第243話
翌日、朝早く起きた俺は寝ている二人を起こさないように朝飯を済まし、二人分も作りゲームを始めた。
「パーティー募集中! どなたか! 一緒に行きませんか!」
「火力出る人を一人募集!!」
「誰かポーションを売ってくれ!」
あちらこちらでプレイヤー達の声が聞こえる。
結構カオスな状態だな。
「もうポーションないのか!」
「すみません! もう品切れで……」
「なんだと!」
お店の中から外に聞こえる程の怒鳴り声も聞こえてくる。製作系のプレイヤーたちは可哀想だ。
……この様だとまだ討伐はされていないな。
拠点に転移すると、日課の素振りをしているウィルと、それを見守っている雫恩がいた。
「おはよう雫恩。来るの早いね」
「おはようございます。春名さんこそお早いのですね」
「色々やることあるから寝てる二人を置いて先に来たんだよ。雫恩は何してんのさ? こんな朝早くから」
「色々していましたの。あまり深くは聞かないでください」
「そうですか」
「ハルナさん!」
素振りを終えたウィルが俺に気づいて手を振って歩いてくる。
「ハルナさん、おはようございます。お二人とも朝食まだなら一緒に食べませんか?」
「私もよろしいの?」
「ええ。皆で食べた方が楽しいじゃないですか」
「じゃあ俺が作る――」
「あ、僕が作るんで二人は座って待っててくださいね。先にシャワー浴びてきます」
俺と雫恩は大人しく座っていると、ラフな格好に着替えたウィルが戻ってきて料理を作り始める。
「お待たせしました。口に合えばいいんですけど……」
俺と雫恩はスプーンを取り、一口食べる。
「あ、うん。普通に美味いよ」
「ええ。美味しいですわ」
「良かった……」
ウィルは胸を撫でおろした。
俺は直ぐに食べ終え立ち上がり食器を流しに運ぶ。
「ご馳走様。美味かったよウィル。んじゃ俺は外にいるからなんかあったら呼んで」
「はい」
外に出てさっそくビートル隊を呼び出す。
「よし、みんな揃っているな」
『主、何かご用で?』
インベントリから六体が進化するために使った石を取り出す。
「お待たせ、これでようやく進化が出来るぜ」
『『『おおおお!』』』
「順番に渡すぞー」
喜んでいるアインたちの前に順番に進化の石を置いて行く。
アインたちは石に触れ眩しい光を放つ。
……六体同時に進化は眩し過ぎる。
「おー、見事に見た目が分かれたな」
アインとツヴァイとドライの三体は体格がかなり大きくなってパワー型のヘビィ系に進化。
フィーアとフュンとゼクスの三体は少しだけ体格が小さくなりスピード型のライト系に進化した。
連携系のスキルは覚えているけど大丈夫だろうか……
「アイン、連携の打ち合わせとか大丈夫か?」
『少し心配なのだが……主、時間を少しばかり頂いても?』
「納得が出来るまでやってくれ」
『感謝します主。おーい、集まってくれ』
アインはビートル隊を引き連れて木人の前に飛んでいった。
よし、次はコガネだな。
俺は残り全員を呼び出した。
……ディルたちはペナルティでまだ召喚できないよな。
「みんな、コガネの進化に協力してくれ」
『先ずはアオガネ、一緒に来て』
『ぼ、僕? わ、分かった……』
コガネはアオガネの頭に乗り、少し離れたところに行き、アオガネから水属性のスキルをスキル【物真似】を使って覚えていく。
スキル【物真似】は効果や威力を半減にしてスキルを習得する、かなり特殊なスキルだ。
このスキルがあればトランススパイダーに進化出来るな。
隣に飛んできたシロガネが尋ねる。
『自由にしてていい?』
「おう。みんなも自由でいいからな~」
そう伝えると、各々好きなことをし始める。
地面に座ってコガネのことを見守っているとハガネが目の前を飛び回る。
「どうした?」
そう聞くと、ハガネは地面に着地して見上げてくるから、俺はハガネを持ち上げて膝の上に乗せた。
『……』
膝の上に乗せてもハガネは何も話そうとしない。
「もしかして……」
インベントリから琥珀石を取り出す。
「進化したい……とか?」
ハガネはじっと見つめてきて、こくんと頷くと、顎の先で琥珀石に触れた途端、ハガネは光を放つ。
光が収まると、オレンジ色の甲殻を持つアンバースタッグビートルに進化した。
デカくなると思っていたけど、少し大きくなっただけだ。あの大きさは特殊個体だったからかもしれないな。
「進化おめでとうハガネ。それと、遅くなってごめんな」
ハガネは首を傾げる。
「なんでもないよ」
俺はハガネの頭を優しく撫でる。
進化したアインたちとハガネのスキルを確認しながらコガネがスキルを習得するのを座って待つことにした。




