第339話
海原エリアの街に着いた俺とウィルはオピオさんのお店がある中層に向かった。
いつもより人通りが少ないと感じた大通りから裏道に入りお店を目指す。しばらく進むと、シャッターが下りていないオピオさんのお店が見えた。今日はいるみたいだな。
「おお、よく来たのう二人とも」
お店に入ると着物姿のオピオさんが出迎えてくれた。
「オピオさん、突然で申し訳ないんですが、少しの間ウィルを預かってくれませんか?」
「ウィルをか? 別にいいが……夜にちょっとばかし出掛ける予定があるからそれまででいいなら預かるが」
「この世界での夜って認識で合ってます?」
「うぬ、それで合っておる」
この世界での夜ってことは現実の世界で言うと午前中ぐらいだな。
「わかりました。ウィルの事よろしくお願いします。それじゃ行ってくるよ」
「ハルナさん、お気をつけて」
「おう」
オピオさんのお店を後にして、中層の中心部にある転移門を潜り常夜エリアに移動した。
「来るな来るな!!」
「呪いのデバフを受けたプレイヤーの方は組合所に……!」
常夜エリアの広場ではボロボロのプレイヤーが溢れていて、何名かはNPCの人たちの協力により、組合所に運ばれている姿を見かける。なかなかのカオスの状況だな。
「春名~こっちこっち」
手を振っている颯音を見かけて駆け足で向かった。
「遅れてすいません。カオスな状況になってますね」
グレンさんが言う。
「ハルナが来るまでに聞き込みしたんだが、今回現れたモンスターがイービルワンハンドレットアイドラゴン。常夜エリアのボスモンスター、トゥルーバンパイアの眷族だそうだ」
「イービルワンハンドレットアイドラゴン……」
俺が探しているのはイービルアイドラゴンだけど、関係性はあるのか謎だな。
「春名、俺たちの探しているモンスターと関係あると思う?」
「うーん、どうだろう。進化系ならワンチャンあると思うけど」
「それで、どうするんだリーダー?」
海都に聞かれてみんなの顔を見るとすっげぇやりたそうな表情をしていた。
「ここまで来たならやるっしょ」
「討伐対象は今は南の山の麓でクラン『黒白』が足止めをしているってよ」
「それでも苦戦をしているらしいけど」
「んじゃ俺たちも行きますか。あ、そうだ」
俺はシロガネを呼び出した。
『私一人なの?』
「いや、あとでみんなを呼ぶ予定だよ。シロガネ、【空艇蜂兵】を頼む」
『あれを使うぐらいの強敵とやるの?』
俺は頷く。
『分かったわ。来なさい!』
シロガネが手を上げると上空に巨大な魔法陣が、浮かび巨大な飛空艇が現れた。
「な、なんだあれは!?」
「敵襲か!?」
街中で召喚したせいで若干パニック状態になってしまった。やってしまった……
「シロガネ、皆を運んで」
『はいはい。私の周りに集まって』
皆をシロガネの周りに集めると 飛空艇から光が降りて来て気が付くと飛空艇のデッキに居た。
「いつの間にこんなデカい乗り物を手に入れたんだよ!!」
「なんでもありだなハルナは」
グレンさんは柵越しに地上を見下ろはしゃぎ、ベオルさんはなんか納得している。
『ハルナ、どっちに動かせばいいの?』
「南の方に進んでくれ」
俺は乗せてゆっくり動きだし南の方に進んで行った。その間に俺は残りメンバーを呼び出し球体と一体化してもらった。
しばらくすると、耳に劈く咆哮が響き渡る。ヒガネと共鳴をしてゴーグルを装着して状況の確認をした。
「対象のモンスターが地面に縛り付けられているけど、今にも飛び立ちそう。体力は八割ぐらい削れている。他プレイヤーの被害大」
沢山いるプレイヤーの中でトオルさんを見つける。大分苦戦を強いられているな。
「春名! もう行っていいか!」
「焦んなよ。シロガネ、【治癒蜂兵】をみんなに付けて欲しい」
『仕方ないわね。あとで私の我儘を聞いてよね』
「これが終わったらな」
シロガネは人数の【治癒蜂兵】を呼び出してそれぞれに付けた。
「体力がやばくなったらこれで回復してください」
「んじゃ先に行くぜ!」
「颯音に続け!」
颯音の後を追うようにグレンさんとベオルさん、ナツキさんも降りて行った。
「俺はここから援護するけど、春名はどうすんだ?」
「あいつが抜け出して飛び去ろうとしたら、これで叩き落すから俺もここにいる。アキさんは?」
「俺は事前準備があるから別行動をするよ」
そう言ってアキさんは赤い鳥のスザクを呼び出して背に乗り飛び去っていく。
さて、頑張りますか。




