第239話
「クラン名はテイマーズ……と、言うことはお二人も海都さんみたいにモンスターを仲間にしておりますの?」
雫恩を俺たちのクランに加入してもらうとそんなことを聞かれた。
「えっと……俺のはそこにいる蜘蛛と甲虫たちと蟻と……」
まだ串焼きを食っているコガネ、苗木の周りにいるアインたち、洞窟から出てきたクロガネを順番に指さす。
「あと、他にも十二体のモンスターを仲間にしているぜ」
「春名は虫系のモンスターしか仲間にしてないんだ」
隣から颯音が会話に割り込む。
「海都さんが虫が苦手かどうか聞いてきたのはこのことだったのですね」
「虫が苦手な人が多いから海都に聞いてもらったんだよ」
「そうでしたの。それにしても……十九体? モンスターってそんなに簡単に仲間になりますの?」
「春名がチートスキル持ってるだけだ」
今度は海都が茶々を入れてくる。
「チートじゃねぇから。はい、次は颯音の番」
「流したなぁ。まぁいいけど。ヒスイ! ギン!」
颯音の両隣に二体の狼がお座りをする。
「大きい……それにモフモフ! さ、触ってもよろしいですの!」
「え、あ、うん。二体が嫌がらなければ……」
少し興奮気味に聞く雫恩に、若干引き気味の颯音は承諾した。
雫恩はゆっくり触り、二体が嫌がらないようにモフモフを堪能する。
「おお、みんな揃ってるね!」
家の方からモレルさんの声が聞こえ、顔を向けるとルーシャさんも後ろにいた。
「モレルさん、ルーシャさん。こんば――」
「ハルナくんハルナくん! あのでっかい狼ってヒスイとギンなの!」
モレルさんもかなり興奮して聞いてくる。
女性の人ってモフモフに弱いのかな?
「え、ええ。最終進化したヒスイとギンです。触りたいのなら颯音に聞いてください」
「うん! わかった!」
モレルさんは早速、颯音の元に駆けて行った。
「ハヤトくん! 二体を触ってもいいかな!」
「構わないですけど、順番にお願いします」
「順番?」
モレルさんが二体の方を見ると、満喫した雫恩が歩いてくる。
モレルさんに気が付いた雫恩がモレルさんに会釈した。
「颯音さん、ありがとうございましたわ。それで、こちらの方は?」
「クランメンバーのモレルさんと、あっちに居るのがルーシャさん」
「そうでしたの。初めまして本日加入しました雫恩と申します。よろしくお願いいたしますモレルさん、ルーシャさん」
「女の子だ! 嬉しい! こちらこそよろしくねシオンちゃん!」
「ルーシャだよ、よろしく」
三人は軽く自己紹介を済ますと、モレルさんが尋ねてくる。
「シオンちゃんって三人とリアルでは会ったことあるの?」
「俺と颯音はさっき会ったばかりです。ちなみに、二人は許婚の関係ですよ」
「あ、おい! ばらすな!」
「「おおおお!」」
盛り上がるモレルさんとルーシャさん。
「シオンちゃん! そこの話を詳しく!」
ガシッと腕を掴まれた雫恩はモレルさんとルーシャさんに拉致られて家の中に入っていった。
「春名が余計なことをいわなければ……」
「そ、そうだな……すまん」
しばらくして疲れ切った雫恩とニッコニコの二人が戻ってくる。
「雫恩も戻ってきたし、当初の予定通りレベル上げに行きますか。モレルさんとルーシャさんも一緒にきます?」
「行く行く! ルーシャも行くよね?」
「夜遅くまで出来ないけど行く」
「明日も会社ですもんね。頑張ってください」
「夏休みが羨ましい! 学生に戻りたい……」
溜息をつくモレルさんを放置して話しを進めた。
「そんじゃあ樹海エリアに行きますか。雫恩もそれでいいよな?」
「ええ、構いませんわ」
「慣れるために戦闘は雫恩にやってもらって、なんかあったらサポートする感じで」
「春名、なんかリーダーみたい」
「誰かさんのせいでリーダーにされたけどな!」
「痛っ! 殴ることないじゃん!」
「はいはい、行くぞ」
俺と颯音と海都はモンスターを戻し、順番に転移装置に触り、樹海エリアに転移した。




