第331話
「すまん……この暑さは無理だ……」
火山エリアに来て街の外に出るくらいとに兄ちゃん暑さにやられて地面に座り込む。そんな兄ちゃんに冷たい水が入った水筒を渡した。
「ふうー……生き返った。三人とも平気そうな顔をしているけどこの暑さを防ぐアイテムとスキルを持ってるのか?」
「俺はクモガネとアカガネのスキルで暑さと寒さを無効にしてるよ」
「俺もヒスイのスキルで暑さを流して、周りの気温を普通にしているぜ」
「私はアイテムで、耐性を付けてる。もう一個あるから上げる」
そう言ってルーシャさんはインベントリからネックレスを取り出して兄ちゃんに渡した。
「ありがとう。……うん、大分平気になった」
「本当は耐暑のスキルを持った装備を、自身の装備に投影することでスキルを付けて貰うんだけど……今からでもする?」
「いや、これがあればいいよ」
「ごめん兄ちゃん……すっかり忘れてた……」
「謝んなくていいよ。それにしても二人はスキルやアイテムで耐えているのに、春名は無効か」
「無効ってズルいと思わない? 冬真兄」
「ズルくないし、クモガネとアカガネの愛の結晶だし」
そう言うと三人の頭にはてなマークが浮かんだ表情した。
「クモガネとアカガネは番なんだよ。進化したアカガネの熱さに耐えるためにクモガネが進化したんだよ。俺の話は終わり」
俺は話を切り上げてマップを確認した。マップには三ヶ所の薄い円が表示されていた。
三ヶ所……アカガネの他にも居るのか。
「ルーシャさん、颯音。二人にはここに行ってもらいたい」
「ん? ここに着いたらまた連絡すればいいんだな。遠いところは俺が行くからルーシャさんは近くの方で」
「わかった。着いたら連絡するね」
「はい、お気をつけて」
二人は別々の方に駆けて行った。
「俺たちも行こ兄ちゃん」
俺は兄ちゃんに背を向けてしゃがんだ。
「……弟に背負われる日が来るとは……」
兄ちゃんはボソッと言うも首に腕を回してきて、しっかり掴まったのを確認してから白と赤の翅を展開して北にある目的地に飛び立った。
「兄ちゃん、大丈夫?」
「……大分キツイかも……このネックレスでも限界あるんだな。お前のスキルが羨ましいよ……」
「ちょっと待ってね」
白い翅をいくつか兄ちゃんの方に回した。
「涼しい……大分マシになった」
「もうすぐ目的地に着くけど、まだきつかったら言ってよ」
少し経つと大きな火山の上空に到着した。
「他の火山より静かって言うか噴火してない感じ」
「休火山かもしれないな。ここが目的地か?」
「うん、ここで合ってる。下降りられそうだし、降りてみるね」
ゆっくり降りて火口の中に入っていき硬い地面に着地した。周りにはマグマが無く、ポツンと大きな黒い岩が置かれていた。岩を調べてもただの硬い岩としか説明は無かった。
……進化の石だと思ったけど、何も変哲もない岩かぁ。颯音とルーシャさんの方にあるといいんだけど……取り敢えず全員を呼び出そう。
「子供……? いや、翅が生えているし……モンスター?」
ニアとロンの姿を見て兄ちゃんが頭を捻っている。
「こっちの男の子が新しく仲間にしたロンで、こっちの女の子が黒蝶だったニアだよ。で、これが俺の兄ちゃん」
『ふむ、この人がハルナの兄君か』
『雰囲気が似ているよね』
二人して兄ちゃんの周りを飛び始めた。
「あの黒蝶が女の子に進化したんだな。人型にも進化が可能なんだな」
「うーん、どうだろう。ニアとロンが特別だからってこともあるからわかんない――え?」
兄ちゃんと話をしているとハガネが共鳴をして腰に大太刀が帯刀された。
「ハガネ? 急に共鳴をしてどうした?」
『……』
ハガネに尋ねても一言も喋らなかった。俺の前にシロガネがやってくる。
『ハルナ、あの岩を斬れってことじゃない?』
「あーなるほど。サンキューなシロガネ」
『早く終わらせてよね』
そう言ってシロガネは球体と一体化した。それに続いて他のメンバーも一体化していく。
「あの岩を斬ればいいんだな?」
『……集中して』
「え……ハガネが喋った!?」
『『『ハガネが喋った!?』』』
初めて聞く爽やかな男性の声のハガネに俺とコガネ達は一斉に驚き声を上げた。




