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第330話

 眩しい光が収まると、ドライが放つ明かりに照らされてより艶のある黒い甲殻のクロガネがそこにいた。容姿は少し大きくなって甲殻には赤い線の紋様が付いている。名前もアルケミーアントになっていた。


『ふん。こんなの余裕よ』


 クロガネはドヤ顔をして俺の方を見上げてくる。


「そうか……進化おめでとうクロガネ」


『……ありがと』


 恥ずかしそうに小声で言ったクロガネ。思わず、頭を撫でたくなってしまった。


『頭を撫でたら噛み砕く……』


「うっ……」


 俺は伸ばした手を引っ込めて頭を掻いた。


『……ハルナ、ここから急いで出て。目覚めちゃったみたい』


 クロガネがそう言うと俺たちがいる空間が大きく揺れ出して、遠くから唸り声が聞こえて来た。


「この揺れ……嫌な感じがする」


「クロガネが面倒くさい奴が目覚めたって言ってるから急いで出ましょう」


「うん、わかった」


 俺とルーシャさんはフレンド一覧から颯音を選択して転移をした。


「よっと。お待たせ颯音。椅子代わりに座ってるのが黒曜の原石?」


「おう! そうともさ!」


 颯音は勢いよく飛び降りて岩を叩いた。


「お待たせツヴァイ。黒曜の原石だ」


『おお! これが……!』


 ツヴァイが黒曜の原石に触れると眩い光と共に進化をしだして大きくなっていく。光が収まると、先が二股に別れた二本の角がくっついたように幅広い胸部の角と頭部の角が一本ずつの姿は変わらず、甲殻がより黒くなった。

 ツヴァイはギガノトシャドービートルに進化した。ドライもギガノトウィードビートルだったから、アインもギガノトが付く進化になるはずだな。


「春名、今度は何処のエリアに行く予定?」


「今度は火山エリアにしようかなって思っているけど、そろそろ夕飯を作りたいから一旦落ちるかな」


「あ、もうそんな時間か。じゃあ俺も落ちよ。ルーシャさんはどうします?」


「やりたいことあるから、拠点に戻る。戻ってきたら続き手伝う」


「わかりました」


 常夜エリアから拠点に転移して、俺と颯音はログアウトした。

 夕飯を作っていると玄関のドアが開く音がした。火を止めて出迎えに行くと兄ちゃんは紙袋を持っていた。


「おかえりなさい。もうすぐ夕飯出来るけど、食べる?」


「部屋着に着替えてくる。あと、これ渡しておく」


 兄ちゃんから紙袋を受け取った。


「これ、何が入ってんの?」


「貰い物の菓子折り。颯音たちが来た時にでも食べろ」


 そう言って兄ちゃんは部屋に入って行った。

 キッチンに戻り、菓子が入った箱を棚に仕舞うと部屋着の兄ちゃんが席に着いた。それから料理を運び兄ちゃんと一緒に夕飯を取る。


「そう言えば、人魚族の件はどうなったんだ」


「うーん、まだ途中かな。今はコガネ達の進化を進めているよ。今日だけでドライとツヴァイとクロガネが進化したんだ」


「システムを知らないけどそんなに進化って出来るもんなのか?」


「新しく仲間にしたロンのおかげでさ、進化条件に必要な物がある場所が分かるようになったんだ。夕飯の後に颯音とルーシャさんと再開する予定。兄ちゃんも一緒に行く?」


「そうだな……久しぶりやるか」


「やった!」


 夕飯を済ましてログインする前に颯音に連絡すると、「今からログインする」と直ぐに返ってきた。

 拠点に戻るとずっとログインしているルーシャさんと俺より先に居た颯音。それと海都と雫恩も居た。少し遅れて兄ちゃんもログインする。

 海都が尋ねてくる。


「こんなに揃ってどっかに行くのか?」


「アカガネを進化させるために火山エリアに。俺と颯音、ルーシャさんと兄ちゃんで行くんだけど、二人はどうする?」


「俺たちは常夜エリアに行く予定だから行けない」


「そうなんだ。あ、そうだ。イービルアイドラゴンってモンスターを見かけたら連絡してほしい」


「イービルアイドラゴン? わかった」


 海都と雫恩を見送ってから俺と兄ちゃん、颯音とルーシャさんの四人で火山エリアに転移をした。


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― 新着の感想 ―
[一言] イービルアイドラゴン……邪眼竜だな?www
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