第253話
「シロガネ、行くぞ」
『ハルナこそ覚悟はできてる?』
俺が頷くと、シロガネは盾に吸い込まれると光りだし、俺を包み込んだ。
共鳴していたクモガネとアカガネ、アオガネとヒガネ、それとハガネが強制解除され弾かれる。
光は頭と背中に集まりだして、頭には純白の王冠、背中には煌びやかなマントが装備され、盾は何故か杖に変形する。
なんか西洋の王様みたいな見た目になったな。
『『『『なんかダサい……』』』』
共鳴しているコガネたちにダサいと言われた。
『うん、似合わない』
「うぐ……シロガネも言わないでくれよ……涙出そう……」
『冗談だって。ほら、来るよ』
マザーアントの方を見ると、凄い速さで地団駄を踏みだす。
『潰れなさーい!』
地面が盛り上がり、全方位から土壁が迫ってくる。
「【騎士蜂兵】たちよ! 迫りくる敵を薙ぎ払え!」
杖を掲げ唱え、周囲に四体の剣と盾を持った蜂兵を召喚し、剣を大きく振りかぶって土壁を薙ぎ払って消えた。
「【黒魔蜂兵】たちよ。一斉に放て!」
今度は杖を持った蜂モンスターを十体召喚し、マザーアントに向けて炎の魔法を放った。
『おいで~玩具ちゃんたち』
また蟻モンスターを呼び出して盾にするマザーアント。
『ほ~ら、行きなさい玩具ちゃんたち』
地面から現れた蟻モンスターが突撃してくる。その中に巨大な個体が混じっている。
……巨大には、巨大を!
「現れよ、【巨砲蜂兵】たち」
上空に巨大な機械姿の蜂モンスターを二体召喚。
腹部が開くと、少し溜めてから高圧レーザーが放たれ、蟻モンスターの大半を一掃した。放ち終えると二体の巨蜂兵と、魔法を放った蜂兵が消える。
シロガネの蜂兵は召喚時間が短くなる代わりに、大幅に強化された。ここまで強化されていたのは予想外だけど。
『主、お見事です!』
「お前たちも良くやった。共鳴状態でいてくれ」
『了解!』
遠くで戦っていたアインたちが戻ってきて、共鳴状態でいるよう指示を出す。
視線を戻すと、マザーアントの瞳は真っ赤に染まっていた。
『私の自慢の玩具ちゃんたちをよくも!』
俺は杖を掲げ叫ぶ。
「【共鳴技・女帝の威光】!」
俺の声が響き渡ると樹海全体がざわざわと揺らぎ、木々の間から大量の蜂モンスターが集まってくる。
『みんな! 私に力を貸して』
シロガネは念話で集まってくれている蜂モンスターの大群に語りかけると、大群は翅を羽ばたかせる。
まるで大合唱しているようだな。
『ハルナ、お願い』
「おう!」
杖で地面を突くと、杖の先端から光が広がっていく。
光を浴びた蜂モンスターたちは光り輝くと姿が変わり始める。
【共鳴技・女帝の威光】には、エリア内いる蜂モンスターを呼び寄せる効果と一時的に進化させ、強化する効果の二つがある。ただし、後者の方は同意してもらわないと適用しないけど。
光が収まると、蜂モンスターの大群は進化を遂げた。
『全軍突撃!』
シロガネの合図で蜂モンスターたちは突撃していく。
『舐めるなぁぁぁあ!!!』
マザーアントは一掃したはずの蟻モンスターを呼び出した。
よく見ると、蟻モンスターは土で作られている。マザーアントのスキルみたいだな。
蜂モンスターの大群と土で作られて蟻モンスターの大群が激しくぶつかる。
一段と強くなった味方のモンスターたちは敵をどんどん蹴散らしていく。
『矮小な分際如きに私の富を! 地位を! 奪われてたまるものかああ!』
マザーアントの瞳がギランと光った。、
『ハルナ! 上を見て!』
慌てた様子のヒガネが共鳴をする。
空を見上げると、巨大な塊が落下してくるのが見えた。
あんなのが落下したらここら辺一帯が無くなってしまう!
「クロガネ、あれを砕くぞ」
『あんなの楽勝よ』
『あ! クロガネだけずるい!』
クロガネが共鳴をするとコガネもして、他のみんなもその流れで共鳴をした。
「ごちゃごちゃしてんな……まぁいいか」
白と赤の翅を展開して舞い上がり、物凄い速さで接近した。
「【共鳴技・ブレイカードリル】!!」
高速で巨大なドリルが回りだし、落下してくる隕石にぶつける。
「硬すぎ……! クロガネ! どうにかなんねぇか!」
『もう少しやる気だして、ハルナ』
「やる気の、問題じゃねーよ!」
『ハルナ! クロガネ! 脆い箇所を探すからもう少し粘って!』
「ヒガネ、急いでくれ! クモガネ、アカガネ! 最大出力を出してくれ!」
『言われなくてもやってる!』
八枚の翅をフル稼働させているが徐々に押され始めている。
しばらく持ち堪えているとヒガネが言う。
『脆い箇所を見つけたけど、百か所を同時に壊さないとダメみたい!』
「百か所?! アカガネとクロガネの共鳴技を! ビートル隊、少しでも落下を遅らせるために押すのを手伝ってくれ!」
ビートル隊は共鳴を解いて一緒に押してくれ、その間にクロガネとアカガネは上空に舞い上がり、魔法陣が無数に展開して、ドリルの雨が降り注ぐ。
ヒガネが見つけてくれた脆い箇所を的確に狙い、巨大な塊に罅が入り始め、徐々に広がっていき、全体に広がると粉々に砕け散ち、破片は地上に降り注いだ。
……あれぐらいなら大丈夫だろう。
クロガネとアカガネを回収して、マザーアントの前に降り立つ。




