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第252話

『私を倒す? 矮小な分際が私を倒す? 私を笑い殺す気? アハハハ!』


 マザーアントの甲高い笑い声が頭に響く。

 怒りが籠った声でシロガネが言う。


『あいつ、ぶっ飛ばす……』


 ここまでキレた姿のシロガネは見たことない。


「シロガネ、気持ちはわかるけど少し落ち着け。あれでもオベロンの眷族だ」


『そんなの分かってる! 分かってるの……! それでも怒りが収まらないの!』


 俺はシロガネの背中に手を添える。


『……ハルナ、時間を稼いで』


「おう! 任せてくれ! アオガネ! 【共鳴】だ!」


 大声で言うとアオガネは共鳴して特殊なブーツになる。

 シロガネは舞い上がり、蜂兵を召喚して、四方八方に飛んでいく。


『あら? あらあら? 何をする気かしら? 小細工なんて通じないわーよ?』


 トンとマザーアントは足で地面を叩くと、足元の地面が大きく裂け、鋭い牙みたいなのが生えた口になり飲み込んでくる。


「アカガネ、【溶岩壁】!」


『任せて!』


 赤い翅四枚が高速で回りだし溶岩の壁が作りだされ、鋭い牙を溶かしていく。

 白い翅が二枚動き、マザーアントに氷の刃を飛ばす。クモガネのスキルの【終凍の刃】か。


「ナイスタイミング!」


『アカガネ、翅を代って』


『うん。やっちゃえ、クモガネ!』


 翅が代わり残りの白い翅も氷の刃を飛ばして追撃をする。


『おいで、私の玩具ちゃん!』


 地面からゴツゴツした見た目の蟻モンスターが出現して、クモガネが放った氷の刃が受け止められた。


『良い働きよ、玩具ちゃんたち。アハハハ!』


 倒されていった仲間を見下してクイーンアントは高笑いをした。

 仮にも仲間なのに玩具呼びって……性格ひん曲がってんな。


『私に牙を向いたことを後悔なさーい!』 


 合図一つで色んな見た目をした蟻モンスターが大量に湧いてくる。

 出し惜しみしてられないないか。

 俺は最初にビートル隊を呼び出す。


「暴れてこい、ビートル隊!」


『『『お任せを!』』』


 ビートル隊はそれぞれの属性を纏い、蟻モンスターに突撃して蹴散らしていく。

 その隙にコガネとクロガネとニアを呼び出す。


『あら? あらあら? 私の眷族じゃなーい!』


 コガネの後にクロガネを呼び出すとマザーアントは声をあげる。

 ぶるっと震えたクロガネは俺の後ろに隠れた。


『そんな貧弱な人間より、私に従いなさい。なんなら、その人間を裏切るなら幹部にしてあげるわーよ?』


「は? 何言って――」


『……は?』


 クロガネから聞いたことないほどのひっくい声で俺の声が遮られ、後ろに隠れていたクロガネが前に出る。


『私が裏切るとでも?』


『裏切るわーよ。なぜなら、貴方は私の眷族であるクイーンアントの娘なーの』


『どういうこと?』


『私が来た時にはもう貴方は連れ去れていたーの。やっと会えた孫娘よ』


 クロガネが俺を見てくる。


『本当なのハルナ?』


「嘘に決まってんだろう。最初に手を出したのはクイーンアントだ。詳細は省くけど……クイーンアントを倒した後、クイーンビーが巣を確認しに行ったら、クロガネが卵状態で放置されていたんだって。クイーンビーはなんとか孵化させようとしたけど無理だったから、俺が預かって孵化させたんだ」


『矮小な分際の戯言に耳を傾けるのではない! 我らは家族ではないか!』


『家族……』


 クロガネは俺の方に向き、足元まで歩いて見上げてくる。


「く、クロガネ……?」


『後で話してよね……ハルナ』


「おう。これが終わったら話すよ」


『私を選ぶのよ! 家族でしょ!』


 マザーアントは地団駄を踏む。


『あんたなんか家族と思わない。私の家族はハルナたちよ!』


『小娘の分際で! 私に舐めた口を聞いたことを後悔するがいい! 私の邪眼をみよ!』


 マザーアントは目をカッと開いた。


『この邪眼を見たものは私の玩具になるのよ! さぁそいつを殺せ!』


 マザーアントの命令が響き渡るがなにも起きない。


『なんで? なんで? なんで私の命令を聞かないの!』


 あたふたするマザーアントを無視して無事を確かめる。


「コガネとクロガネは平気そう?」


『なんともない、けど?』


『私も……』


 遠くで離れて戦っているビートル隊も異状なく蟻モンスターと戦っている。


「みんな無事そうだな。今のうちにコガネとクロガネも【共鳴】してくれ」


 コガネとクロガネも共鳴をしてもらうと、マザーアントが怒った形相で睨んでくる。


『オベロン様の力が通じないなんてありえない! 全員ぶっ殺して――ま、眩しい……!』 


 上空の方で眩しい光が放たれ、ゆっくりと俺の目の前に降りてくる。

 光が収まると、煌びやかなドレスを着ているような姿に生まれ変わるシロガネが立っていた。

 黄色と黒だったのが大分薄くなった色合いになってる。それに頭には透明な冠を付けている。


「エンプレスレグナンドビー……かっけぇじゃんシロガネ」


『もう誰も傷つけさせない』


 そう言いシロガネは黒い球体と一体化した。




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