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第275話

 バイトは順調に進み、あと三十分ぐらいで終わりの時間だ。

 忙しかったからか時間が経つのが早かった気がする。色々と貴重な経験が出来たし楽しかった。またここでバイトしたいな。


「すいません、会計をお願いします」


 レジに向かい並んでいるお客の会計をしていく。


「丁度お預かりいたします」


 お客さんが俺の顔をじっと見ているの気が付き尋ねる。


「どうかされましたか?」


「なんか、知り合いに似てて。気のせいだと思う。また来ます」


「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」


 お客さんの後ろ姿を見送っていると蒼さんが話しかけてくる。


「春名君、手が空いているならちょっと来てもらえる?」


「はーい」


 レジから離れ蒼さんの後を追って応接室に入る。


「適当に座って。コーヒーかココアどっちがいい?」


「それじゃココアで」


 温かいココアが注がれたマグカップを渡され一口飲む。


「うまっ! 市販のココアじゃないですよね?」


「専門店で購入したものだよ。美味しいでしょ?」


「めっちゃ美味いです」


 もう一口飲んでマグカップをテーブルに置いた。


「まだ時間じゃないけど先に給金を渡すね」


 蒼さんに茶色の封筒を渡され受け取った。


「ありがとうございます」


「春名君が来なかったらフロアを回すのが大変だった。本当に来てくれてありがとう、助かったよ」


「いえいえ、俺もバイトが出来て良かったです」


「それで、何だけど……春名君さえよければまたバイトしない?」


 蒼さんから予想外な提案されて一瞬止まる。


「春名君の仕事ぶりを見ててさ、一緒に働きたいなぁと思ってね。どうかな?」


「帰る時にバイト募集しているか聞きたかったから、蒼さんから誘ってもらえるなんて思ってもいませんでした」


「お、て言うことはバイトを続けてくれる?」


「はい、続けたいです。あ、返事は兄ちゃんの許可を取ってからでもいいですか? 多分大丈夫だと思うけど一応聞いてみます」


「ああ、そのことなら冬真に確認してあるから安心して」


「仕事はやっ……えっと、それじゃ改めてよろしくお願いします蒼さん」


「うん、よろしく春名君!」


 蒼さんと握手を交わした。

 それから蒼さんとシフトのことを相談して、来週から週二で働くことになった。夏休み期間中は午前出勤可能で、学校がある日は放課後、土日祝日は午前も可能という契約だ。


「あ、そうだ。言うの忘れてた。テスト期間は勉学に集中してもらいたいから絶対に休んでもらうよ。てか、そうしないと俺が冬真に殺される!」


「シフトを入れてるのバレたら俺も兄ちゃんに怒られちゃうから休みます」


「うんうん。俺からの話は以上かな。丁度、時間だね。遅番の人たちに挨拶して、今日は終了だね」


「わかりました」


 応接室から出た俺は遅番の人たちに挨拶してから退勤した。

 更衣室で着替えていると黒崎さんが入ってくる。


「春名君、お疲れ様~蒼さんから聞いたよ! バイトを続けるって!」


「あ、はい。今後ともよろしくお願いいたします黒崎さん」


「おう!」


 裏口から出て黒崎さんと一緒に駅に向かった。


「え、無い! 定期が無い!」


 黒崎さんは鞄の中を漁りだす。


「ありました?」


「どこかで落としたかも……お店にあればいいんだけど……」


「一緒に探しましょうか?」


「大丈夫。春名君は先に帰ってて。じゃあまたね!」


 黒崎さんは来た道を戻っていく。

 改札を通って電車が来るのをベンチに座って待つことにした。

 そう言えばアップデート内容公開されていたな。


「お店の店員さん?」


 聞いたことがある声にスマホから視線を上げると、さっき俺のことをじっと見ていた女性が目の前にいた。

 そのまま空いている隣に座る。


「バイトの帰り?」


「あーはい……帰りですけど……」


 女性は口を閉ざして目を瞑る。

 少し怖くなって立ち去ろうとしたら女性が口を開く。


「ねぇ、このゲームやってる?」


 女性はスマホの画面を見せてくる。

 そこには俺がやっているレゾナンスオンラインの公式サイトが映っていた。


「答える義理は無いんですけど」


「お願い。これだけ答えて、欲しい……」


 必死な表情に俺は溜息をついてから頷いた。


「やっぱり……コガネっていう名前の蜘蛛モンスター、テイムしている、よね?」


 知り合いにしか話したことがないことを言われて目を見開く。


「なんで、そのことを……知って……」


「だって……私とハルナは知り合いだから」


「ええ???」


 困惑していると女性は鞄からケモ耳のカチューシャを取り出して付けた。

 髪色は黒だけど俺が知っている人にそっくりで口をパクパクする。


「もしかして、ルーシャさん?」


「大正解」


 ルーシャさんはいたずらが成功した子供のような楽しそうな表情を浮かべた。


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