第289話
海都視点です
「……これぐらいでいいか」
弓を降ろして辺りを見渡す。
粗方、索敵範囲内にいるプレイヤーの体力も削った。
俺の攻撃を被弾を最小限にして拠点に侵入した奴がちらほらいるけど、室内に仕掛けられたエグイ罠でどうにかなる。
雫恩の方は大丈夫だろうか。心配だけどあいつ自身、大丈夫って言ってたし信じよう。
「もう攻撃は終わったのかしら? 子ネズミちゃん」
バサバサと羽ばたく音が聞こえ上を見上げると、白と黒の動きやすい服装をしている赤い髪の女性が、巨大な鳥の背中に乗って見下ろしていた。
「ねぇ、この拠点の中に虫野郎がいるんでしょ? 教えてくれたらあなたは見逃してあげる」
「あいつならこの中のどこかにはいるけど、あいつとやるなら俺を倒してから行けよ、オバさん」
「オバっ!? あんたもムカつく……! 私を馬鹿にして許さない! 【眷族召喚】」
軽く挑発したら女性の周りにカモメのような鳥モンスターが大量に出現した。
「あなた達の餌よ、沢山お食べ」
目が血走っている鳥モンスターが一斉に襲いかかてくる。
モンスターの攻撃を躱すと、嘴が屋根に突き刺さった。
颯音の動き方に慣れているから簡単に避けれるし、モンスター自体の体力が低いから捌けるけど、数が怠い……
俺は一気に倒すためにリュウオウを呼び出す。
「リュウオウ! 一匹残らず薙ぎ払え!」
「グオオオオオオ!」
リュウオウの体から青白い電気が放たれて、女性が召喚したモンスターを全て倒し切る。
女性は巨鳥に乗って見えない何かでリュウオウの攻撃を防いでいる。
「ドラゴンをテイムしているなんて驚きだわ……!」
「さっさと共鳴をしろよオバさん。出来るんだろう? 共鳴」
「言われなくても! クイーン、共鳴よ!」
巨鳥が光の粒子になり、女性と一体化すると、背中に大きな翼が生え、右手に持っていた槍の穂先が三つに変形した。
「あんたと虫野郎を倒してイベントを終わらせてあげるわ!」
「やってみろよ」
俺もリュウオウと共鳴をした。
女性は上空を飛行しながら無数の羽を飛ばしてくる。
羽の弾幕を避けて矢を放つも、空中にいて当てづらい。
「空中は私のテリトリーよ! あんたの下手なエイムじゃ当たらないわ!」
「……挑発してくれるじゃん」
「これでおしまいよ! 【共鳴技・タイラントテンペスト】」
女性は両手で槍を回すと上空に巨大な竜巻が起こる。
吸い込まれないように必死に近くの壁にしがみつく。
「吹き飛びなさい!」
翼を大きく羽ばたくと上空の竜巻を飛ばしてくる。
勝手に共鳴を解除したリュウオウが身を挺して庇ってくれて、リュウオウと共に拠点内に落ちた。
「いてて……リュウオウ、大丈夫か?」
『これぐらいなら痛くない』
平気そうな顔を向けてくるリュウオウ。体力が半分削れているのになんでもない様な態度だ。
硬い鱗のおかげでリュウオウの防御力は高いはずなのに、ここまで削るとはな。
俺はリュウオウの背中を撫でる。
「ありがとうリュウオウ。本気出すからもう少し力を貸してくれよ」
『いいの? みんなに見られちゃうよ?』
「ここで負ける方が嫌だから」
俺はリュウテイを呼び出す。
眠そうな顔をしているリュウテイの顔に手を伸ばす。
「リュウテイ、お前の力を貸してくれ」
じっと見つめていたリュウテイは頷き、光の粒子になって弓に吸い込まれた。
それを見たリュウオウも弓に吸い込まれた。
「【古代竜の絆】……発動」
俺のアバターが変化していく。黄色のメッシュが入った濃い青色に髪が染まり、額には赤い角が、体には濃い緑色の鱗が生えてくる。
この姿になると力が漲ってくる。
足に力を込めて一気に飛び上がり天井に飛び出す。
「私の共鳴技を受けても生きていたなんて……それにその姿はなんなのよ!」
「この姿は特殊な進化したリュウオウのおかげで手に入れた力だ。本当はまだ隠していたかったけど……あんまり長く維持出来ないから速攻で終わらせる」
「出来るものなら! してみなさいよ!」
大きく羽ばたくとさっきよりも早くて大量の羽が放たれた。
俺はリュウテイのスキル【土壁】を使い、地面を隆起させて壁を作り防ぐ。
土壁に触れて、土で出来た棘のスキル【土棘】に紫色の電気を纏わせて女性に放った
「そんな鈍間な攻撃当たる訳っ!」
女性が俺の攻撃を軽く躱すけども、俺が放った矢は女性を追尾して、死角からの攻撃が当たった。
「あんた……いくつの属性スキル持っているのよ……!」
「お前に言う必要はないんだけど。まぁあいつよりは少ないさ。おしゃべりはここまでだ」
「舐めるなああああ!!」
激怒した女性は凄い勢いで上昇して、槍を向けて一気に降下してくる。
俺はリュウオウのスキル【竜の大咆哮】を使い一瞬の間だけ硬直させ、リュウテイのスキル【土牢】を発動して動きを封じる。
「なんなのよ、これ!?」
「【共鳴技・ヴォルテックスディザスター】」
周囲に青、白、紫の三色の雷球を作りだし、向かってくる女性に一本の矢を放つ。
「【暴風の守護】!!」
激しく渦巻く風が女性に纏わりつく。防御スキルか何かか?
俺が放った矢は風に流されて土の柵に刺さる。
「あんたの共鳴技なんか効かないわよ!」
「それはどうかな?」
「へぇ?」
三色の雷球から稲妻が走り、土に刺さった矢に集まることで、牢屋が崩れる程の威力の雷撃が女性に直撃。
体力はまだあるけど、気絶して落ちていって、下の方で仲間が受け止めていた。
「仲間が居たのか……面倒くさいし纏めて倒そう」
俺は地上に降りる。
「く、来るな!!」
仲間の一人が震えながら武器を向けてくる。
「悪いけど、倒させてもらうよ。【共鳴技・グランドバイト】」
地面が隆起し竜の頭の形になり、口が開いて纏めてプレイヤーを呑み込んだ。
プレイヤーの反応が無くなったな……そろそろ共鳴の限界時間だな。
懐に仕舞っていた黒い蝶に触れて、離れた上空にある【空艇蜂兵】に飛んだ。
「お疲れ様カイト君」
「疲れた……」
【空艇蜂兵】に飛ぶと、モレルさんが出迎えてくれた。
共鳴を解除して寝転がった。
リュウオウは俺を心配そうに見てくるけど、リュウテイは俺の隣で眠りに就く。
「お疲れさん。ゆっくり休んでくれ」
二体を撫でながら労いの言葉を掛ける。
「カイト君、ハルナ君から渡された【治癒蜂兵】を使って」
「俺より、リュウオウに使ってください」
「わかった」
リュウオウの体力が回復していき安堵する。
「少し休憩したら行きます」
「カイト君は休んでて、代わりに戦ってくるよ」
「気を付けて」
モレルさんは黒い蝶に触れて、拠点に飛んでいった。




