第321話
数時間掛けて上空を飛び、頂上は雲に隠れているほどの雄大な雪山に到着した。この雪山の何処かにアイスタイタンがいるのかも知れない。一番怪しいのは頂上。頂上まで行って下山する形で探せばいいな。
「クモガネ、とりあえず頂上に向かうぞ」
『ハルナ……なんか嫌な感じがするからアカガネも呼んで』
「……わかった」
言われた通りにアカガネを呼び出し共鳴し翅を展開した。慎重に進んでいると、突然地響きが起き、雪山全体が大きく揺れた。その影響で雪崩が起きている。
そんな光景を見ていると、翅が勝手に動きだし大きく右に避けると、俺が居たところに大きな塊が落下した。
見上げると大きな塊が俺の頭上にあるのに気が付くとまた勝手に翅が動き回避した。
『ぼんやりしていると当たるよ、ハルナ!』
「悪い……助かった。後は俺に任せて」
翅の主導権を貰い落下してくる大きな塊を避けて頂上に向かう。頂上に行くに連れて落下してくる大きな塊の数が増えてくる。俺はクロガネを呼び出して共鳴して右腕に巨大なドリルを装着する。目の前に来た大きな塊を巨大なドリルで粉砕した。
「岩? ……クロガネ、この数だけど行けるか?」
『私の心配より自分の事気にしなさいよ。……平気よ、このぐらい』
「了解!」
巨大なドリルは激しい音を立て回転しだし、目の前に来る岩を次々に粉砕して進んで行く。大分進むと、大岩に紛れたロックゴーレムも降ってくるようになるも立ち止まることなく進んで行った。
クロガネのスキルは鉱物系モンスターに相性がいい。呼び出して正解だったな。
雲を抜けると青空が広がっており、頂上には煌びやかな氷の城があった。敵が居ないのを確認してから近くに降りる。
「綺麗な城だな」
全員を呼び出してから球体と一体化してもらい、白い大きな扉を開けて中に突入した。
入って直ぐに氷のシャンデリアがあって中はそこまで暗くない。壁には氷のランタンみたいのが飾られている。他に置かれているものはなく、奥には螺旋階段があった。
「我の城になに用だ、侵入者」
階段の上から鋭い眼光で睨む編み込まれた白い髪に雪のような透き通った肌に合う白いドレスを着た女性が白い剣を構えて立っていた。女性の上にはフローズンクイーンという名前が表示されている。
「勝手に入ってしまったのは謝ります。戦う気はないです。ほら、武器持ってないでしょ?」
俺は両手を挙げて持っていないことを女性に見せた。
「お主の周りに飛んでいるのは武器ではないのか? それにこの気配……いや、弱すぎるから気のせいだろう」
「? こいつらは武器じゃないです。俺の大事な仲間です。寒さが苦手なんでこうして貰っているんです」
「ほう。なら、もう一度問おう。ここに何しに来た」
俺は正直に話した。
「アイスタイタンってモンスターを探してて。雪山の頂上から下山しながら探そうと思ってたらこの建物を偶然見つけたんです。なんか情報とか持ってたり……」
「見つけてどうするつもりだ」
「えっと、ドロップ素材のアイスタイタンの核が必要で……」
そう言うと女性の肩が震え出し笑い出した。
「アイスタイタンを倒すだと! 面白い事を言うじゃないか! 私の眷族をかっ! クク……いいだろう! 付いてまいれ!」
女性の後を追いかけて数十分ぐらい歩いていると中央に祭壇があるエリアに着く。
「そこで待っていろ」
女性は祭壇の方に歩きだし、しゃべり出す。
「本来ならこの山にいるアイスゴーレムとロックゴーレムを各千体倒さないとアイスタイタンは出現しないが、今回は特別に会わせてやろう!」
女性がくるっと回り俺の方を見て手を叩くと、祭壇が光り出しと地面から凶悪そうな顔面をしている氷の巨人が姿を現した。
「さ、こいつを倒せるか見せて貰おうか」
女性の名前がフローズンクイーンからベーラと変わり横にはBOSSと新たに表記されているのに気が付く。
「ボスモンスター……? もしかしてこのエリアのボスモンスター……?」
「ん? 見えてしまったか……まぁよい。そうだ。私こそがこのエリアの支配者だ」
女性は高らかに言い放った。
今年最後の更新になります。次回の更新は仕事が落ち着いてからの予定なので1月の2週目ぐらいからかなと思います。
それでは、早いですが良いお年をお迎えください!




