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第287話

前話の春名視点です

「暇だなぁ~……」


 開始してニ十分ほど経過したけどいまだに他クランからの攻撃は無い。

 一気に押し寄せてくるのかなと思っていたけど、ここまで暇だとは……案外他クランも様子見しているのかな。


『春名、まだ距離があるけどプレイヤーの反応。数は十人。こっちに向かって進んでいるけど、先に攻撃するか?』


 そんなこと思っていたら屋上で索敵をしている海都から黒い蝶越しに声が聞こえてくる。

 ニアとの共鳴技の黒い蝶には遠隔で通話が出来る機能がある。範囲は限られているけど、拠点内なら問題ない。


『そこから狙える?』


『狙えなくもないけど、モレルさんの一撃で叩いてから、残りを俺が処理した方が確実だ』


『了解。モレルさんお願いします』


『はいはーい、任せて。あと使える回数四回だからね』


 少し経つと上空から極太の光の柱が地面に落ちた。

 光が消えるとそこら一帯が消え失せてクレーターが出来上がっていた。


「前より威力上がってね……?」


 窓からその光景を見て苦笑いを浮かべた。

 モレルさんには事前にシロガネのスキルで召喚した【空艇蜂兵】に乗ってもらっていた。

 透明化しているし気づかれてもいない。上空からの奇襲攻撃は予想外だろうな。


『海都、倒し切れていないプレイヤーはいる?』


『二、三人耐えていたけどやっておいた』


『おお、仕事が早いね。サンキュー』


『……春名、さっきの騒ぎでプレイヤーの反応が増えた。直に拠点に来るぞ』


『わかってる。予想通りだからこっちに向かってくるプレイヤーの迎撃を任せた』


『あいよ』


 海都とのやり取りを終えて、颯音とルーシャさんに「自由に動いて」とメッセージを送った。

 ここに注目を集めれば颯音とルーシャさんは動きやすくなるだろう。

 紫色の光を帯びた矢が飛翔していくのを窓から見える。

 マップを見ると海都の攻撃を潜り抜けて、俺の索敵範囲にプレイヤーの反応が出た。


『ハルナ君、そっちに行った方がいい?』


『モレルさんは上で待機で大丈夫です』


『わかったわ。必要になったら言ってね!』


 モレルさんのとの通話を終えてヒガネと共鳴して拠点内を見通す。

 おお、拠点内が透けて見える!

 ヒガネの新しく覚えた【透視】のスキル。初めて使ったけど、すっげぇ便利だ。

 おっと、窓から三人侵入してきたか。


「そこには落とし穴があったっけ?」


 そう言ってるそばから落とし穴の罠が作動して、遅れた一人が溶岩貯まりに落ちて、体力が一瞬で溶けた。


「落とし穴が作動したけど一人しか引っ掛からなかったか。残りの二人は廊下に……廊下ってなんかあったような……」


 思い出していると罠が作動したようで片割れ面の人が床に倒れ伏した。

 あ、コガネの糸に触れたら電気が流れる罠だったな。

 最後の一人は糸に気づいて断ち切り罠を避けて、床に何かを投げると煙が立ち込め、そのまま外に飛び出した。

 逃げられちゃったかぁ……まぁいいか。罠は無事に作動したみたいだし問題ないな。


『春名さん、逃してよかったのでしょうか?』


『あれぐらい問題ないよ。そろそろ他のクランが攻めてくると思うから、雫恩も頑張れよ』


『わかっておりますわ』


 俺は球体と一体化しているクロガネとコガネにもう一度罠の設置を頼む。


「クロガネ、コガネ。罠の張り直し頼む」 


『おお、上手く行ったんだ。決まると楽しいね』


『はぁ……またやるの? あとでご褒美を頂戴ね』


「分かってるよ」


『ハルナ、人倒れているけど、捕まえとく?』


「まだ体力あるんだ……悪いけど、捕まえて連れてきてくれるか、コガネ」


『はーい』


 コガネに任せて、俺は拠点内を監視した。


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