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第295話

 海に向けて飛行をしていると、地面に突き刺さって放置されているフラッグを見つけた。

 周りには人の姿が見えない。隠れていると思うけど、どう見ても罠だよな……

 俺はモレルさんに報告した。


「モレルさん、放置されているフラッグを見つけました」


「放置されている? 周りに防衛している人いないの?」


「見た感じいないです。隠れてのこのこやってきたプレイヤーを待ち伏せしているかも」


「百パーセントそれだね。ねぇハルナ君。あのフラッグを遠くから奪えたり出来る?」


「コガネの糸を使えば行けなくもない、かな」


「よーし、あいつらに一泡吹かそう!」


 俺は頷いてフラッグが刺さっている真上に移動。


「アオガネ、【雨乞い】を頼んで良いか?」


『う、うん……』


 アオガネがスキルを使うと、空は段々と暗い雲が広がっていき、ぽつぽつと振り出す雨は次第に強さを増していく。

 その隙に細くて見えづらい糸を飛ばして、フラッグに括り付けて、一気に引っ張り上げる。

 フラッグが無くなって、隠れていた人たちが姿を現して、俺の方に向けて攻撃を飛ばしてくる。

 ……まぁ雨のせいで視界が悪い中じゃあ当たらないけど。


「フラッグも奪ったし移動しましょう」


『ハルナ! 俺も戦うぜ!』


「はぁ!? ちょっと待っ!」


 アオガネは共鳴を解いて本来の大きさで地上に落ちて行った。

 俺は溜息をつくとモレルさんが聞いてくる。


「移動するんじゃなかったっけ?」


「すいません、モレルさん。水を浴びてアオガネが好戦的になってしまったみたいで……ちょっと行ってきます。アイン、モレルさんの事を少しの間よろしくな」


『お任せを』


 共鳴を解いたアインの背中にモレルさんが移動してからアオガネの後を追い駆けた。

 アオガネが落ちた衝撃で地面は陥没。辺りを見渡したアオガネは水を操り、自身と同じ姿のを七つ作りだして暴れ始めた。

 ……アオガネのスキル【八岐大蛇】か。本気出し過ぎだ。

 俺はアオガネの頭に着地して頭を軽く叩く。


「アオガネ、一旦落ち着け」


『まだ戦いたいから止めるな』


「戦いたいって……もう敵はいないぞ?」


『え?』


 アオガネはスキルを止めて辺りを見渡してから落ち込んだ。

 土砂降りだった雨も止み、灰色の雲も消え去り、眩しい太陽が顔を覗かせ青空が広る。


「今度、戦闘になったら力を貸してくれよアオガネ」


『う、うん……頼って、ね?』


「わかった」


 アオガネと約束を交わすと、球体と一体化する。

 アオガネを回収してモレルさんの所を戻り先を進んだ。

 途中でもう一本のフラッグを奪って、しばらく飛行してようやく海原が見えた。 

 誰もいないのを確認してから俺とモレルさんは砂浜に降り立った。


「綺麗ね。うちの拠点には負けるけど」


「そうですね。このイベントが終わったらのんびりしよっと。あ、ウィルとの約束があったんだ」


 ウィルと約束があったことを思い出す。


「なんの約束?」


「ちょっと一緒に海原エリアを探索しよって約束です。モレルさんも行きます?」


「時間が合えば行くよ。……ねぇ、あれなに?」


 そんな会話しながら砂浜を歩いていると、砂浜が盛り上がり白い毛並みの小さな猫みたいなモンスターが姿を現す。


「ガオ?」


「きゃあ! 可愛い!」


「あ、モレルさん! 危ないですよ!」


 俺の制止の声も聞かずモレルさんは走り出してモンスターに近づく。


「おいで~」


 モンスターはモレルさんの手をくんくんと嗅いだあと頭をすりすりさせる。

 モレルさんは目を輝かせて俺の方に顔を向ける。


「ハルナ君! めっちゃ可愛い」


「そう、ですね。こんなに人に懐いているってことは誰かがテイムしたモンスターっぽいですね」


「うーん、可愛い」


 モレルさんは俺の話を聞かず、モンスターは抱き上げて可愛がる。

 俺は溜息をつく。

 こいつがテイムされたモンスターなら近くにプレイヤーがいるよな。俺だけでも警戒しておこう。

 そう思っていると話し声が聞こえてくる。


「兄貴、こっちで合ってるの?」


「多分……あはは……」


「多分って……」


 高身長で腰に刀を差している男性がかなり大きめな溜息をついた。

 もう一人は低身長で髪が白と黒が半々になっていてローブを着ている二人組がこっちに向かって歩いてくる。


「兄貴、止まって」


「ん?」


 高身長の人と目が合ってお互いに警戒して武器を構える。


「ガウガウ!」


 モレルさんの腕の中から抜け出してモンスターは二人組の方に走って行った。


「あ、ビャッコ! おかえり! 探したんだからな?」


「ガウガウ」


 どうやらあの人があのモンスターの飼い主のようだな。


「ねぇ、その子は君の?」


 モレルさんは低身長の人に近づいて尋ねた。


「え、はい。僕のパートナーです。ビャッコって言います」


「可愛いね! 触ってもいい?」


「えっと、優しく触るならどうぞ」


「ありがとう!」


 二人ののほほんとした雰囲気に気が抜けて武器を仕舞った。

 高身長の人も武器を仕舞い、目が合いお互いに苦笑を浮かべた。


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