第240話
樹海エリアに転移した俺たちはパーティーを組み、街の外に出る。
そこで雫恩には動きに慣れるためにレベルが低いモンスターと対峙してもらうことにした。
最初の相手は動きが遅いスライムからだ。
対峙した雫恩は箸ぐらいの長さの杖を右手に持ち構える。
「【ウォーターバレット】!!」
水の弾丸が放たれ、スライムに命中。
まだまだスライムの体力はある。
雫恩は連続で水の弾丸を撃ち込みようやくスライムの体力はなくなった。
息を整える雫恩に海都が言葉をかける。
「緊張し過ぎだ。もうちょっと肩の力を抜け」
「分かっていますわよ。次は問題ありませんわ」
雫恩は次のスライムの前に行きスライムを対峙して倒し、雫恩のレベルが上がった。
雫恩のジョブはマジシャンだ。
このゲームの魔法職はちょっと変わっていて、初めはマジシャンから始まるが、属性の使用頻度によってマジシャンから派生して新たなジョブになれるシステム。そんで、レベルをカンストさせ上位職に転職が出来るのだ。
エレナさんのデュアルキャスターは二つの属性を同じぐらいに使い続ければなれるそうだ。さっき雫恩から聞いて初めて知った。
「スキルどれにするか決めているのか?」
「もう決めていますわ」
そう言って雫恩は杖を構え、少し離れている角の生えたウサギのモンスターに狙い澄まし、火球を放った。
だけど、モンスターは火球を軽く避けて逃げ去ってしまう。
「意外と難しいですわね……」
「練習すれば慣れるさ」
「そうですわね!」
雫恩のことは海都に任せて俺はコガネを呼びだした。
「コガネ、俺たちもレベル上げしようか」
そういうとコガネは頭に乗っかってきた。
後ろからモレルさんが話しかけてくる。
「ハルナ君、その蜘蛛は新しい仲間? 拠点の時に聞きそびれちゃって」
「あー説明してませんでしたね。これ、コガネですよ」
「ええええええ!?」
モレルさんの驚いた声が響き渡る。
「説明するんで落ち着いたくださいモレルさん」
「あ、ごめんね」
「私も聞く!」
「俺も聞いてないんだけど」
俺はモレルさんとルーシャさんと海都に簡単に説明した。
「お前、またチートスキルを」
「うん、見事なまでにチートだね」
「ハルナ、チート」
「はいはい。いくらでも言ってくれ」
俺は立ち上がる。
「雫恩のレベル上げ被っちゃうし、俺は別行動するよ」
俺は全員を呼びだした。
「凄い……!」
「これが俺の自慢の仲間。またあとでな」
驚いている雫恩に手を振って歩き出すと、コガネとニアたち以外の【共鳴】が出来るメンバーは共鳴をしてくれた。
パーティーを抜けて森に入り少しだけモンスターのレベルが高いところに向かった。
「よし、じゃあとりあえずコガネとニアたちのレベル上げをしよう。なんかあったら呼べよな」
『女王様、行きますよ』
『嫌だ! ハルナといる!』
ニアは俺の服を掴んで離れようとしない。
「ニアのことは見てるから、ディルたちはレベル上げに行って来たら?」
『女王……』
『行かないったら行かない!』
ディルは深いため息をする。
『女王のこと任せるぞ』
「行ってらっしゃい~」
俺はディルたちに手を振って見送った。
コガネは頭から飛び降りて歩き出して木を登り始めた。
見上げると木の上に止まっている鳥のモンスターがいる。
レベル差はあるけど、大丈夫かな?
コガネはモンスターに気付かれる前に糸を飛ばして、動きを阻害する。
モンスターはパニック状態になり地面に落ちると、ニアが近づいて鱗粉をばら撒き始めた。
すると、モンスターの動きが遅くなり動かなくなってしまった。
近づいて確かめるとモンスターは睡眠状態だった。
「【眠りの鱗粉】か。エグイスキル覚えたな」
ニアのスキルを改めてみると、【眠りの鱗粉】の他に【麻痺の鱗粉】【毒の鱗粉】【飛行】の四つのスキルを覚えていた。
……完全にサポート型だな。なんか昔のコガネのようなスキル構成だ。
木の上からコガネが降りてきて、モンスターに止めを刺した。
『ナイスじゃんニア』
『えへへ!』
コガネとニアはハイタッチをした。
ディルと行くのは嫌がったのにコガネはいいのか。
……なんかあるのかな?
『よし、次いこう!』
『おーう』
楽しそうにする二人を俺は後ろからついて行きレベル上げを見守った。




