第279話
リンラン姉妹と別れてから少し探索し、街から離れた人気がない場所に降り立つ。
「なんか出そうな雰囲気あるな……」
「幽霊は苦手でもゾンビとかは苦手じゃなかったよな、颯音」
「ゾンビは殴れるから平気……って言ったそばからゾンビが出てきたんだけど!」
見渡すと地面からゾンビが湧いてくる。
レベルは低いし、ニアのレベル上げにはちょうどいいかも。
俺と同じ考えだったのか颯音はコクヨウ。海都はリュウテイを呼び出す。
「ハルナ君、ハヤト君、カイト君。ここは任せてもいい?」
「はい、ここは大丈夫ですよモレルさん」
「それじゃあ……ルーシャとシオンちゃんと一緒に街でショッピングに行ってきちゃうね!」
「「え?」」
明らかにルーシャさんと雫恩は「そんな話聞いてない」って顔をしている。
「ほら行くわよ!」
モレルさんに手を引っ張られて三人は転移していった。
『ハルナ?』
ニアに呼ばれ俺はしゃがんだ。
その間に颯音と海都はゾンビと対峙し始める。
『ハルナ、あそぶ?』
「おう。俺があいつを捕まえるから、ニアが【酸の泡】を使ってくれるか?」
『うん! やる!』
俺はコガネとヒガネを呼び出した。
「コガネ、ヒガネ。ニアのレベル上げをするから適当にあのモンスター捕まえてくれないか?」
『えーめんどくさい。力を貸すから自分でやりなよ……【トランスフォーム】』
コガネの体が機械化して、小石程の大きさの四角形になった。
両手で受け止めると、黒いのが広がり手を覆っていき、コガネとの共鳴技の特殊グローブに似ている姿になる。
手の甲にリールが無い代わりに、指の所には銀色の線が入っていて触るとギザギザしている
「なんかコガネとの共鳴技に似てる気がする……」
『似てるもなにも、似せて変形したんだから似ているんだよ。まぁちょっとだけ強化しているけど使い方は一緒だから、あとは頑張って』
「そうなんだ、ありがとなコガネ」
手を開いたり閉じたりしているとヒガネが聞く。
『私が手伝わなくても平気そうだけど何か手伝う?』
「視界を広げたいから共鳴をしてくれると助かる」
『わかった』
ヒガネとの共鳴をして赤い瞳が六つ追加して視界が一気に広がった。
「そんじゃ、やりますか。ニアは見ててくれよ」
『うん!』
「共鳴技、スパイダースネット! ってなんてな」
指先からかなり細い糸を放出してゾンビを数体を捕まえようとしたら、スパッとゾンビの体を切り裂いた。
「コガネさーん、切れ味が前より上がってんだけど……」
『あ、言うの忘れてた。その糸は細ければ細いほど切れ味が上がる性質があるから、捕まえるなら太くしないと』
「そういう大事なことは早く言ってくれよコガネ……了解した」
糸の太さを調整して放出。今度こそゾンビを捕縛して体力を削って足元に転がす。
十体ぐらいあればいいかな。
「ニア、こいつらに【酸の泡】だ」
ニアは口から酸の泡を吐き出してゾンビを攻撃。前もって体力を削っているおかげでゾンビは直ぐに消滅した。
よし、ニアのレベルが上がったな。この調子で続けて行こう。
『ハルナー、あきたー』
しばらく続けていたらニアが飽きたと訴える。
進化項目を見ると進化条件のレベルに達成していた。
ゾンビの湧きも落ち着いたようようだな。
ニアを抱き上げて頭を撫でる。
「お疲れニア。もう進化出来るけどするか? 進化したら飛べるぞ」
『飛べるの! 進化する!』
嬉しいそうなニアを一旦地面に置いてからニアを進化させる。
強烈な光を放つニアの姿がどんどん変わり、光が収まると黒い翅の蝶の姿に進化した。
前回と同じブラックバタフライだな。ニアの進化には派生が無いからオベロン戦の時の姿が最終だろう。
『ハルナハルナ! 見てみて!』
ニアは俺の周りを踊るように舞う。
「お、ハルナの方も進化したんだな」
颯音の方を見ると子犬だったコクヨウは中型犬ぐらいのサイズに成長していた。少しだけ毛の艶が上がった気がする。
「シャドーウルフか。ハスキーみたいな顔してて、カッコイイじゃん」
「だろ? よかったなコクヨウ!」
「ワフ!」
コクヨウは颯音に撫でられて尻尾を激しく振る。
「海都の方は……デカくなり過ぎだな」
リュウテイはグリーンドラゴンからアースドラゴンに進化した。
小さかったリュウテイは二足歩行になり見上げる程に大きくなった。額には二本の角が生え、背中には茶色と緑色が混ざった翼がある。
リュウオウと違って空を飛行出来るのかな。
観察していたらリュウテイは大きな欠伸をして体を丸め寝始めた。
「体はデカくなったけど眠たがりなの所は変わらないな」
「そこが直ってくれればな。まぁ戦う時は戦ってくれるから良いけど」
そんな会話をしているとモレルさんからメッセージが来る。
「街に集合だって。ちょうどキリがいいし、街に戻ろう」
呼び出している仲間を全て戻してから街に転移した。
こんにちは5月




