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第270話

269話の最後を少しだけ改稿してからの続きになっているので、そちらも読んで頂ければ幸いです。

「春名さん、その姿……!」


 アームがそれぞれ変形した姿に驚き雫恩が尋ねてきて簡潔に答える。


「俺とコガネの共鳴技だよ」


 アームの先が十文字の穂先、俺を覆う程の大盾、連射可能のクロスボウ、細かい刃が付いた回転刃、黒くて刃先がギザギザした大剣。アームの先端が機械の開閉口に変形。

 俺が武器を出せない代わりにアームが武器に変形するのがコガネとの共鳴技だ。変形した六本のアームには共通して窪みがある。ここにコガネ以外を嵌めれば、その属性の姿に変わりスキルも使えれるようになるのだ。

 入れ替えは必要だけど、同時に六属性で攻撃出来るのがシンプルに強い。


 見上げると【ラウンドフォース】に罅が入っているのに気が付く。


「雫恩、そろそろ割れる。まだ休息いるならシールド張るけど」


「もう平気。いつでも行けますわ」


「了解。俺の後ろから離れるなよ」


 ミシミシと聞こえた瞬間、【ラウンドフォース】は砕けて一斉に襲い掛かってくる。

 俺は大盾にヘイムンダを嵌めて光を放つ大盾を構え押し寄せてくる黒いモノを受け流し、アカガネを嵌めて開閉口から溶岩を噴かせ飲み込む。

 大剣にフィーアを嵌め、風を纏めった大剣で溶岩ごと切り裂く。

 ようやく、大量の黒いモノたちが消えると初めて見る姿の颯音と海都がインセクトキメラと対峙していた。

 颯音の髪は白銀に染まり、瞳は金色。よく見ると狼の耳や尻尾、牙も生えていた。そして、両腕の刺青が全身に広がっている。

 海都は髪が濃い青色に染まり、黄色のメッシュが入り額には角?みたいなのが生えていた。服の隙間から鱗が生えているのが見えた。

 ……あの二人の本当の姿か。インセクトキメラの体力が半分まで減っている。凄まじいな。

 俺の姿を確認した颯音が一瞬で隣に来た。


「カッコイイ姿じゃん颯音」


「へへっ! まぁね! 俺のジョブ【拳狼士】のスキルだよ。詳しい内容は春名でも言わないけどね」


「あっそ」


「春名も……蜘蛛男? 違う気がする……なんだっけなあ……昔アニメで見た……あ、八刀流のタコの剣士だ」


 俺の全身をみて颯音が何か思い出したようだ。


「あー秘宝を求めて大海原を冒険する奴か。結構序盤の方じゃね? そのキャラ。せめて、三刀流使いが強くなって覚えた九刀流の方言って欲しかったわ」


「え、そうなの? まだそこ読んでないんだけど! ネタバレ食らった……」


「お二人方! 呑気にどうでもいい話してないで海都さん援護を!」


「「あ、はい」」


 そんな会話を聞いていた雫恩に注意を受けた。


「雫恩、俺も前に出るから自分のことは自分で何とかしてくれ」


「わかっていますわ」


 俺は駆け出してインセクトキメラのヘイトを向けるために【挑発】を使って海都のヘイトを奪った。

 インセクトキメラは前脚を振り下ろそうと攻撃してくるけど、タイミング合わせて大盾で弾き、ウシャスラを嵌めたことで大鎌になった槍のアームで、関節を狙い右前脚切り飛ばす。


「キシャアアアア!?!?」


 悲鳴を上げながら後退したインセクトキメラは身体中の瞳から赤黒い光線を放った。

 アカガネからクモガネに嵌め変えて、開閉口から氷の鱗粉をばら撒く。すると、光線は乱反射して、インセクトキメラに跳ね返った。

 少し動きが止まっている隙に海都は右側、雫恩は左側の瞳を潰してくれた。

 これで厄介だった光線が潰れたのは有り難い。


「キシャアアアア!!!」


 インセクトキメラは咆哮を上げると、潰れた瞳から赤い棘が伸びてきた。

 避け切れず攻撃が掠めるとインセクトキメラの体力が少し回復したのを見逃さなかった。


「棘に当たると回復するから絶対当たるな!!」


 俺は大声で三人に伝えた。

 海都と雫恩は背中合わせにして対応し、颯音は真っ向から硬い筈の棘をへし折っている。

 ……硬えって嘆いていたのに今じゃ楽しそうな表情してんな。

 向かってくる棘を大盾で受け流し、体を捻り、ハガネを嵌めて大太刀になった大剣のアームで脚の関節を狙い断ち切る。そのまま勢いを維持して、ウシャスラを嵌めて大鎌になった槍のアームで右側の最後の脚を切り払った。


「春名! 合わせて!」


「おう!」


 ガラ空きになった右横っ腹に、クロガネを嵌めて硬化した回転刃で一撃を入れ。


「【共鳴技・獣牙狼破】」


 反対側から颯音が両手に込めた一撃をいれ、インセクトキメラの体力を大きく削った。


「海都……!! トドメだ……!」


「【共鳴技・ヴォルテックスディザスター】!」


 上空に紫、青、白色の球体が出現。海都が放った一矢がインセクトキメラに刺さると、上空の出現した三色の球体から稲妻が走った。

 インセクトキメラは丸焦げになるが僅かに体力が残ってしまっ

 た。

 限界を迎えた俺と颯音と海都の共鳴が解ける。


「雫恩……最後よろしく……」


 海都がそう言い残して地面に倒れた。


「最後私でいいの?!」


 俺と颯音はサムズアップして答えると、雫恩は大きく溜息をついた。


「わかりましたわ……」


 雫恩が杖を振るうとインセクトキメラの足元に魔法陣が生成され、四色の槍が穿ち、残りの体力を削り切り、ようやくインセクトキメラを討伐した。



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