第303話
「えっと、それじゃあ改めて颯音です。隣に居るのが海都と雫恩」
「どうも」
「お二人に会えて光栄です!」
海都は素っ気なく返事をして、雫恩はルーシャさんとモレルさんと握手を交わした。
「モレルよ。四人に会えて嬉しいわ」
「ルーシャ。ここで会えたのは予想外」
「そうですね。俺、オフ会初めてなんでなんかテンション上がります!」
「颯音は騒いだら追い出されるから気を付けろよ」
「え、俺だけ!? なんでよ!」
「お前が一番騒がしいからだよ」
モレルさんとルーシャさんの分の水が入ったグラスを配膳して俺は言った。
水を二人の前に置くと雫恩が聞いてくる。
「春名さん、この苺パフェを頼んでもいいかしら?」
雫恩が指差したパフェはカップル限定の物だった。俺はニヤニヤして海都の方を見ると、恥ずかしいながらそっぽを向かれた。
「畏まりました。他にご注文は?」
「私はこのクリームパスタを頼もうかな」
「このオムライスにする」
「クリームパスタ一つとオムライス一つ。颯音はどうすんだ?」
「え、俺? うーん、この店長お勧めので」
「畏まりました。それでは……」
全員の注文を聞いてバックに戻り、他のテーブルにも行き注文を取り行く。
タイミングが悪く料理は他のスタッフが運んでくれたけど、皆は美味しそう料理を食べ、話が盛り上がった。
俺はそれを見届けてから休憩に入った。
「はぁ~……なんか疲れた……」
テーブルに突っ伏してスマホを見ているとドアが開き、黒崎さんと蒼さんが入ってくる。
「お疲れ様です」
「お疲れ~」
俺の正面に蒼さんが座り、手に持っているペットボトルを飲み終えた黒崎さんが尋ねてくる。
「そう言えば、春名君の友人と一緒に居た女性の二人って学校の先生とか?」
「あ、それ! 俺も思った!」
蒼さんも興味津々に会話に混ざる。
「あの二人は今やっているゲーム内で知り合った人たちです」
「どんなゲーム?」
「このゲームなんですけど……」
二人にスマホの画面を見せながら簡単に説明した。
「へぇー、面白そうだね。まぁ仕事が忙しいし、手は出さないかな」
「これってヘッドギアがいる感じ?」
「このゲームは必要ですね」
「ヘッドギア、今高いんだよなぁ~……やりたいけど保留だな」
「ヘッドギア……あ、なるほど……」
「どうかしましたか? 蒼さん」
「ううん。何でもない」
首を傾げているとスマホが鳴って颯音から「今、会える?」と連絡が来た。
「すいません、、ちょっと外出てきます」
「休憩時間が終わる前に戻ってくるんだよ」
「はーい」
薄めの上着を羽織って裏口から外に出て、お店の前に行くと五人が揃っていた。
「春名君、休憩中にごめんね?」
「大丈夫です。それでどうしました?」
「さっき話し合ったんだけど、イベントの打ち上げをしようと思って」
「あー良いんじゃないですか? いつにするかもう決めてたりしてます?」
「私とルーシャが平日がログイン出来なくて……土日のどっちかでしたいんだけど、颯音君はどっちも平気、海都君と雫恩ちゃんは日曜が無理。土曜にしようかってなってて」
「土曜は午前中にバイトあるから、六、七時以降なら大丈夫です」
「本当! それじゃあ土曜に決まりね! 詳細とかはあとで連絡するね」
「わかりました」
「それじゃ春名君のバイトの邪魔になっちゃし今日は解散」
「じゃあな春名」
「お仕事頑張ってください」
「ウィルの件、忘れるなよ?」
「わかってる」
「バイバイ、春名」
「またね春名君!」
「はい、お気をつけて」
五人を見送ってからスタッフルームに戻ると蒼さんが座っていた。
「戻りました。あれ、黒崎さんは?」
「おかえり、秀一君はトイレに行ってるよ。残りの時間もよろしくね」
「はい」
残りの時間も仕事をこなして、特に問題も起こることなく無事に終えた。




