第301話
しばらく船が進んでいると突然止まり、船内にあるスピーカーから颯音の声が聞こえてくる。
『春名、船の下からモンスターの反応があるんだけど確認して欲しい』
「了解した」
「僕も行きます」
俺たちは外に出て船下を覗くと、暗い海の中で色とりどりの光る花のような模様が広がっていた。
「おお、すっげぇ綺麗だな。海の中の花畑みたいだな」
「そうですね……この光っているのがモンスターでしょうか?」
「かもな。ちょっと見てくるわ。アオガネ」
アオガネを呼び出して一緒に暗い海に飛び込んだ。ヒガネのスキル【暗視】を使い沢山の海月のモンスターが泳いでいることに気が付く。
海月のモンスターはパラライズジェリーフィッシュ、ポイズンジェリーフィッシュ、ナイトメアジェリーフィッシュ等々の色んな種類が集まっている群れだった。
状態異常系は俺のマントとヒガネのスキルでほとんど効かないから大丈夫だろう。
『ハルナ、こっちに向かってるから蹴散らす』
『やってくれアオガネ』
アオガネは周囲の水を操って海月のモンスターを次々と倒していく。倒して海中に漂っている素材を俺のところに流れてくるように水流も操ってくれて素材集めが楽だな。
一通り倒し終えて、アオガネの頭に掴まり船に戻った。
「おかえりなさい。どうでしたか?」
「海月のモンスターがいっぱい居たけどアオガネが倒してくれた。ありがとなアオガネ」
アオガネの下顎を撫でる。
「それと良いアイテムも取れたんだぜ?」
インベントリからさっき手に入れたアイテムを床に置いた。
「これは……モンスターの卵?」
「正解~ジェリーフィッシュの卵だ。まぁ俺はいらないから他の人にあげる予定だけど」
「あ、それなら僕が頂いてもいいですか!」
凄い勢いで挙手をするウィル。
「お、おう……それならウィルにあげる。拠点に帰ったら渡すよ」
「ありがとうございます!」
船内に戻っていくウィルの足取りはどこか嬉しそうだ。
『春名、モンスターの反応が無くなったけど倒した感じ?』
スピーカーの下にあるボタンを押して返事をする。
「おう、倒したから船を進めてくれ。ちなみにどれくらいで目的地に着くんだ?」
『飛ばせば後一時間ぐらいかな』
「了解」
船が動き出すと、小さくなったアオガネを抱えて船内に戻った。
ウィルと話しながら時間を潰していると船の速度がゆっくりになっていき、エンジン音が止まった。目的地に着いたのかな?
デッキに出ると船は桟橋の近くに停泊してた。
船から降りて石造りの道を進んで行くと村を見つけるも、家の明かりは無く静かだった。
俺はヒガネを呼び出す。
「ヒガネ、家の中が見たいから共鳴を頼めるか?」
『家の中が見たいの? うーん……武器を持って潜んでいるみたい。ついでにあの子に伝えて。君の探している子供はあの大きい家だから』
ヒガネは器用に足を使ってどの家かを指してくれた。
「ありがとなヒガネ」
ヒガネはフードの中に入った。
「ウィル、ヒガネからの伝言。あの家に子供が居るって」
「本当ですか! 行ってみます」
「武器を持ってるから俺たちも近くまでついて行くよ」
村の中を歩きヒガネが指した家の前まで行き、ウィルはドアを叩いた。
「夜分遅くにすみません。ウィルって言います。こちらにオルニア君が居ると聞いて約束を果たしに来ました」
しばらくすると、ドアがゆっくり開き、中から子供が出てくる。
「ウィル兄ちゃんなの?」
「うん、そうだよ。遅くなってごめんね」
「ウィル兄ちゃんだ!」
子供は勢いよく抱きついて、ウィルは後ろに倒れてしまった。
家の中から子供の両親が出てくる。
「貴方がオルニアを助けてくれたウィルさんですね。それに後ろの方々は……」
「あの二人は僕の命の恩人です」
「あ! あの時の人だ!」
ウィルに抱きついていた子供が俺のところに走ってくる。
「ウィルと最初に指切りした男の子か。久しぶり、元気にしてたか?」
「うん! 元気だよ! クモのモンスターはいる?」
「フードの中にいるよ」
ヒガネは少しだけ顔をみせるも直ぐ引っ込んだ。
「あの……ここで立ち話もなんですから、どうぞお上がりください」
「それじゃお言葉に甘えてお邪魔します」




