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第324話

「そうか……俺負けたのか……負けちゃったかぁ~」


 ベッドの上で俺はそう呟いた。

 体を起こして部屋を出た。砂浜まで歩いてコガネ達を呼び出した。


「みんな、怪我はないようだな。一安心だ」


『ハルナ……ごめんなさい』


 俺はアカガネの頭を撫でた。


「アカガネは悪くないよ。俺の方こそごめんな。体の方は大丈夫か? クロガネも平気か?」


『……平気。でも、悔しい……』


『私も悔しいよ! クロガネ!』


『暑いからくっつかないで……!』


 逃げるクロガネを追い駆けるアカガネ。微笑ましい光景にちょっとだけ笑ってしまった。すると、コガネが頭の上に乗っかってくる。


『僕のこと心配してないの?』


「ん? 一応心配はしているけど、コガネなら大丈夫だってわかってるから」


『ちょっと複雑なんだけど』


「いてっ。頭を叩くなよコガネ」


『小虫ちゃん、ちょっと話があるわ』


 真剣な表情のヘイムンダが目の前にやってくる。


『あのモンスター……霜の巨人にはまだ隠された力があると思うわ。だから、全体の底上げをした方がいいわ』


「俺もそう思う。なんか具体的な案があれば教えてくれヘイムンダ」


『一番簡単なのはオベロン様を復活させることかしら。そうすれば、女王様が小虫ちゃんに授けた祝福が覚醒するわ』


「へぇー、なるほどな」


『ハルナ……暗い世界に行きたい』


『私は火山エリア!』


 クロガネは常夜エリア、アカガネは火山エリアに行きたいみたい。


『行きたくないけど沼地に行けるなら』


「ヒガネは沼地と。ハガネは行きたいところある? 琥珀石が見つかった常夜エリアがいい?」


 そう尋ねてもハガネは無言で見つめてくる。


「まぁ行きたいところあれば言ってくれよ。ビートル隊は?」


『主! 我々は主と一緒なら例え地の果てでもお供致しますぞ!』


「シロガネはあるか?」


『私? うーん、最終進化までしているし、特に行きたいところはないかな。強いて言うなら、もう少し花の種類を増やして欲しいかぁ~』


「花の種類か。これが終わったら増やすよ」


『約束よ?』


 シロガネと指切りした。


『約束と言えば……鉱山……』


「うぅ……そ、それも落ち着いてから……でもいいか?」


『……仕方ないわな』


 どうにか延長が出来て内心ほっとした。


『ハ、ハルナ……ぼ、僕は海の深い所に、い、いきたい……』


「深い所? うーん、別にいいけど、場所は知っているのか?」


 そう聞くと激しく頭を振るアオガネ。


「今度連れて行ってくれよアオガネ」


『う、うん……!』


「ディルたちは?」


『我らはオベロン様が復活した時に伝えよう』


「てことは、取り敢えずはオベロンのテイムが優先かな。そのあとはみんなが行きたいところだな」


 時間を見ると丁度昼の一時ぐらい。昼飯を食べてから再開しよう。


「一旦、戻すぞー」


「ハルナさーん!」


 コガネ達を戻し終えるとウィルが走って俺の所にやってくる。


「おっす。どうかした?」


「あ、いえ。さっき声を掛けようと思ったんですが、そういう雰囲気じゃなくて……」


「あー……あはは……ごめんごめん。もう大丈夫だから。あ、それともう少し待って欲しい」


「ルラーシャもわかっていますし、時間のことはあまり気にしないでください。ハルナさんの好きなように進めてくれれば」


「ウィル……!」


 俺は全力でウィルの頭を撫でた。


「ハ、ハルナさん! 髪が乱れるからやめてください!」


「あはは、ごめんごめん。あまり時間は掛けないから」


「あまり無理しないでくださいね?」


「おう。じゃあ一旦落ちるわ」


 ログアウトしたあとスマホを開き、募集が無いのを確認してからアイスタイタンの核の行を消して、再度募集を掛けた。

 簡単に昼飯を作ってテレビを見ながら食べているとスマホが鳴った。画面には颯音の名前が表示されていた。


「もしもし」


『あ、春名。今日暇?』


「やることが多いから暇じゃない」


『ええ!? そ、そんな……午後から遊べるように色々と予定を終わらせたのに……』


 電話越しに落胆している颯音の気持ちが伝わってきて俺は溜息をついた。


「手伝ってくれるならいいよ」


『本当! やった! じゃあ先に拠点で待ってるよ』


「おう。それじゃあな」


 急いで昼飯を済まして俺もログインした。


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