第317話
「今日からお前はゴルゴンゾーラ二世だ!」
「ウホっ」
ゴルゴンゾーラ二世と名付けられたゴリラ……の子供は頷いた。お互いに喜んでいるから何も言わないけど……パンツ一丁で動物の被りで動物とじゃれあっている絵面はどう見てもカオスだな。アシッドさんの時も思ったけど。まぁこれもMMOってことだな。
その後、俺は二人に育成の基本的なことを伝えた。
「何かわからないことあればいつでも聞いてください」
「そうするよ少年!」
ダンチョウさんともフレンド交換。
「そんじゃ俺たちはこれでお暇するわ。ほなまたな」
「それじゃあな!」
二人はヴェルガの家を去って行った。
「あの人たちとハルナを見ていると俺もテイムしたくなっちゃうよ」
「この孵化装置はヴェルガがくれた奴だから言ってくれればすぐ持ってくるよ。それじゃレベル上げに行こっか」
「そうだね。時間も丁度いいね」
「レベル上げするなら奥の方がいいし、飛んでいく?」
「お願いしてもいいかい?」
「了解」
外に出て人が居ないのを確認してからアカガネとクモガネを呼び出し、赤と白の翅を展開して、街の上空に舞い上がる。
「ヴェルガ、行きたい場所とかある?」
「行きたい場所? うーん、あ。巨樹のダンジョンに行ってみたいかな。ハルナは行ったことある?」
「クランのメンバーで行ったよ。中層の幹エリアまでは行ったよ。一緒に行く?」
「行こうか」
街を飛び去り、しばらく飛行すると薄い膜に通り抜けてダンジョンのエリアに入る。地上に降りると地面が盛り上がり扉が出現した。
扉に手を掛けると「前回の続きから始めますか?」と目の前に表示される。
「ヴェルガ、途中からやるよりも最初から方がいいよね?」
「ダンジョンの情報を教えてくれ?」
「迷宮エリアの敵は基本50レベで徘徊しているけど、出口が一グループが通ると別の場所に消える仕様でプレイヤー同士の争いが頻発しているらしい。まぁ俺の時は隠しルートを通ってクリアしたからどれくらい争いが起きてるのか正直わからない。その先の幹エリアはルートが二つがあって最短ルートいくなら特殊なモンスターが出て、遠回りルート行くなら迷宮エリアの所と同じモンスターが出るって颯音が言ってた」
「話を聞く限り途中からでも大丈夫かな、最短ルート行ってみる? 足を引っ張るかもだけど」
「ヴェルガとダンジョンを楽しみたいし、ゆっくりいこ」
俺は途中から再開を選び、ヴェルガと一緒に扉に入った。気が付くと前回退出時に使った魔法陣の前に立っていた。
「おお、ここがダンジョンの中……って言うより木の中って感じだね」
「道あっちだから行こう」
少し進んでいくと道が二つに分かれる。左が最短ルート。右が遠回りのルート。俺たちは右のルートを進んだ。
「そう言えば、ヴェルガの武器って剣と盾?」
「ハルナに合わせて、今回は二刀流で来てるよ。あ、モンスターが来たみたい」
目の前には背中に苔やキノコが生えている巨大なイノシシのモンスターが姿を現す。
「ハルナ、サポートを頼んだよ」
そう言ってヴェルガは走り出した。
「盾士より前に行くなよ! 【挑発】!」
ヴェルガに向いていたヘイトを強制的に俺に変えるとモンスターは走り出して突撃してくる。急いでヘイムンダを呼び出して共鳴をし、巨大な盾を構えて突進攻撃を受け止めた。
「ヴェルガ、止めを!」
跳躍したヴェルガはモンスターの脳天に二本の剣を突き刺しモンスターは倒れ込んだ。
「急に走り出すなよ、ヴェルガ」
「ごめんごめん。ハルナなら合わせれると思って」
「まぁ出来るけどさ。せめて、一言言ってよ……」
溜息をついていると共鳴を解いたヘイムンダが物凄い形相で顔を近づけてくる。
『ちょっと小虫ちゃん! 呼び出すなら余裕を持って呼び出して頂戴!』
「急に呼び出してごめん……それと、助かったよヘイムンダ。ありがとう」
『次からは気を付けて。それよりも……』
ヘイムンダはきょろきょろと辺りを見渡す。
『懐かしいわ……またここに来れるなんて思っていなかったわ。あらあら! 懐かしい気配もするわ!』
『これはこれは。ヘイムンダ様。ご無沙汰しております』
天井からゆっくりと髭が特徴的な蜘蛛のモンスター、ジェントルスパイダーが降りてきて、器用にお辞儀をした。




