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第241話

 ニアが相手の動きを封じ、コガネが止めを刺してを繰り返し、二体のレベルはどんどん上がっていく。

 危険な場面も何度かあったけど、二体は俺に助けを借りずに乗り越えていった。

 ……物凄くハラハラしたけどね。

 一時間ぐらいレベル上げをしてようやくコガネとニアはレベル18までになった。

 スキルを確認すると、二体とも『共鳴』を覚えていた。


「コガネ! ちょっと来てくれ!」


 少し遠くにいるコガネを呼ぶと、少し面倒くさそうな表情で歩いてくる。

 後ろからニアもついてくる。


『何か用?』


「用っていうか、『共鳴』を使ってほしんだけど……」


『面倒くさいから嫌だ』


「ええ……いいじゃん、減るもんじゃないし。少しだけ、少しだけやってくれないか?」


『もう、仕方ないな』


 コガネは共鳴を使い黒い球体と一体化する。

 エレキスパイダーの時は黄色だったけど、今は黒色のまま。

 コガネがなろうとしているトランススパイダーはどんな感じになるか楽しみだな。

 両手の甲にリールが付いた特殊な革手袋に変わる。

 ……なんか久しぶりな気がする。最近は武器に嵌めて使っていたからな。


『ニアもする!』


 ニアは光の粒子になり余っている黒い球体に吸い込まれて行くと、白い線で蝶のシルエットが浮かび上がる。

 ニアの球体が一瞬光ると、結晶の蝶に分裂して俺の周りに漂う。


「これがニアの共鳴か、綺麗だな。ディルたちもレベルはどうか……は?」


 ディルたちのステータスを確認していると、四体の体力は一気に無くなり、赤い表記で再召喚に二十四時間必要と書かれていた。


『オ主カ、我ラノ同胞ヲ誑カシタ人間ハ』


 木の上から声が聞こえ見上げると、そこには黄金のような長髪で豪華そうなローブを身に纏っている男性が見下ろしていた。


『答エロ、人間』


 この威圧感……ティターニアの時と似ている。あいつがディルたちが言っていた王か?

 こっそりと確認すると、男性の名前はオベロン。その横にはボスモンスターと書かれていた。


『ン? オ主……』


 一瞬で間合いを詰められジロジロと見てくる。


『面白イ! アヤツノ加護を持ッテイル人間がイルトハ!』


 不敵な笑みを零すオベロン。


『人間ガモッテヨイ代物デハナイ。返シテモラウゾ!』


 オベロンの手が頭に届きそうな時、左手が勝手に動きだしワイヤーが伸び、オベロンから距離を取ることが出来た。


『なにをぼさっとしているんだよ! 逃げるよハルナ!』


「わ、わかった」


 俺は猛ダッシュで駆け出す。 


『逃ゲレルト思ッテイルノカ人間!』


 地面から木の根が伸び、全方位から襲ってくる。


『アカガネ、クモガネ。早く翅を!』


『分かってるよ!』


 赤と白の翅が展開され、木の根の攻撃を避けながら、空に向かって飛んでいく。

 どうにか樹海を抜け出して見下ろすと、樹海全体が蠢いていた。


『逃レヌト言ッタ筈ダ!』


 いつのまにか後ろにいたオベロンが一撃を繰り出そうとしていた。


「まんまと引っかかってやんの、ばーか」


 俺の体が結晶の蝶になり分裂して消える。


『我ヲ欺クトハ面白イ……』


 オベロンの高笑いが響き渡る。






 ――街にでる裏口の前。


「ヴェルガ、そろそろ交代の時間だ」


「特には異常はなし」


「了解した」


 詰め所に戻るヴェルガの目の前に一匹のキラキラ光る蝶が飛んでくる。


「モンスター?」


 警戒するヴェルガの目の前で蝶は眩い光を放つと人の姿に変わる。


「は、ハルナ?!」


「よっす……はぁ~……やばかった」


「何があったんだよ?」


「……今日はもう仕事終わり?」


 ヴェルガは頷く。


「家に行っていい?」


「構わないよ。詰め所に戻って報告してくるからちょっと待ってて」


「わかった。ここで休んでいるから待ってるよ」


 ヴェルガは走り去っていく中、俺は壁に寄りかかり待つことに。

 ヴェルガは直ぐに戻ってきて駆け寄ってくる。


「お待たせ」


 俺は立ち上がり、一緒にヴェルガの家に向かった。






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