第269話
「見た目エグイモンスターが出現したんだけど! ゴールへの近道じゃなかったの?」
「うーん……あ、そう言えば。落ちる寸前にジェントルスパイダーがなんか言い忘れていたことがあったって言ってた気がする……最後まで聞いてなかったから内容はわからないけど多分これのことなんだと思う」
「伝えるの遅くね?」
「話は後だ、二人とも。今までの敵とは違うから油断するな」
「わかってるよ!」
颯音が構えると両腕にある刺青が光だす。
海都もの顎を模した弓を構えると左肩から竜の翼みたいなのが生成された。
……二人共本気のモードだ。
俺の目の前にコガネが一体化した球体が近づく。
『ハルナハルナ! ここは僕の番だね!』
サポートに回っていたコガネだったけど、前線で戦えるレベルまで上がってやりたいんだろう。
「構わないけどさ、進化したコガネとの共鳴が初だからさ。上手く合わせれるか不安」
『僕が合わせるからそんな心配いらないさ!』
「いつも以上に頼もしいじゃんコガネ。んじゃ、行こうぜコガネ」
コガネは俺の背中に回りマントと一体化すると、機械で出来たアームが六本、昆虫の足のように生成された。
「おお~なんかすげぇ!」
アーム一本一本が俺が動かしたい通りに動いてくれる……なんか楽しい。
「春名! 遊んでないで行くぞ!」
「お、おう!」
颯音に注意されて気を引き締めた。
空中を蹴って颯音は勢いをつけ、一瞬でインセクトキメラの懐に入り一発入れた。
「痛っっったああああ!」
颯音は右手を抑えて声をあげた。
インセクトキメラを殴った颯音がダメージを受けている。
うずくまっている颯音に攻撃しようと足を上げているのに気づいた俺は一本のアームから糸を伸ばして、颯音を引っ張り上げる。
その隙に海都と雫恩の弾幕でインセクトキメラの動きが止まる。
「助かったよ春名……あいつ、めちゃくちゃ硬い」
「甲殻の打撃耐性が高いんだろうな。関節を狙た方がいい」
そう言いながら【治癒蜂兵】を召喚して颯音の体力を回復させる。
二人の攻撃が止み、土煙が晴れると、インセクトキメラが居た場所に土壁が出現していて、そこにはインセクトキメラの姿はなかった。
「海都! 雫恩! 上だ!」
姿を探していると天井が不自然に盛り上がっているのに気が付き叫んだ。
すると、天井から鋭い牙を剥き出し海都と雫恩を襲う。
二人に付けていた糸を引っ張り攻撃を躱した。
……颯音を助けた時にこっそりつけていてよかったぜ。
目標を失ったインセクトキメラは俺に狙いを定め突撃してくるが、【ラウンドフォース】を使い受け止める。
その間に三人は体制を整え応戦する。俺も三人のサポートに回り、徐々にインセクトキメラの体力を減らしていく。
「キシャアアアアアアアア!!」
インセクトキメラの体力が三割切ると急に叫び出すと、体中にギロっと目が開いて赤黒い光線が放たれた。
颯音は縦横無尽に駆け回り避け、海都も光線の軌道を読んで躱していく。
俺は【ラウンドフォース】を展開して、雫恩もエリア内に入って光線から身を守る。
光線が止むとインセクトキメラは地団駄し始めると、地面から小さくて黒いモノが大量に湧き出た。
大量の黒いモノが俺が展開した【ラウンドフォース】に張り付いて周りが見えなくなってしまった。
「うげ……流石にこの量はエグイって……」
「こ、こんなもの……! こ、怖くないんですからね……!」
そう言いつつも雫恩の体は震えていた。
「こん中に居ればとりあえず平気だから少し休め」
「……そうしますわ」
雫恩は座り込み目を閉じて深呼吸をする。
その間に颯音と海都に無事だとメッセージを飛ばした。
『ねぇハルナ。僕の使い方にはもう慣れたよね』
コガネが質問してくる。
「ああ。大分慣れたから、いつでもいいぞコガネ」
『ちゃんと使いこなしてよね』
「心配すんな、任せておけ」
俺は力強く呟く。
「【共鳴技・オーバークロス】」
六本全てのアームが光り出して変形する。




