第271話
インセクトキメラが倒された所に金ピカの宝箱が出現したことに気が付いて、宝箱の周りに集まる。
目を輝かせている颯音が言う。
「なぁなぁ! 何が入っていると思う!」
「無難に金と関連系武器防具じゃね? もしくは、リュウオウパターンでインセクトキメラの卵が入っていたりして」
「「「……」」」
三人は嫌な顔をした。
「それ出たら春名に譲る」
「右に同じく」
「私も遠慮いたしますわ。昆虫とかでしたら蝶がいいですわ」
「んじゃ開けますか」
俺は宝箱に手を置きゆっくりと開けた。
金ピカの宝箱の中身は予想通りのお金に黒くて裾部分が破けているようなデザインのマントが入っていた。
マントには四つのスキルが付与されていた。
相手の体力を吸い自分の体力を回復する【ブラッディニードル】、マントを硬化させて物理攻撃を防ぐ【硬化】、一定時間俊敏力を上げる【軽業】、魔力を吸い込み自分の魔力を回復をする【マジックチャージ】だ。
「チート級の装備が出てきたな。これ居る人は挙手」
「欲しいけど、動きが制限されちゃうから俺はパス」
「魔力回復効果あるなら雫恩が適任じゃないかな」
「あーそうだな。それがいいかも。防御力上がるし、魔法攻撃が効かなくなるで相性いいかも」
「というわけだ」
「皆さんがそういうのなら着させて頂きますわ」
雫恩はマントを着け、ぐるっと回り、恥ずかしいそうに言う。
「に、似合いますか?」
「雫恩に似合わない服なんてない」
堂々と言う海都を俺と颯音は目を見開いた。
「ありがとうございます、海都さん」
「おう」
微笑んでいる雫恩を見ていると、颯音が小声で言う。
「春名、俺も彼女欲しい」
「勉強が出来て、足が早ければ出来るんじゃない?」
「それは小学生!」
抗議する颯音を放置して、まだ残っている宝箱に気が付く。
……宝箱の中身を取ると消える筈なんだなけど、まだ残っているか?
「なんだこれ?」
中には銀色の六角形のメダルみたいのが四つまだ残っていた。
メダルにはそれぞれマークが付いていた。
『おお、無事に倒せたようですな』
落とし穴に落ちて別れたはずのジェントルスパイダーの声が聞こえ見上げると、本人が目の前に落ちてきた。
三人は武器を構えたけど、俺が制止して武器を降ろしてくれた。
「俺のことを騙したのか?」
『結果的にそうなりますな。ですが、無事にインセクトキメラを倒せたことですしよかったじゃないですか。それに、その指輪を託された貴方にとって必要な物ですぞ』
「これって、もしかして……」
『貴方が想像している通りで合っておりますぞ』
メダルには歪んでいるけど、蟻と蠅、ゴキと蚊のマークがある。
ジェントルスパイダーが言っていることが正しいならこれは、オベロンを孵化されるために必要な物だ。ここで手に入るのは予想外だけど。
「一つ疑問なんだけど、なんでそこまでしてくれるんだ? オベロンに頼まれたとか?」
『違いますぞ。 ただ……私はただあの日の王と女王を見たいだけですぞ』
ジェントルスパイダーは遠い記憶を思い出しながら語った。
『さ、私の古い話は終わりして、幹に繋がる道を案内いたしますぞ』
「一応確認するけど、もう落とし穴は無いよな?」
『信じるか信じないかは貴方次第』
「なんだそれ。まぁ信じるよ」
『ふふ、面白い御方だ』
ジェントルスパイダーはいつの間にか出現した出口に向かって歩いて行く。
後ろ姿をいていると颯音が話しかける。
「あいつに付いて行って大丈夫なの?」
「今度こそ、大丈夫だろ」
「春名がそういうのなら文句はないけど」
「なんかあれば倒せば良いだけだぞ、颯音」
「海都が脳筋的な事を言ってる」
「ほら、行くぞ」
ジェントルスパイダーの後を追って、十分ほど歩くと途中退出用の魔法陣が見えた。
「時間も時間だしこれで終わりにしようか」
「賛成~流石に疲れた!」
海都と雫恩、颯音の三人が魔法陣に乗り、ダンジョンの外に転移していく。
『いつお戻りになりますかね』
「うーん、わかんないかな。なるべく早めには来るよ。じゃあまたな」
『お待ちしております』
俺も魔法陣に乗り、ダンジョンの外に転移した。
外に出て俺は背伸びをした。
……なんか久しぶりな気がする。
颯音が予定を尋ねてくる。
「今日は夜にログインできないし、ここの続きいつにする? 新エリアの後?」
「なるべく早めに行きたいけど、みんなに合わせるよ」
「俺と雫恩はちょっと明日はこれそうにないかも、行けたら連絡する」
「おう。そんじゃ拠点に帰るか」
拠点に転移してからログアウト。ヘッドギアを外して直ぐに眠りに就いた。




