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第245話

「さっさと殺せ!」


 船長が出てきたことで海賊たちの士気が上がり、攻撃力のバフが掛かる。

 ここからが本番だな。


「ウィル! 海賊たちの攻撃力が上がってるから気を付けろよ!」


「分かって、ます!」


 ウィルは海賊を押し退けそのままの勢いで剣で斬りつける。


『ハルナ! 怖い人間、寝ないよ!』


 涙声でニアが飛んでくる。

 海賊たちを見ると、数人の海賊が布で口と鼻を覆っていた。

 ニアの対策をしてきているな。船長の指示なんだろう。こんな混戦状態なのによく見てる。


「ニア、【共鳴】をしてくれるか?」


『うん!』


 ニアと共鳴をして俺の周りに結晶の蝶たちが舞う。


『主! 我らをお使い下さい!』


 アインとツヴァイとドライが【共鳴】し、球体は一つになり俺の身長ぐらい戦槌が現れる。


『『『主! 我もお使い下さい!』』』


 今度はフィーアとフュンとゼクスの三体も【共鳴】して一つになると俺の腰辺りに機械の小型甲虫が六機装着される。

 小型甲虫は自立で動き出し俺の周りを漂う。ニアの結晶蝶もいるから少し賑わっているな。 


「死ねええええ! ぐはっ!?」


 海賊が剣を振り下ろそうとすると、小型甲虫が展開してあっという間にボッコボコにして撃退していく。

 攻撃力はそんなないけど手数で圧倒したんだな。


「そんじゃこっちも使ってみるか」


 軽く振り回してみる。

 見た目に反して意外と軽いし、振り回しやすい。


「とりあえず、ぶっ飛べ!」


 柄にあるグリップを一回捻り、地面を思いっ切り打ち付けると氷の棘が生えてきて固まってる海賊を一掃した。


『僕の経験値! 横取りしないでよハルナ!』


 前足を上げて怒っている様子のコガネ。

 横取りって……どれがコガネの獲物なのか知らんって。


「いつもまで時間を掛けているんだ! 役立たずが!」


 船長は懐から何かを取り出して掲げると、海賊たちの様子がおかしくなり、醜い姿に変貌する。

 使えないからと言ってこんな姿にさせるとかブラック企業かよ。

 迫りくる海賊を思いっ切りぶん殴るが、海賊は軽々と受け止められた。 


「パワーも上がって、防御力も上がってんのかよ……!」


『主! 今こそ我々の力を!』


「行くぞ! 【共鳴技・グラビティインパクト!】」


 戦槌を掴んでいる海賊の足元の床に罅が入り、底が抜け落ちていった。

 高く飛び、戦槌を振り下ろしもう一体の海賊も底が抜けて落ちていく。

 戦槌に触れた敵の重力を操作出来る能力がアインとツヴァイとドライの共鳴技。


「あいつに近づくな! 銃を使え!」


 船長が指示を出すと、海賊の動きが変わり銃を構える。


「フィーア! フュン! ゼクス!」


『『『いつでも!』』』


「【共鳴技・オールカウンター】」


 六機の小型甲虫は光る線で繋がり、かなり大きい障壁を作りだす。

 銃弾は障壁に吸い込まれ、加速して海賊に返っていく。

 フィーアとフュンとゼクスの共鳴技は物理攻撃と魔法攻撃を受けた倍のダメージで相手に返すカウンター技だ。 


「小癪な真似を……!」


 変貌した海賊にも慣れ、船長の作戦を潰していき圧倒していく。


「ここで死ぬぐらいなら! 貴様らごと道連れにしてやる!」


 嫌な予感がして船長の元に駆け出すが海賊が立ちはだかる。

 すると、目の前にハガネが飛んで来て【共鳴】し、腰に刀が装着された。

 俺は柄の部分に手を添える。


「【共鳴技・神速一閃】!!」


 目にも止まらない速さで高い防御力を持っている海賊を斬り倒していく。

 壁を抜け船長のところまで行くと、胸に剣を刺して不敵な笑顔を浮かべていた。


「少し遅かったな……」


 そう言って船長は倒れ込むと、死体を中心に魔法陣が生成され、周りのモノを吸い込みながら黒い球体が大きくなっていく。


「ビートル隊は三人を回収して上空に避難してくれ。他は共鳴してくれ」


 急いで指示を出して赤と白の翅を展開、ウィルを回収して上空に飛び立つ。

 黒い球体は船長が乗っていた船をほとんど飲み込み、残りの二隻を飲み込み始めた。


「春名! 一体どうしたんだよ、これ!」


「俺も知るかよ。船長がなんかしたんだ」


「逃げた方がいいんじゃないか?」


「そうだな。逃げるぞ!」


 飛んで逃げようとしたら見えない壁に衝突した。


「なんだ、この壁?」


「春名! 転移も使えないよ!」


「マジか……」


 見下ろすと船三隻を飲み込んだ黒い球体は海に落ちると、特大の水柱が噴き出て中から禍々しい怪物が出現した。





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