第285話
ようやく自分たちの番が来てイベントの受付を行った。
「イベントの参加ですね。こちらにいるメンバーで参加ということでよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
「……手続きは完了致しました。では、続けて拠点の場所になります」
俺の目の前に赤いボタンが出現して、ルーレットが回りだした。
「押せばいいんですね」
受付嬢は笑顔で頷いた。
ボタンを押すとルーレットが止まり、そこには「樹海の屋敷」と書かれていた。
「皆様の拠点は樹海エリアの屋敷と決まりました。ルールの説明は転移してから行われますので、質問等もその時にお尋ねください。では、ご武運を」
俺たちは光に包まれて、気が付くと壁の塗装も剥がれ、ボロボロの家具が倒れている部屋にいた。
部屋を見渡していると、球体の機械が割れた窓ガラスから入ってくる。
「クラン『テイマーズ』の皆様! ルールの説明役を務めますセクターと申します。本日はよろしくお願いします」
丁寧にお辞儀するセクター。なんか案内役のカルタたちを思い出す。
「では、早速ルールをお伝え致します。ルールは簡単! 敵クランのフラッグを奪い拠点に持って帰るのみ!」
セクターは説明を続ける。
「敵クランのフラッグを拠点に無事に持って帰りニ十分間保持できればポイントが加算されます。逆にフラッグを奪われ、時間内に取り戻さなければ減算され、イベント終了までにポイントが多いクランが優勝となります。他の細かいルールなどはルールブックをお読みください」
青色のフラッグと一緒にルールブックが出現。中を捲ると色々と詳細が書いてあった。
フラッグは拠点から持ち出すことはできない。てことは、何処かに隠してた方がいいのかな。みんなと相談だな。
また、ポイントは奪った時の獲得ポイントは一点、奪われた時は喪失ポイントは三点だそうだ。
自分たちのフラッグを守りつつ、攻めないと高順位は取れないって感じか。
他には回復は自分の拠点もしくは、フィールドのモンスターを倒すと出る回復アイテムでしか回復は出来ない。そのため、回復スキルには使用回数制限が設けられるそうだ。
シロガネの【治癒蜂兵】を確認すると、スキルの右上の方に三回と表記されていた。
三回しか使えないのか……使いどころ考えないとな。
「春名、一番下の読んだ?」
「一番下?」
「クランリーダーが倒されたらクランは敗北だって」
「マジで? ……本当だ。そうすると、あんまり大胆に動かない方がいいな。俺以外倒された場合はどうなるんだ?」
「クランリーダー以外の方はデスペナルティで十分間リスポーンが出来ない仕様となっております」
「なるほど……」
ルーシャさんがセクターに尋ねる。
「ねぇセクター、拠点の範囲ってどこ?」
「それでしたらマップを見て頂ければわかります」
俺もマップを見ると拠点を赤い円で囲まれていた。
この円が拠点の範囲か。この範囲までに相手のフラッグを持ってくるんだな。
「んーなるほど。わかった」
「他にご質問はございますでしょうか?」
海都が手を上げる。
「拠点に罠とかは設置していいのか?」
「はい、拠点内でしたら好きなよう改造して頂いても構いません」
「だってよ、春名」
「開始までそんな時間ないけど改造するかな」
「他に質問ありますでしょうか?」
皆を見渡すと特にないと顔をしていた。
「無さそうですね。何かあればヘルプ機能を使って頂ければ直ぐに飛んで参りますので! それでは!」
セクターは割れた窓ガラスから外に飛んでいった。
颯音が楽しそうな目で聞いてくる。
「なぁなぁ! 作戦どうする! 俺戦いたい!」
「戦いたいって……戦ってもいいけどフラッグのこと忘れるなよ。あと、やばくなったら逃げろよ」
「分かってるって」
「颯音が前線出るなら、俺は拠点に残ろう」
「海都が残ってくれるなら心強い。索敵は任せるよ」
「ハルナ君、私たちはどうしよっか? ハヤト君のサポートにでも行く? って言ってもハヤト君の速さに追いつけるのはルーシャだけよね」
「本気のハヤトに追いつけないけど、一人より二人いた方が対処できる」
「ルーシャさんが居たら百人力だ!」
俺は小声でルーシャさんに伝える。
「ルーシャさん、颯音のスイッチが入ったら巻き込まれる恐れがあるから離れてください」
「ん、わかった」
俺はモレルさんと雫恩の方を見る。
「モレルさんと雫恩は拠点で防衛で」
「分かった、任せて!」
「頑張りますわ!」
俺たちは開始時間まで色々と拠点に罠を設置した。
「まもなく開始時刻になります。まもなく開始時刻になります――」
上空で開始時刻を知らせるアナウンスが響き渡る。
「それでは開始致します!」
開幕の狼煙に花火が打ち上がりタイムが表示された。
「そんじゃ優勝目指していこうか」
「「「おうー!」」」




