第327話
「ハァ……ハァ……疲れた……」
冷たい床に倒れながらクモガネとアカガネの体力を確認した。……体力は減っていないな。ギリギリで通っていたからダメージ追っていないか少しだけ不安だったけどよかった……
「よいしょっと……で、ここは何処なんだ?」
周りは蔦に囲まれて、天井は葉っぱが生い茂っていて太陽の光が差し込んでいた。
マップを見ると幹エリアの先、樹冠エリアと表記された場所にいた。無事に抜けたんだな。颯音とルーシャさんは無事かな……まぁあの二人は強いし大丈夫でしょ。
「さて、どこに行けば……ヘイムンダ、道を……ニア?」
共鳴を解いたニアが進んで行く。
「お~い、ニア~……ダメだ。聞こえてない様子だ。ヒガネ、見える範囲にモンスターの反応はある?」
『うーん、居ないみたい。ニアが進んでいる方にもモンスターの反応はない、かな』
「了解。後を追ってみるか」
ニアの後を追ってほとんど変わらない景色の道を進んで行くと、巨大な扉が見えてくる。その両隣には石像が一体ずつ並んでいた。
「ニア、止まれ」
俺の声を聞いたニアが止まり戻ってきた。
『ハルナ、呼んだ?』
「何回も呼んでいるよ。ニアを呼び止めたのはあの石像が……ほら、動き出した」
予想通りに石像が動きそれそれ武器を持って動き出して、俺は溜息をついた。
「ニア、取り敢えず球体と一体化してくれ」
『その必要はありませんよ?』
天井からジェントルスパイダーが降りて来て器用にお辞儀をする。
『やっとおいでになられましたか。どれだけ待ちわびたことか……お前たち持ち場に戻りなさい』
石像たちは元の場所に戻る。石像がモンスターの言う事を聞くなんて、こいつ……何者だ?
『ささ、祭壇はこちらにございます』
「本当に、お前は何者なんだ?」
『私は……私は一介のモンスターに過ぎませんよ。ええ、ただのモンスターに過ぎません』
「そうかい」
俺は諦め大人しくジェントルスパイダーの後を付いて行くと、綺麗な水が流れている白い祭壇に到着した。四方には小さいけど似たような祭壇が四つ設置されていた。どことなくニアを復活させた祭壇に似ている気がする。
「で、俺は何すればいいんだ?」
『そこの祭壇に王様を。四方の祭壇にはコインの絵柄と合わせて置いてください』
インベントリからオベロンの卵を中央の祭壇に置き、北から蟻、蠅、蚊、ゴキブリの模様が付いているコインを置いて行く。
『女王様、こちらに』
『女王様じゃないもん……ニアはニアだもん』
『これはこれは失礼いたしました。それではニア、こちらに来て頂けますか?』
器用に差し出したジェントルスパイダーの手をニアが掴まり?祭壇の前に。俺は見守ることにした。。
『これは何?』
『こちらは……ニアの大事な友人ですかね。今は眠っておりますがニアが呼び掛ければ目覚めます』
ニアは卵に触れた。
『朝だよ…………オベロン……』
ニアが名前を呼んだ瞬間、四つ祭壇が光を放ち、俺が置いたコインが溶けて光に交じり、中央の祭壇に集まって行き卵に注ぎ込まれていく。
――ピキっ。
卵に罅が入り中から白い幼虫が姿を見せる。ニアは器用に掴み持ち上げた。
『おはよう、オベロン』
『おはよう……ティターニア……』
オベロンとニアの体が光り出して舞い上がっていく。光が収まると、背中には黒い翅が生えた白い肌の黒髪の少女と、背中に白い翅が生えた白髪の少年の二人が姿を現れた。
「え……ニア……なのか?」
ニアは微笑んで俺の所に降りてくる。
『ふふ、可愛いでしょ?』
「そうだな、可愛いよニア。まさか人型になるんて驚きだよ。それで、あっちがオベロンだよな?」
『勿論よ。オベロン、来て』
様子を窺っていたオベロンが降りてくる。
『久しぶりだね、人の子よ。いや、ハルナよ』
「俺のこと覚えていたんだ」
『最初は忘れていたけど、ティターニアのおかげで思い出したんだ』
『オベロン、今はティターニアじゃなくてニアだよ?』
『そうだったね、ニア』
『あ、そうだ。ハルナハルナ! オベロンの仲間にするんでしょ? 新しい名前を付けてよ!』
『僕からも頼むよ』
「名前か……それじゃロン、とかどうかな? ちょっと人っぽいけど……」
『ロンって安直過ぎない?』
『まぁハルナのネーミングセンスは無いから妥当じゃない?』
「うっさいぞ、コガネとシロガネ」
『ロンか……うん、気に入った。僕をテイムしてくれ』
「わかった。これからよろしくな、ロン」
俺は額に手を翳して名前を呼ぶと、オベロン改めロンは光の粒子になり俺の手の甲にある紋章に吸い込まれていった。




