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第277話

 拠点にログインすると颯音と海都と雫恩、モレルさんとルーシャさんのクランの面々が揃っていた。

 俺が一番最後のようだな。


「遅いぞ、春名! みんな準備万端だぜ!」


「分かってる」


「ハルナ、さっきぶり」


 ルーシャさんが後ろに手を組んで声をかける。


「さっきぶりですね、ルーシャさん」


「話は聞いたよハルナ君。リアルでルーシャと会うとは……店の場所は聞いているから今度一緒に行くね!」


「あはは……忙しくない時でしたら」


 そんな会話をしていると颯音が肩に手を回して小声で聞いてくる。


「なんの話をしてるんだよ」


「バイト先でルーシャさんと偶然会ったんだよ」


「ええ! すっご! そんな偶然あるんだ! 連絡先は交換したの?」


 俺は首を横に振った。


「ゲーム内で連絡すればいいかなって思って交換はしてない。それに、リアルで連絡取り合うってことないしね」


「あー確かに」


「話はこれぐらいにして、新エリアに行きますか」


「皆さん、お気をつけて」


「んじゃ行ってくるよウィル。お土産楽しみにしててくれ」


 俺たちは樹海エリアに転移した。


「うひゃー! めっちゃ人いるー!」


 見渡す限りプレイヤーで街は溢れかえっていた。

 新エリアに行くためには他のエリアにある転移門を潜らないといけない条件のせいで密度がエグイ。

 沼地エリアに転移すればよかった。まぁ今更か。


「それじゃ逸れないように移動しまーす」


「引率の教師みたいだな春名。そう思うだろう雫恩」


「ええ、そうですわね」


「うっさいぞーそこ」


 そんな会話をしながら少し歩き転移門から続いてなっがい列に並んだ。


「春名、アプデ内容確認してる?」


「勿論だ」


 颯音の質問に肯定した。

 今回のアップデートは新エリア「常夜」の追加。日が昇らなず、常に夜なのが特徴。

 出現するモンスターは悪魔系、幽霊系、アンデッド系等々。いわゆるホラー系のモンスターが中心だ。

 物理攻撃が効かないのがほとんどなのが厄介だけど、うちのクランは大丈夫だろう。

 他の内容は常夜が追加されたことで、他のエリアにも夜が追加されるようになった

 実装日は月曜の夜からで、基本的にリアル時間参照にするみたい。ただ、土日祝日限定で昼夜逆転する仕様。てことは金曜の夜は長く、日曜は日中が長くなるってことだな。

 あとは各エリアに新種族のNPCとエリアの何処かに第二の街の追加。新種族は第二の街を発見されることによって最初の街と行き来するようになり、貿易も可能。そこでしか手に入らない限定アイテムもあるそうだ。

 これでウィルが住んでいた街を見つけることが出来ればいいんだけどな。


「春名春名! 明日のイベント楽しみだな!」


「そうだな。ルーシャさんとモレルさんも明日のイベントに参加しますよね?」


「勿論、明日は参加するよ! 初のクラン対抗戦だもん! 参加しないとね!」


「うん」


 明日の日曜昼のニ時から深夜零時までクラン対抗のイベントが開催される。詳細内容はまだ発表されていないけど、イベント名はクラン対抗攻城戦だ。

 攻城戦というと、拠点の奪い合いがイメージあるけどそのまんまなのかな。まぁ明日にはわかることだし、今は新エリアを楽しもう。


「次の方~」


 列を整備している警備の人に呼ばれ転移門の前に行くとヴェルガの姿が見えた。俺のことは気付いていないようだな。仕事忙しそうだし、戻った時にでも声を掛けよう。


「あの、すいません。ヴェルガにこれを」


 警備の人にルーシャさんの店で買った洋菓子が入った箱を渡す。


「失礼ですが、どちら様でしょうか?」


「友人の春名と言います。それじゃお願いします」


 転移門に触れ新エリアの常夜を選択してから門を潜った。


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