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第311話

「ハルナさん、息はしているようです」


 人魚族の少女を抱き上げて鼻の前に手を当ててウィルが伝える。


「そうか……あのさ、素朴な疑問なんだけど、人魚族って地上で出てても平気なの?」


「人魚族は水中ならエラ呼吸、地上なら肺呼吸になるから大丈夫です」


 そう言いながらウィルは少女を背中に背負う。


「代ろうか?」


「これくらい平気です。ハルナさん、急いで――」


『ハルナ! 後頭部にドリルを構えて!』


 共鳴をしているヒガネの指示に従って後頭部に盾を構えると、ガキンと鉄と鉄がぶつかる音が響いた。


「……この攻撃を防ぐとはな……!」


 暗闇から現れたフード姿の用心棒って呼ばれていた人が俺に向かって鎌を振り下ろしていた。ヒガネがいなかったら今の攻撃を受け止めることは出来なかっただろう。ヒガネには感謝だな。


「優秀な仲間の、おかげでなっ……!」


 押し返して巨大なドリルを突こうとしたら、目の前で消えて後方に現れた。


「瞬間移動系のスキルか……洞窟の入り口近くにいたのに一瞬で来れた訳か」


「影の者は自身を語らない。そいつは大事な鍵だ。素直に返してくれたらお前たちは見逃そう。表で暴れている奴も合わせて」


「嫌だといったら?」


「全員殺す」


 用心棒は鎌を地面に刺すと俺の足元から鎌の先端が生えてきて、後ろに飛んで避ける。用心棒は無茶苦茶に鎌を振るも、俺の四方八方から鎌が襲ってきて少しずつダメージを喰らっていく。……ヒガネの目のおかげで追えているけど体が追いつかない!


「よく躱せているな、褒めてやる」


「お前に褒められたも嬉しくねーよ!」


 俺は駆け出してドリルを構えて近づく。


「良いのか? 後ろの奴を無防備にしていて」


「がああっ!」


「ウィル!」


 ウィルの肩には鎌が刺さって苦痛の表情を浮かべていた。


「お前……!」


「動くな。動いたら今度はそいつの首を刎ねる。武器を捨てろ」


「くそっ……!」


 俺はドリルを遠くに投げた。


「良い判断だ……さ、次はこの薬を飲め」


 用心棒が放り投げて物は転がって俺の足元に。拾い上げると中身は劇毒薬だった。


「毒を飲めってか……」


「それを飲むならあのNPCは助けてやる。さ、どうする?」


 俺は溜息をついた。


「わかった」


「だ、ダメです! 飲んじゃ駄目です! ハルナさん!」


 ウィルの制止の言葉も聞かず俺は劇毒薬を飲む。


「ハハハハハ! これでお前は死ぬ! お前が消えたら次はそいつを始末してやる!」


「……やっぱりウソかよ。今だ、クロガネ!」


 用心棒の足元の地面が砂状になって、藻掻いているうちにフュンを呼び出す。


「フュン! この空間を照らしてくれ!」


『お任せあれ!』


 部屋の中心でフュンは眩しい光が放ち部屋を照らしてくれた。足元に戻ってきたクロガネと再び共鳴をした。


「サンキューなクロガネ。あいつを倒そう」


『思いっ切りぶん殴って』


「そのつもり! 【共鳴技・ブレイカードリル】!!」


 赤と白の翅を展開してから加速し、巨大なドリルが用心棒を貫いた。


「……何故光が弱点だとわかった……!」


「お前が自分で言ってただろ? 影の者って。てことは、お前のスキルは影を使うスキルって仮定して、一か八か試したんだよ。まぁ当たって良かったけどな」


「口は禍の元か……今回は負けを認めよう虫使い……」


 体力がなくなり用心棒が消滅したのを見届けてからウィルの元に駆け寄り、【治癒蜂兵】を召喚して傷の手当てをする。


「毒は平気なんですか……?」


「状態異常系の耐性は大体あるから、あれぐらいの毒は平気。他に怪我とかない?」


「あ、はい……」


「彼女も怪我は無さそうでだな。歩けるか?」


「大丈夫です、行けます」


 俺とウィルは急いで来た道を戻っていく。


「侵入者だ! 逃がす、がはっ!!」


「邪魔すんな!」


 最短ルートを行っているせいで次々に海賊と遭遇するけど、出会った海賊は片っ端から倒していく。

 アジトの外に出ると、颯音はまだ戦っていた。颯音の体力が半分以下まで削れていた。何人の海賊と戦ったんだか……


「颯音! こっちは済んだ! 引き上げるぞ!」


「お、おう!」


「あああ! 使えない用心棒がああ!! あいつらを逃がすなアアアア!」


 さっきすれ違った海賊幹部の人が怒鳴り散らして指示を出すと、下っ端海賊がこっちに向かってくるも、一瞬で俺たちの目の前に移動した颯音が一海賊たちを蹴散らした。


「ヒスイ、ウィルとこの子を背中に乗せてくれ」


 颯音の言葉を聞いたヒスイが共鳴を解除して、ウィルと人魚族の少女を乗せて浮かび上がる。


「颯音、ちょっとやり残したことがあるから島から離れてくれ」


「春名……若干怒ってる?」


「若干じゃない、かなりキレてる」


「お、おう。そうか……それじゃ先に行ってるよ」


 ギンの背に颯音が跨り、空に浮かび上がり飛んでいく。


「逃がすなあああ!」


「【共鳴技・イービルアイ】」


 赤い眼を四つ消費して俺と目が合った海賊たちを次々に石化させていく。赤と白の翅を展開して、島の上空に舞い上がる。


「念には念を……【共鳴技・フィンブルアンドラヴァル】」


 圧縮されたマグマと冷気を球体を島に向けて落とす。島に流れている川に球体が触れた瞬間、島を覆う程の大爆発が起きてから一気に凍り付いて砕け、跡形もなく消滅した。


「うん、スッキリした」


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― 新着の感想 ―
[一言] オーバーキルですね。このあとが楽しみです
[一言] は、HAZARD FINNISH……オーバーキルが過ぎる……(白目)
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