第276話
「ルーシャさんだったのか……びっくりした……。てっきり新手の勧誘してくる人かと思いましたよ」
「そ、そうなの……? びっくりさせようと思っていただけなんだけど、ごめんなさい……」
頭を下げるルーシャさんの隣に腰かけた。
「気にしてないんで謝らないでくださいルーシャさん。疑ってはいないんですけど、一応自キャラの画像とか見せて貰ってもいいですか?」
「うん、いいよ」
ルーシャさんは公式サイトからゲーム内の自キャラのプロフィール写真を見せてくれた。
うん、間違いなくルーシャさんだな。
「見せてくれてありがとうございます。本当にルーシャさんなんだ……俺だってよくわかりましたね。聞いてもいいですか?」
「うん。君がハルナだってわかったのはお店での恰好と雰囲気。前にお店を手伝った時に似てたから」
「そんなに似てました?」
ルーシャさんは激しく同意する。
「それだけで、俺って確信したんですか?」
「それだけじゃない。他の店員さんに呼ばれた時に「ハルナ」って聞こえたの。それで半々だった」
「半々……?」
「あとは、反対側のホームから電車を待っている姿が見えたから当たって砕けろ精神で聞いた」
ドヤ顔で言うルーシャさんに若干呆れてしまった。
「俺でよかったものの、人違いだったらどうするんですか。大事に発展しちゃいますよ? 二度とこんなことはしないで下さい!」
「う、うん……気を付ける……」
「分かってくれたならよし」
「ハルナ、お母さんみたい」
ふふと笑みを零すルーシャさん。
――まもなく三番線に電車が参ります……
「電車来ちゃった。この後ログインするんだよね?」
「はい、颯音たちと新エリアを巡ろうかなって。ルーシャさんとモレルさんも時間合えば誘う予定でしたけど、行きませんか? メンテ明け一時間後ぐらいで」
「うん、こっちもハルナたち誘おうと思っていた。モレルに伝えておく」
「颯音たちには俺から連絡しておきます」
「うん。じゃあまたね」
「はい」
電車に乗り、車窓からルーシャさんを見ると手を振ってくれていて、俺は軽く手を振って返した。
三十分ぐらい電車に揺られ地元の駅に到着。真っ直ぐに帰宅すると兄ちゃんが出迎えてくれた。
「お帰り、バイト楽しかったか?」
「うん、楽しかったし、色々経験出来た。それと、バイトを続けることにしたよ。週二だけど」
「そうか。一応言っておくけど、テスト期間中とかはバイト禁止だからな」
「蒼さんにも言われてるから大丈夫だよ」
「それなら安心だな。夕飯出来てるから早く来い」
「はーい」
部屋着に替えてからリビングに向かい兄ちゃんとバイトの話をした。
「そう言えば、蒼さんから聞いたんだけど兄ちゃんがゲームが上手いって聞いたよ」
「あいつ、そんなこと言ったのか……」
兄ちゃんは溜息を吐いた。
「今はしてないから下手になってるさ」
「えー、兄ちゃんなら少しやれば昔の感覚を直ぐに思い出せるっしょ。だから、さ……一緒にゲームしない? 兄ちゃんと一緒にゲームしたい!」
「……」
兄ちゃんは目を見開いた後軽く息を吐いた。
「一緒に遊ぶって言ってもお前がやっているゲームのヘッドギア?って言うんだけな、一つしかないじゃないか」
「違うやつでもいいから兄ちゃんとゲームしたいんだ」
「……うん、まぁ考えとくよ」
「約束だからね! ……ごちそうさま! 兄ちゃん、今日遅くまでやるかもだから、朝食いらない」
「はいはい」
食器を下げて部屋に戻り、ベットの上に横になりヘッドギアを付けてログインした。




