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第309話

 船から飛び立った俺は、気づかれない高度まで上昇して怪しい船を見つけてヒガネを呼び出した。


『また私に用……ってなんで上空で呼び出すのよ! 場所を考えてよ!』


 ヒガネを呼び出したらめっちゃ怒られた。


「ごめん、ヒガネ。緊急事態だから力を貸してくれ」


『緊急事態? 説明してよ』


 俺はヒガネに経緯を説明していると、心配そうにアカガネが聞いてくる。


『ウィルは大丈夫なの?』


「一応、シロガネのスキル【治癒蜂兵】で回復はせているし、兄ちゃんと颯音もいるから大丈夫だろう」


『そう……それならいいんだけど』


「ヒガネにはあの船を透視して欲しいんだ」


『いいわ、任せて』


 船を凝視しているヒガネに俺は尋ねた。


「なんか見えたか? ヒガネ」


『……いっちょ前に隠蔽スキル使ってて見れない……ムカつく……! ハルナ! 目を使うよ!』


 そう言ったヒガネは共鳴をして、俺の意思と関係なく視界が動く。色んな情報が入ってきて気持ち悪いけど今は我慢だ。少し慣れると船内の中が見えてくる。中には数人が箱を囲っていた。しかも、中にいた人は全員名前の横に海賊と表記されていた。


『更に上位の隠蔽スキルを使っているせいで箱の中が見れない……ごめん、ハルナ……』


「謝らないくていいってヒガネ。とりあえず、原因はわかったんだから結果オーライさ。それに、やる事は決まったさ」


 船に戻ろうとしたら、黒蝶を使って颯音が転移してきて、空中に氷の足場を作った。


「春名、ウィルの意識が戻ったぜ。お、ヒガネと共鳴してんのか。何かわかったのか?」


「一応な。船に戻ってから話すよ」


「了解~」


 颯音は足場を作りながら降りていく。船に戻り少し顔色が良くなったウィルを見れて俺は胸を撫でおろした。


「おかえりなさいハルナさん。ご心配をおかけしてすみませんでした」


「謝らないくていいって、たく……」


 俺はウィルの頭を撫でてから横に座った。


「よし、それじゃ報告するよ」


 俺は透視が出来ない箱と、船の中に居た海賊の事を三人に話した。


「海賊かぁ……放置していると面倒くさいことになるし、やるんだろう?」


「やるけど、レベルが50なんだよなぁ~。俺と颯音は大丈夫だけど、兄ちゃんとウィルが厳しめ」


「足手纏いになるなら俺とウィルは拠点に戻ろう」


「その方がいいかも。ここまで付き合ってくれたのにごめん兄ちゃん」


「気にしてないさ、頑張って来いよ」


「おう!」


「それじゃ、操縦室に――」


「あの!」


 突然ウィルが声を上げる。


「僕も連れて行ってください!」


 ウィルはそう言って頭を下げた。


「足手纏いなのも知っています。だけど、あそこには行かないといけない気がして……自分の事は自分でなんとかするから連れて行ってください。お願いします……!」


 俺は颯音を見ると「お前が決めろ」って言いたげな視線を返された。


「……本当は連れて行きたくないけど、わかったよ」


「それじゃ!」


「連れてってもいいけど、俺から離れないのが条件だからな?」


「はい!」


 嬉しいそうなウィルを見て俺は軽く溜息をついた。


「行くメンバーも決まったし作戦はどうする?」


「取り敢えず、海賊たちがどこに向かっているか確かめたいかな。運良くアジトを見つけれたら一網打尽できるしね。無かったら無かったでタイミング見て奇襲かな」


「アジトがあった場合はどうすんの? 春名とウィルは一緒に動くのは確定として」


「謎の箱を奪取する間、颯音には海賊たちの引き付け役を頼みたい」


「引き付け役? 海賊と沢山戦えるし、別にいいぜ」


「よし、じゃあ作戦も決まったし行こう。兄ちゃん、行ってくる」


「行ってらっしゃい」


 デッキに出て颯音はヒスイとギンを呼び出した。ヒスイの背にはウィル、ギンの背には颯音が跨り浮かび上がる。俺も赤と白の翅を展開して飛び立った。 

 離れたところにあった怪しい船を見つけて追跡を始めた。


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