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第319話

「冷たっ! え、雪……?」


「「「雪?」」」


 降るはずがない雪に五人組は空を見上げた。


「ダメだ。視界が悪すぎて上空の状態が分からないわ」


「モンスター……の可能性は低い。上空で誰かが戦っている余波かもしれない」


「傍迷惑かよ……」


「それか、私たちの獲物を横取りしようとしているとか……?」


「マナー違反なんだしそれは無いでしょ」


「でもでも、マナー違反ってだけで禁止じゃないじゃん……!」


「早めに倒してしまいましょう」


 五人は武器を構えてゆっくりと傷ついているセフィロトドラゴン【若枝】に近づいていく。それに合わせて頭上から鋭い氷柱をランダムに落としていく。


「ちっ! 今度は氷柱かよ!」


「こっちを狙っている様子はないけど」


「邪魔でしょうがない! どっこかでやってくれよ! マジで!」


「リーダー! いつでも行けるぞ!」


「了解! 氷柱は俺たちで対処するから遠慮なく放て」


 とんがり帽子を被った男性が杖からメラメラと燃えている火球を放つが、当たる直前に氷の壁を作り防いでいき、白い煙が立ち込めさらに視界が悪くなった。今がチャンスだな。

 俺はコガネを呼び出して特殊な革手袋に変形してもらいセフィロトドラゴンを持ち上げた。


「グラァ!?」


「大丈夫、攻撃しないから落ち着いて」


 藻掻いて暴れようとしているセフィロトドラゴンの口元をヴェルガは優しく撫でる。その間に俺はセフィロトドラゴンの氷像を代りに置いておく。氷像の中にはいくつか希少なアイテムも入れておいた。


『ハルナも氷像を作れるの?』


「クモガネよりかは細かくは作れないけど、外郭だけなら作れる」


『拠点に帰ったら教えてあげる!』


「おう。そっちは落ち着いたようだな」


「どうにか、ね」


「そんじゃ吹雪いているうちに離れますか」


 ぐったりしているセフィロトドラゴンを運んで離れる。念のためにクモガネとニアのスキルを使って認識阻害しておく。これで誰にも見られないだろう。

 大分移動してプレイヤーがいないのを確認してから地上に降ろして、シロガネを呼び出した。


「シロガネ、こいつの回復を頼む」


『こいつって……セフィロトドラゴンじゃん。まぁ良いけど』


 クモガネは【治癒蜂兵】を複数召喚して治療を始めた。


「セフィロトドラゴンのこと知ってんのか? シロガネ」


『無知なハルナに教えてあげる。セフィロトドラゴンは成長すると果実が実り、植えれば自然は豊になるんだ。だから、このエリアのモンスターたちはセフィロトドラゴンに絶対攻撃しないの』


「へぇー、物知りだな」


『これぐらい常識よう。もう回復したよ』


 セフィロトドラゴンを見ると減っていた体力も回復して傷も癒えていた。


「ありがとなシロガネ。よし、それじゃあヴェルガ。理由を聞かせてくれ」


 ヴェルガは横たわっているセフィロトドラゴンを撫でながら答える。


「ハルナはこいつの事どこまで知っているんだ?」


「自然を豊にする果実を作るぐらいしか」


「果実が実るのは完全に成長した個体が周期的に落とすんだ。もし、成長途中で倒してしまうと果実も手に入らないし、自然も荒れて、樹海の奥で隠れて暮らしている同族が我を失って暴れ出すんだ。だから、俺たちは樹海を警備しつつ、逸れた個体がいないか巡回してるんだよ」


「へぇー、そんなことしてるんだ。保護対象ならプレイヤーに言って協力してもらった方が良くない?」


「それが出来ない理由があるんだけど、これ以上はハルナでも言えない。ごめん」


「そうか……じゃあこの話はおしまい」


 手を叩くとセフィロトドラゴンが目を覚まして辺りを見渡し、ヴェルガに頭をすりすりした。


「お、懐いているようだな。こいつどうすんの?」


「仲間の所に返したいけど……仕事用の装備がないから場所が分からない」


「ここに放置していくのもな」


 考えているとシロガネに肩を叩かれる。


『セフィロトドラゴンなら周りにいるわよ?』


「え……?」


 周囲の木々がぐにゃりと歪むと、見上げる程の大きさで樹木のような姿のセフィロトドラゴンが数体に囲まれていた。名前の横に【星樹】と表記されている。これが成長した姿か。


「グラァ!」


 横になっていたセフィロトドラゴンは仲間の元に駆けていく。


「どうにかなったみたいだな」


「そう、だね」


 ヴェルガが安堵していると、セフィロトドラゴンが戻ってきて顔を舐め回す。なんか犬みたいだな。


「グルゥゥ」


『その子、一緒に行きたいって』


 シロガネが通訳してくれた内容をヴェルガに伝えた。


「こいつ、ヴェルガと一緒に行きたいってさ」


「え……俺と一緒に行きたいの?」


 セフィロトドラゴンは真剣な瞳をヴェルガに向かる。


「……わかった。これからよろしくな、アルベロ」


 額に手を翳してヴェルガが名前を呼ぶと、光の粒子になり手の甲に吸い込まれ、花みたいな紋様が浮かぶ。ヴェルガはまじまじと紋様を見つめる。

 気が付くと周りに居たセフィロトドラゴンたちはいなくなっていて、代りにちょこんと赤い実が落ちていた。近づいて確かめると、セフィロトドラゴンの果実だった。


「ヴェルガ! これ欲しい!」


「え? ……セフィロトドラゴンの果実か。無茶なお願いに付き合ってくれたし構わないよ」


「やった! これで残りはアイスタイタンの核とキングヴェノムコブラの毒液、イービルアイドラゴンの瞳の三つだ」


「大変そうだね。なんか困ったことあったら言って手伝うよ」


「おう」



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