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第274話

「お待たせいたしました。季節限定パフェになります」


 二人組の女性の前にパフェを並べていく。


「きゃあ可愛い! めっちゃ映える~!」


「来てよかったね!」


「ごゆっくりお召し上がりください」


 盛り上がっているお客さんに一礼してから厨房に戻っていく。


「春名君、レジ行ってくれる?」


「わかりました」


 黒崎さんに指示されレジに向かう。

 並んでいるお客さんの会計を済まして一息ついてホールを見渡した。

 土曜日だから人が多いの分かっていたけど予想以上に忙しい。オープン初日のお店って行ったことないからこんなもんなのかな。

 レジから離れて、厨房に向かい、出来上がった料理を運んでいく。


「空いたお皿はお下げしますね」


「お願いします」


 途中で他のテーブルの空いた皿を回収して厨房に戻る。

 すると、足元で小さく「あっ」と子供の声が聞こえたのと同時にズボンが濡れた感じがした。

 足元を見ると俺にぶつかったせいでアイスを落として泣きそうになる男の子だった。


「たくちゃん! 座って食べなさいって言ったよね!」 


「ごめんなさい……」


「どうしましょう……服が濡れて……それにシミが……! クリーニング代を……!」


 直ぐに男の子の母親が来て少しパニックになっている。


「お客様少し落ち着いてください。これぐらい洗えば落ちる汚れですのでクリーニング代とか大丈夫です」


 お盆を客の居ないテーブルに置いてしゃがみ、男の子と目線の高さを合わせ頭を撫でる。


「アイスダメにしちゃってごめんね。新しいの持ってくるから座って待てるかな?」


「うん……!」


 少し笑顔になった男の子は自分のテーブルに戻って座った。

 俺は急いで厨房に戻り、蒼さんを話しかける。


「蒼さん、実は」


「見てたから知っているよ。バックに余っているズボンあるから着替えて。その間に作っておくよ」


「わかりました。すいません、勝手に判断しちゃって」


「いいよこれぐらい。春名君が戸惑っていたら助けに入ろうかなって思っていたけどさ、ナイス判断だよ」


「あ、ありがとうございます。えっと、着替えてきます」


 急いでスタッフルームに行き、ロッカーの上に置いてある段ボールの中からズボンを探して着替えて戻った。


「戻りました」


「おかえり、丁度出来上がったよ」


 蒼さんが作ったのはライオンの形をしたアイスだった。


「これ、すげぇ凝ってる……そんなに時間なかったのにこんな短い間で作ったんですか?」


「これでもパティシエだからね。蓋閉じて持っていくといいよ」


「そうします」


 お盆に乗せて、料理が見えないように蓋をして男の子が待っているテーブルに向かう。


「あ、きた! きたよお母さん!」


「たくちゃん、落ち着きなさい。お兄さんと約束したでしょ?」


「うん!」


 男の子は背筋をピンと伸ばして目を輝けせ行儀よく座る。


「お待たせいたしました」


 男の子の前に並べて蓋を開ける。


「うわあああ! お母さん! みてみて! ライオン!」


「まぁ!」


 男の子は満面の笑みを零す。


「これたべていいの!」


「おう」


「やった! いただきます!」


 男の子は美味しそうに頬張る。


「あの~色々とありがとうございます」


 母親は立ち上がって頭を下げた。


「いえいえ。お気になさらず。それでは」


「ありがとう、お兄ちゃん!」


 立ち去る時に男の子にお礼を言われ、手を振って返した。

 そのあとはホールとレジを行き来して仕事をこなしていく。


「春名君、秀一君、若菜さん、休憩の時間だから入って」


 蒼さんに言われて三人は休憩に入った。ちなみに、若菜さんていうのは看板を出しに行った女性の人だ。ちなみに、苗字は双葉。

 俺はテーブルに突っ伏す。


「疲れた……」


「お疲れ、春名君。お昼はどうする? なんか買ってくる? 蒼さんに作ってもらう?」


「お弁当あるから大丈夫です」


「そうなんだ。んじゃ、俺っちはコンビニに行くっすかね。双葉っちは?」


「変なあだ名で呼ばないでください。私も弁当があるから黒崎さん一人で行ってください」


「えぇ……行ってきます……」


「い、行ってらっしゃい」


 カバンから朝作った弁当を取り出す。


「あ、先にレンジ使ってください」


「ん」


 双葉さんにレンジを先に譲り、その間颯音からメッセージを返信していく。


「さっきの男の子。喜んでいたね」


 双葉さんから話しかけれ少し思考が止まる。


「え、あ、そうですね……」


「終わったよ」


 双葉さんは温めた弁当を持って席に戻った。

 俺も弁当を温めに行くと颯音から電話が来るけど通話を切る。


「電話、出なくてよかったの?」


「友達からなので大丈夫です」


「そう」


 双葉さんはそれだけ言って黙々と弁当を食べていく。


「ただいま~。春名君、これみてみて! 限定のドリンクなんだけど、味やばくない?」


 戻ってきた黒崎さんは袋から緑色の飲み物を見せてくる。ラベルにはキュウリ味のサイダーと書かれていた。

 苦笑いしながら答えた。


「それ、絶対ハズレですよね?」


「こういうの試したくなるんだよね! いただきます! …………まっず……飲んでみる?」


「丁重にお断りさせて頂きます」


「丁寧な言い回しで断られた!? 一緒に不味い思いして欲しかったのに……!」


 黒崎さんと適当に話し、たまに黒崎さんが双葉さんに話を振って辛辣な対応されたりと休憩時間を過ごした。

 よし、残りの時間も頑張ろっと。



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