第294話
「ハルナ君、ラストの使用回数を火力から手数に変更するよ」
「やっちゃってくださいモレルさん」
モレルさんは大砲に手を添えると光り始め、無数の小型ファンネルに分裂した。
【空艇蜂兵】に向かって飛行しているプレイヤーが視界に入ると、モレルさんは分裂した小型ファンネルを操って攻撃を仕掛ける。
「ターゲットが素早くて小さいからこちらの攻撃が当たりません!」
「落ち着け! 攻撃自体にそこまでのダメージは無い! 遠距離攻撃が出来る者は本体を攻撃! 出来ない者は援護に回れ!」
一人のプレイヤーが的確に指示を出し俺とモレルさんを攻撃してくるけど、空中戦に慣れていないのか攻撃が当たらない。
……今のうちに数を減らしておこう。
「ハガネ、行くぞ」
そう言うとハガネが一体化した球体が右手に移動してきて太刀が出現する。
一気に加速して、攻撃を躱しつつ、一人一人切り倒していく。
モレルさんの攻撃である程度減っていたから一撃で倒せたな。
倒した人たちは同じ黒の制服姿だった。トオルさんのクランで間違いないな。
「モレルさん、少しでも【空艇蜂兵】から離すために遠くに行きます」
「それなら北に行きましょう。さっき双眼鏡で見たけど遠くに海が見えたんだ」
「海が? そっちに向かいつつ奪えるフラッグは奪っていく感じで行きますか」
「了解だよ!」
ある程度敵を倒してから進路方向を変更して北に向かった。
俺とモレルさんは上空で激しい戦いが繰り広げられている地上を見下ろしていた。
「うーん、土煙が凄くてなんも見えない……ハルナ君の方はなんか見えた?」
双眼鏡を覗いているモレルさんが尋ねてくる。
「拠点の守りが薄くなっているのが。ただ、フラッグを隠しているようで見当たらない」
「その拠点で防御力高そうな人はいる?」
「キラキラ光っている全身金鎧の人が一人」
「勘だけど、その人が持っていそう」
「勘ですか……それじゃモレルさんの勘を信じましょう。ディル、お前の力を使うぞ」
『……ふん。我の力を十分に扱えるか見てやろう』
蜻蛉のマークが描かれている球体が目の前に来て、対物ライフルが出現した。
『支えてやるが、命中精度はお前の腕次第だ』
手に取ると対物ライフルが意外と軽くて内心驚いた。
実物に触れる機会なんてないけど、こんなに軽い訳ないよな。
銃を構えてスコープを覗き込む。
「ヒガネ、サポートを頼む」
『わかったわ。ちゃんと狙うんだよ?』
スコープに敵までの距離と弾の予測弾道、風の流れ等の情報が視界に入る。
「スゥ……【共鳴技・ドラゴンブレイク】」
俺は深呼吸して心を落ち着かせ引き金を引いた。
反動が凄すぎて後ろに吹き飛びそうになるも翅を広げて抑えた。
「モレルさん! 大丈夫ですか!」
「う、うん。大丈夫、平気平気。ハルナ君も怪我してない?」
「俺は少し腕が痺れてます」
苦笑交じりで俺は答えた。
「さっきの人はどうなった?」
土煙が晴れるとさっきまで金鎧の人が居た周辺にフラッグが落ちていた。
「えっと……倒せたようです。モレルさんが言って通りにその人がフラッグを持ってたみたいです。今パニック状態でわちゃわちゃしてます」
「奪うなら今でしょ! レッツゴー!」
「了解っ!」
対物ライフルを消した俺は急降下する。
拠点の真上に着くと、拠点にいたプレイヤーが一斉に俺を見てきたから、ヒガネの共鳴技を使った。
「【共鳴技・イービルアイ】」
瞳を二つ消費して、周りにいたプレイヤーを全て動けなくさせた。
「う、うごけねぇ……! な、なにをしたっ!」
「ふふふ、フラッグは貰っていくね」
地面に落ちているフラッグをモレルさんが拾い、モレルさんを背負い飛び去った。
「まずは一本だね。この近くのクランも襲撃する?」
「周りのクランも異変に気づいて動き出したから、離れたところを狙った方がいいかも」
「了解。行き先はハルナ君に任せるよ」
「わかりました」
更に上昇してから海がある方角に飛行していく。




