第325話
ログインすると拠点の外に颯音と久しぶりに見たルーシャさんが待っていた。
「おっせぇぞ春名!」
「遅くねーよ。もう仕事の方は落ち着いたんですか、ルーシャさん」
「なんとか、ね。ハヤトから話は聞いたけど、人数いるなら手伝う」
「ルーシャさん……ありがとうございます」
「ん。それで、何をするの?」
「樹海エリアのダンジョン、ユグドラシルの最短ルートを抜ける」
そう伝えると颯音は口角を上げた。
「楽しそうじゃん! よっしゃ早速行こうぜ!」
「そのダンジョン行きたかったから楽しみ」
「ルーシャさんには申し訳ないんですが途中からの再開になっちゃうんすけども」
「途中……今回はハルナの手伝いだし、別に平気」
「よかった……それじゃ行きますか。ウィル! ルラーシャ! 行ってくるよー!」
遠くでこっちの様子を見ていた二人に声を掛けてから樹海エリアに転移した。街を出て颯音が呼び出したヒスイにルーシャさんが乗り、ギンの背には颯音が跨った。俺は白と赤の翅を展開してダンジョンのに向かう。
「あ、ルーシャさん。ルラーシャには会いました?」
「うん。ハヤトが来る前に話したよ。可愛い子だね。素材の回収は大丈夫そ?」
「うーん、まだ三つだけ。残りの二つは未だにわからないって感じです」
「二つ交換してもらったのは知っているけど、いつの間に三つ目を手に入れたんだよ。それに一個分かってんの?」
「三つ目に手に入れたのはセフィロトドラゴンの果実。昨日ヴェルガとレベル上げしてたら偶然な。で、午前中に戦って返り討ちにあった」
「春名が負けるってマジ……? じゃあ次は俺も一緒に戦えば勝てるね」
「悪いけどこいつは俺の獲物だ。誰にも譲る気はない。それに出現場所と条件知ってんの俺だけだから教えねーよ」
「えー……そんじゃ次も負けたら俺に譲れよな。俺が仇を取ってやんよ」
「負けねーから次はねぇよ。ほら着くぞ」
薄い膜を通りダンジョンのエリアに入った。地上に降りると地面が盛り上がり扉が現れた。
「ここから、入るの?」
ルーシャさんの質問に頷いた俺は扉に手を翳すと「途中から始めますか?」とウインドウ画面が現れ、俺は「はい」を選び扉を潜った。
気が付くと迷宮エリアを越えた先の所に居た。
「へぇー、中はこんな感じなんだぁー」
ルーシャさんは目を輝かせてダンジョン内をきょろきょろと見渡す。
「こっちです、ルーシャさん」
「うん、今行く」
ルーシャさんを連れて少し歩き分かれ道に到着して最短ルートの方に進んだ。
「クソが……二度とやるかよ! こんなのクソゲーだ!」
「まぁまぁ。遠回りのルート行きましょう」
「ふんだ!」
イライラしている男性を宥めている四人組のパーティーとすれ違う。……四人ともボロボロだな。相当難しそうだけど突破したクランはいるのかな。
俺は颯音に尋ねた。
「颯音、最短ルートを突破したクランとか居んの?」
「うーん、まだ居なかった……かな? トオルさんのクランも途中までは行ったみたいだけど、突然退去して通常ルートにしたって聞いたよ」
「トオルさんの所が……気合を入れないとな」
少し進むと見上げても天井が見えない程の吹き抜けの場所に到着した。凝らして見上げると、飛行しているモンスターがちらほら確認が出来た。
周りには数人のプレイヤーが居るが腰を下ろして見上げていた。休息しているかな。
俺はコガネ達を呼び出して球体と一体化させ、颯音も三体の狼を呼びしてコクヨウと共鳴をした。ルーシャさんはヒスイの背に、颯音はギンの背に跨る。
「春名、準備万端だぜ」
「いつでもいけるよ」
「そんじゃ行きますか」
白と赤の翅を展開して天辺を目指して舞い上がった。




