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第242話

 ヴェルガの家について、少し落ち着いてからヴェルガが尋ねてくる。


「話を聞かせてくれるかい?」


「何から話そうか……ヴェルガはさ、このエリアのボスモンスターのことはどこまで知っている?」


「この前、討伐されたティターニアのこと?」


 俺は頷く。


「樹海を支配をしているってことぐらいしか……」


「オベロンってボスモンスターは知らない感じ?」


「オベロン? 初めて聞く名前だね」


 ヴェルガは知らない様子。

 てことは、オベロンの存在を知っているのは俺だけか。


「今の言い方だと、そのボスモンスターが出現したっこと?」


「そう。ニアの共鳴技のおかげで逃げれたんだけど……ちょっと樹海がやばそうなんだ」


「どういうこと?」


 ヴェルガに説明しようとしたら、凄い勢いで玄関のドアが叩かれた。

 ヴェルガがドアを開けると、同僚の人で慌てている様子。


「ヴェルガ、緊急招集だ! 急いで来てくれ!」


「わかった」


「俺もついて行くよ。説明……って言っても知っている情報は少ないけど、必要でしょ?」


「ありがとうハルナ。一緒に本部に来てくれ」


 同僚の後を追いかけて、本部に向かっている最中に颯音からメッセージが届く。


『春名! 今どこに居んだよ! 樹海が大変なことになってるぞ!』


「知ってる。今街にいる。颯音たちは?」


『雫恩のレベル上げを中断して、今は拠点に戻ってきてる』


 全員無事みたいだな。とりあえず、一安心だ。


『街にいるんだろう? 転移していくよ』


「あ、おい!」


 制止する前に颯音が転移してきて、ルーシャさんとモレルさん、海都と雫恩が続けて転移してきた。

 俺は軽く溜息をする。

 ……本当は全員拠点で待機してほしかったけど、まぁ来てしまったなら仕方ない。


「来てもらって悪いけど、ちょっと用事あるから待ってて。ヴェルガ、早く行こう」


 ヴェルガは五人に軽く会釈してから本部に向かう。

 本部に着くと、ピリッとした空気が張り詰めていた。


「隊長! ヴェルガを連れてきました!」


「うぬ。ん? そちらの方は?」


 隊長と呼ばれたNPCと目が合う。


「友人のハルナと申します。この件でお伝えしたいことが」


「俺が言うよヴェルガ」


 そう言って隊長の前にでる。


「ハルナって言います。えっと……」


「ドラエルだ」


「ドラエルさんって呼びますね。俺が知っている情報をお伝えします。ただ、そっちの情報も教えてください」


 隊長の眉がぴくっと動く。


「お、おい、ハルナ……」


「いいだろう。有益な情報じゃなければ摘まみだす」


「そう来なくちゃ!」


 俺はこの場合にいる全員に情報を伝えた。


「なるほど……知られざるボスモンスターが出現したのか……」


「能力的に樹海全体がボスモンスターの武器かもしれない。俺の情報はこんなもんだ。今度はそっちの番だぜ?」


「よろしいですのか、隊長?」


「構わん。ボスモンスターが出現したなら我々の手には追えん。我々が知っているのは樹海全体が蠢き、マップが機能しないのと、モンスターのレベルが樹海手前でも上限に到達しているのは確認済みだ。それと、樹海が街に向かって侵食し始めている」


「うわ……何それめんどくさい……」


 ドラエルさんの情報を知って俺はげんなりする。


「我々は街の防衛に専念する。ボスモンスターの討伐はプレイヤーたちに任せよ。直ちに、緊急依頼を出せ!」


「はっ!」


「じゃあ俺はこれで」


「ハルナ」


 慌ただしくなり俺はそっと部屋を出ようとするとヴェルガに呼び止められた。


「ハルナ、討伐に行くんだろう?」


「勿論。仲間をやられたんだ、その分を返さないと」


「あんまり無理しないでよ?」


「それは……ちょっとわかんないかも」


「そういうと思ったよ。手を出してくれるかい?」


 ヴェルガは掌に色とりどりの丸いものを置き、それを見て俺は驚く。


「え、これって進化の石? なんで……? それにこの量は一体……」


「偶然、市場見つけてね。これを使ってくれハルナ」


「ありがとうヴェルガ。使わせてもらうよ」


 進化の石をインベントリに仕舞い、外で待っている颯音たちの元に向かう。

 外は慌ただしくなっていて零時前なのにプレイヤーが沢山ログインしていた。

 それと、ドラエルさんが部下に命じた緊急依頼の内容が聞こえてくる。

 ……お祭り騒ぎだな。


「お待たせ、大体のことは把握している感じであってる?」


 そう聞くと五人は頷き、モレルさんが言う。


「この後、行くんだよね? 私たち、そろそろ落ちないといけないんだよ」


「明日も仕事ですもんね」


「ごめんね……」


「謝らないでくださいよモレルさん、ルーシャさん」


 颯音が二人に尋ねる。


「仕事は何時ぐらいに終わる感じですか?」


「夕方の五時に終わって、帰宅するから六時ぐらいにはインは出来るかな」


「電車が遅れなければそれぐらい」


「なら、二人が来てから行きませんか? 春名もそれでいいよね?」


「うーん、悪魔の島みたいに長期になるだろうし、いいんじゃね? 色々と準備したいしね。海都もそれでいいだろう?」


「俺はどっちでもいい」


「私は拠点で待機して、ウィル君と仲良くしていますわ!」


「そ、そうか……」


 苦笑いをする海都。


「よし。話も纏まったし、今日は解散!」


「おやすみ皆~」


「またね~」


 モレルさんとルーシャさんが先にログアウトしてから俺たちもログアウトした。



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― 新着の感想 ―
[一言] 蟲の王が嫌われてた理由は他者を見下す傲慢さとすぐ暴走するところから来てるのですねぇ... 前回もあげたのはティターニアなのに返してもらうとかよく分からないこと言ってるし 究極進化を使ったこと…
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