第297話
「まるで蜘蛛みたいな見た目だな! それがおめぇの新しい姿か。あいつとの戦いもなかなか楽しかったが……お前さんはもっと楽しめてくれるよな?」
「トオル、この戦い俺に譲れ」
「はぁ? なにふざけたことを言ってんだ? ディオガ」
「聞こえなかったか? 俺に譲れと言ったのだ」
「ふざけんな! あいつは俺のモノだ!」
敵意剥き出しに噛み付くトオルさん。
トオルさんとディオガさんがいがみ合っている隙に隣にいたナツキさんが一瞬で間合いを詰めて、ディオガさんに斬りかかるも剣で受け止めた。
「へぇ~油断していると思っていたけどやるじゃん。でも、お前は俺とやろうか」
飛び退いたナツキさんは刀を地面に突き刺すと、先が尖った蔦みたいなものが生えてディオガさんと一緒に包み込む
「全隊員に告ぐ、我らに勝利を!」
「兄貴、あとは頼んだよ!」
完全に蔦みたいなもので包まれて二人の姿が消えた。
「隊長の言葉を聞いたな、お前たち! 行くぞ!」
「え、おい! 勝手に動くんじゃね!」
白い制服の一人が剣を掲げて言うと、他の白い服の人たちが武器を構え向かってくる。
「ここは僕に任せて」
アキさんが俺の前に出て本を開く。
「【南方統べる朱き霊鳥よ、その聖なる焔で敵を焼き払え! スザク!】」
アキさんの周りに青い炎が生まれ、四枚の翼を持つ朱い鳥の姿に変わる。
「行けスザク」
アキさんの指示で朱い鳥は翼を大きく広げて青い炎を纏った風を飛ばし迫りくる人たちを吹き飛ばした。
「あの人たちの事は僕が請け負うよ。だから、君はあの人に集中するんだよ」
アキさんは炎に包まれながらも涼し気に言った。
崖上からトオルさんが降りてきて溜息をつく。
「あいつらはディオガの命令は絶対だから邪魔した。でも、まぁこれで心置きなくやれるな」
「トオルさんの部下は大丈夫なんですか?」
「ん? おう、あいつらには手を出したらクランを首にすると言っているから大丈夫だ」
「こわっ……職権乱用ですよトオルさん」
「使えるもんは使わんとな。それで、モレルも空気を読んで参戦しねぇよな?」
後ろにいるモレルさんに圧を掛けながらトオルさんは尋ねた?
「うーん、したくても出来ないのが正解かな」
「どういうことだ?」
「トオルさんには教えないもーん。ハルナ君、応援してるから頑張って」
モレルさんは離れた場所に移動して手を振ってくれた。
「これで邪魔をする者はいなくなったな。いつでもいいぞ」
「それじゃあ行きますっ!」
六本のアームから細くて頑丈な切れ味抜群の糸で蜘蛛の巣状にして飛ばした。
トオルさんは飛んでくる糸を斬りながら突っ込んでくる。
「そんなもんかよ!」
トオルさんは大剣を大きく振り上げるのを見て近くにあった岩に糸を飛ばして、振り下ろしの攻撃を躱した。
すかさず、アームを二本を重ねて切れ味はほとんどないけど太くて硬質な糸にして、鞭のようにしならせて攻撃をする。
「舐めんなよっ!」
トオルさんは大剣をもう一本抜いて、二本を匠に扱い俺の攻撃を捌きながら少しずつ進んでくる。
太くて硬い糸を解き、細く切れ味抜群の糸に変化させ、網のようにしてトオルさんを囲んだ。
「そんなの効くかよ! 【地烈斬】」
大剣を地面に突き刺すと大爆発が起きて砂煙が舞い上がった。
俺は一旦距離を取って様子を窺った。
風が突然吹き出し砂煙が晴れると、トオルさんから赤いオーラが放たれ、目も赤く光っていた。
「俺の攻撃耐えろよ?」
そう言い放ったトオルさんは一瞬で目の前からいなくなった。気が付くと俺の目の前に来ていた。
反応が遅れて盾で防げないと思った俺は、スキル【パーフェクトガード】を使い、トオルさんの攻撃を防ぐ。
トオルさんの攻撃が【パーフェクトガード】に触れた瞬間、罅が入り俺のスキルは粉々に砕け、もろに攻撃を受けて俺は吹き飛ばされた。
砂浜を何度かバウンドし、咄嗟に翅を展開して体勢を整えた。
……一撃を食らっただけで体力がレッドゾーンかよ。威力やばすぎ。それよりも、俺のスキルが割れるなんて……絶対防御を破るって無茶苦茶だな。
残り回復スキルを全部使って瞬時に体力を回復させる。
「相変わらず無茶苦茶ですね……防御不可スキルとかズルいですよ」
「良いスキルだろう? 一撃で倒れなかったのは褒めてやるぜ。共鳴技を出し惜しみしてると負けるぜ?」
「言われなくても……! 【共鳴技・オーバクロス】」
六本のアームは十文字の穂先の槍、俺を覆う程の大盾、連射可能のクロスボウ、細かい刃が付いた回転刃、黒くて刃先がギザギザした大剣。アームの先端が機械の開閉口付きにそれぞれ変形した。
9月はリアルが忙しくなるので不定期更新になります。




