上げ、力強く翼を羽ばたかせて縛り付けいた鎖を外して飛び立つ。


『ハルナ、私が指示を出してもいい!』


「おう、好きにやってくれ」


『【魔導蜂兵】構え!』


 飛空艇の周りにシロガネが召喚した杖を持った魔導士の姿をした蜂兵が杖を構える。


『放てぇぇぇ!』


 シロガネの指示に従い【魔導蜂兵】たちが一斉に炎の玉をドラゴンに向けて放つ。炎の玉はドラゴンに命中するも、魔法防御力が高いのかほとんどダメージを与えられなかった。

 ドラゴンは口を大きく開け紫色のエネルギーを溜め始める。


『【巨盾蜂兵】前へ!』


 巨大な盾を持った蜂兵が隙間なく並び壁を作る。俺も念のために盾を構えて【ラウンドフォース】を張っておく。

 ドラゴンが放ったブレスは【巨盾蜂兵】が築いた壁にぶつかり蜂兵の体力がどんどん削れていく。


『私の兵を舐めないで! 主砲を放てぇぇ!』


 飛空艇に装備されている大砲がドラゴンの方の向き一斉に発射された。

 攻撃はドラゴンに直撃し、怯ませたおかげでブレスが止まった。ドラゴンは旋回して距離を取った。

 多少は体力は削れたけど決定打に欠けるな。


『まだまだ! 全弾発射!』


 飛空艇にある全ての武器がドラゴンを標的にして主砲やミサイルなどが撃たれ、シロガネが召喚した蜂兵たちも攻撃に加勢する。


「お、おう……すげぇ……」


「お前のシロガネ……キレてんの?」


「さぁ~……」


『そこだ! 狙えええ!』


 シロガネの声が聞こえ俺は苦笑いを浮かべた。


「よっと、邪魔するぜハルナ」


 飛空艇のデッキにトオルさんが現れる。


「春名、戻ったぜーおお! ここから見ると大迫力だ!」


 颯音の後からグレンさんとベオルさん、ナツキさんの三人も戻ってくる。それと、ディオガさんとクランメンバーが少数……


「状況報告をしろ」


「お前な……ここはあいつらテリトリーなんだから言葉を選べよバカ」


「馬鹿に馬鹿と言われる筋合いはない」


「お前……!」


 トオルさんからピキっと音がしたような気がした。


「二人とも言い争っている場合じゃないですよ!」


「……」


「お前はあっちに行ってろ。俺が進める」


 ディオガさんは不満そうな表情をしたけど、トオルさんの言う事に従った。


「申し訳ないうちのリーダーが……」


「気にしてませんよ。それよりも状況説明ですよね?」


 俺はみんなに聞こえるように簡単に状況を説明をした。


「で、今もなおシロガネが熱くなっています」


「なるほどな。この飛空艇の武器の弾薬の残量はどれぐらいだ?」


「んー……このままのペースでなら持って三十分ぐらいで空になるかと」


「あのドラゴンを叩き落とせるのは可能か?」


「現状は無理です。手数はあるけど威力が足りない。俺たちが来るときに縛っていたあの鎖は出せないんですか?」


「術者がやられてもう出来ねぇよ。何とか地上に叩き落として一気に決めたいけど」


「もしくはお前のモンスターに乗って空中戦をするかだ」


 ディオガさんが意見を言うとベオルさんが睨む。


「ディオガさん、申し訳ないですけど全員を連れての空中戦は無理です」


「お前! リーダーに意見を――」


「下っ端は黙ってろ……!」


「っ!! も、申し訳ございません……」


 トオルさんの怒声に口を挟んだ人は黙ってしまった。


「話を続けます。全員を無理なんでで五人まで絞ります。五人までなら俺のスキルでどうにか出来ます」


「五人か……そっちのメンバーで埋まるな」


「あ、颯音は空中の移動スキルがあるから除外してもらって大丈夫です」


「なら、俺もここから援護射撃するからカウントしなくていい」


「てことは、グレンとベオル、ナツキは決定だろ。こっちは俺とディオガで決定だな。それでいいよな?」


「構わん。お前たち、地上に向かい他のプレイヤーの援護に回れ」


「「はっ!」」


 ディオガさんが命令をして部下の人たちは地上に降りて行った。


「ニア、力を貸してくれるかい?」


『うん、任せて。進化してからのハルナとの共鳴、張り切っちゃう!』


 ニアと共鳴をすると、右手首に蝶の装飾が付いたブレスレットが装着された。


「トオルさん、ディオガさん。俺にパーティー申請をください」


 二人から申請を送られ承諾する。

 俺は右手を翳して目の前に巨大な黒蝶を五体生成し、それぞれの黒蝶が背中にくっつき翅が広がる。

 ニアの新しいスキルの【黒蝶の誘い】は味方に空中浮遊のスキルを付与する効果がある。


「おお、すっげぇ! 自由に飛べるぞ!」


「ぶっつけ本番ですけど、空中戦行けそうですか?」


 全員翅を動かして確認している。


「これぐらいならすぐ慣れるな」


「問題ない」


 グレンさんとベオルさんは翅の扱い方は大丈夫のようだ。


「ナツキさんも平気ですか?」


「兄貴のスザクの力を借りて空中戦はしたことがあるから平気だ」


「トオルさんとディオガさんも大丈夫そうですね」


「おう。そんじゃいくぜ!」


 トオルさんが先陣を切って飛空艇から飛んでいき、残りのメンバーも後を追った。


「シロガネ、船のことは任せたぞ」


『あんな奴、さっさと倒しちゃってね!』


「おう!」


 白と赤の翅を展開してみんなの後を追い駆けた。



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