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第332話

「急に声を上げて、どうしたんだ?」


「え、えっと……テイムしてから今まで喋ったことがないハガネが急に喋ったから驚いただけ」


「へぇ~そんなモンスターも居るんだな。それで、なんて言ってんだ?」


「集中しろって。兄ちゃん、あの岩を斬りたいから少し離れて欲しい」


「わかった」


 兄ちゃんは壁側まだ下がってくれた。


『……全員を戻して』


「え、全員を戻すの? そこまでするの?」


『お願い……』


 俺は軽く溜息を付いてから言った。


「ごめんみんな。後で呼び出すから一旦戻すわ」


 そう言ってハガネ以外のメンバーを戻した。


「これで良いか? ハガネ」


『うん、ありがとうハルナ。それじゃあ刀を構えて」


「はいよ」


 大太刀の鞘に手を掛け居合の構えを取る。


『目を閉じて深呼吸……意識をどんどん沈めて……』


 ハガネの言われた通りに目を閉じて深呼吸を繰り返していくと、段々と意識が沈んでいく感じがした。


『目の前の岩を真っ二つに斬るイメージを思い浮かべて』


 ……岩を真っ二つに斬るイメージ……


『そのまま、僕に合わせて本当の共鳴技を唱えて』


「……【共鳴技・神速一閃……断】」


 目にも止まらない速さで刀を抜き一太刀を浴びせる。刀を収めカチャッと音がすると、目の前の岩は綺麗な断面で真っ二つになった。


「マジかよ……」


 兄ちゃんの小さな呟きが聞こえて、俺も内心同じことを思った。この威力なら霜の巨人も倒せるかもしれない。まぁ溜め時間があるから使うのは難しいけど。

 共鳴を解いたハガネから眩しい光が放たれた。光が収束するとハガネの体から金色に輝く赤色のオーラが揺らぐ。

 ヒイイロカネクワガタ……これはまた、すっげぇのに進化したな。ヒイイロカネって幻の金属の一つだった筈。まだ次の進化があるみたいだけどどんな進化するか想像がつかない。


「進化おめでとうハガネ」


『ありがとうハルナ。話を遮ってしまうけど早くここら出ないと大変なことになる』


「え?」


 山全体が大きく揺れ出して真っ二つになった岩の底からマグマが溢れ出してくる。


「マジかよ! 兄ちゃん、こっちに!」


 ハガネの背に跨り、兄ちゃんの手を取り後ろに乗せた。


「ハガネ! 飛んでくれ!」


 緋色の翅を動かして急いで火口から脱出。直後に火山は噴火しだした。


「あっぶな……間一髪だね、兄ちゃん」


「あの岩がマグマを塞き止めていたようだな」


「だね。ルーシャさんと颯音からメッセージが届いていたみたい。兄ちゃん、ルーシャさんの方が近いから先にそっちに転移するよ」


「うん、わかった」


 颯音とルーシャさんにそれぞれメッセージを送り転移をした。


「お待たせしましたルーシャさん」


「近くのモンスター、一掃しておいたから安全。こっち」


 ルーシャさんの案内で少し歩くと崩れた建物の場所に到着した。建物の中はボロボロで足の踏み場もない程、瓦礫で散乱していた。


「ルーシャさんから遺跡を見つけたってメッセージが来ていたけど、なんか神殿みたい」


「海外に行ったときに見たような気がする」


「兄ちゃんだけで海外行ったの? 俺も連れて欲しかったなぁ~」


「仕事でだよ。プライベートで行く時があったら誘うさ」


「え、マジ! やった! 約束だからね!」


「はいはい。あんまり時間ないんだから手掛かり探すぞ」


「はーい」


 三十分ぐらい手分けして建物の中を探索をするもなんも手掛かりはなかった。


「なんも手掛かり無い……」


「本当にここで合ってんの?」


 兄ちゃんに言われて改めてマップを開き確認をする。


「うん、ここで間違いないんだけど……」


「マップに詳細とか無い?」


「うーん……なんもないです」


「謎解きがあるかもね」


「多分そうだと思います。仕方ない、ここは後回しにして颯音の方に行きますか」


 颯音にメッセージを飛ばしてからまた転移をした。


「お、やっと来たか。どうした? そんな浮かない顔して」


「ちょっとな。それよりもこれが日長の原石か?」


「おう!」


 俺は一旦戻したフュンを呼び出す。


「フュン。お待たせ」


『おお! ありがたき幸せ!』


 早速フュンは日長の原石に触れると光を放つ。光が収束すると、緩やかなに上にカーブをする頭部の角に一対の角が垂直に伸びている胸部の四本の角。そして、変わらない白色の甲殻。大きさも然程変わっておらず、唯一変わった部分は背中に太陽のような紋様があったぐらい。

 フュンはラピードサンビートルに進化した。速度重視のフュンと同じフィーアとゼクスもラピード系列の進化になるかもな。


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