第238話
コガネが取得した進化先のトランススパイダーを改めてみると、進化条件は既に判明していた。
進化条件は属性系のスキルを九個取得とレベル30と、他の進化先よりも割かし条件は厳しめだな。
コガネの今のスキルは【ねばねばの糸】【吸血】の二つと、何故か【雷の牙】を覚えていた。
【雷の牙】はエレキスパイダーの時に覚えていたスキルのはず。退化した時に引き継いだのかもしれない。
ということは、残り八個になるのか。
「大変だと思うけど、コガネがそう決めたなら俺も手伝うよ。必要なものがあれば遠慮なく……と思ったけどいつも遠慮なかったな。どんどん言ってくれよコガネ」
『え……特にないけど?』
「なんもないの? 本気で?」
『うん。どっちかというとクモガネやアカガネ、アオガネやビートル隊……あ、ヒスイとギンとリュウオウの協力が必要かな』
「そ、そうか……」
なんか複雑な気持ちになって少し落ち込む。
『ハルナ、お腹空いた。串焼き食べたい!』
コガネは俺の頭に乗って要求してくる。
いつも通りのコガネだな。
「あんまりストックないから少しだけだぞ」
インベントリから串焼きを取り出すと、コガネが頭から降り際に串焼きを咥え持っていく。
俺は立ち上がり部屋を出ると、丁度部屋から出てきたウィルと鉢合わせになる。
「おかえりなさいハルナさん、はぁ~……」
「眠そうだな」
「ちょっと、寝落ちしてしまって……シャワーを浴びてから改めて寝ます」
「そうか」
「ハルナさんは……え?」
驚いているウィルの視線を追うと退化したコガネを見ていた。
「コガネ……ですよね? 小さい……」
「今はスパイダーになってな」
コガネはウィルの頭に飛び乗って玄関のドアを指差す。
『レッツゴー!』
「あの……コガネは何を伝えようとしているんですか?」
「あー……気にすんな。コガネ、ウィルを困らせるな」
ウィルの頭からコガネを持ち上げて家の外に連れて行く。
外に出ると颯音が走ってくる。
「その様子だと春名は納得した感じ?」
「まぁな」
「じゃあ詳細聞いてもいいよね?」
俺は颯音にあの時の出来事を話した。
話し終えると颯音はジト目を向けてくる。
「なんだよ……」
「春名がまたチートスキルを手に入れてんなって思っただけ。ヒスイとギンの協力が必要になったら言って、俺も手伝うよ」
「助かるよ颯音」
そんな話をしていると海都からメッセージが届きあと数十分で拠点に着くそうだ。
それと、雫恩は黒くてカサカサした奴以外なら平気と教えてもらった。
……じゃあみんなを出しても問題ないな。
「海都と雫恩が来る前にやっちゃいますか」
沼地エリアで採取した木材を梁にクラフトしていく。
必要数を製作し終わってからクロガネを呼びだした。
「クロガネ、一応準備は出来たけど、どこに作るか決めているか?」
クロガネは頷くと、テクテク歩いていく。
追い駆けると、拠点より少し歩いたところで止まった。
『ここでいい』
クロガネが指定した場所に洞窟を設置する。
地面が少し盛り上がり人が一人ぐらい入れる穴が出来た。
洞窟の中は松明が点々と設置されている。奥の方はほとんど見えない。
どこまで続いてんだろうな。
クロガネは俺の横を通って洞窟の中に入っていった。
「この洞窟なんなの? ダンジョン的な奴?」
横から颯音が聞いてくる。
「ダンジョンを作れる訳ないだろうが。クロガネ専用の鉱石を掘れる洞窟だよ」
「へぇー、そんなもんまで作れるんだな」
颯音の話を聞きながら手を動かしていく。
今度はビートル隊の大木だな。俺はビートル隊を全員呼びだした。
「これから苗を埋めていくけど、場所指定とかあるか?」
ビートル隊は一斉に飛び立ち、バラバラな場所を指定する。
まぁ苗はちょっど六個あるから良いか。
俺は順番に苗を埋めていく。
「あとは数日経てば育つからもうちょっと待ってくれよ?」
『主! 感謝する!』
アインが代表でお礼を言い、他の五体も頭を下げた。
「春名、リュウオウが戻ってきたよ」
颯音に言われ浜辺を見ると、海都を乗せてリュウオウが浜辺を歩いてくる。
リュウオウは俺たちの前で止まると、背中から海都が降り、初期装備の女性が海都の手に掴まり降りた。
雫恩だと思うけど、リアルの時はストレートで先の方がカールされてる髪形だったけど、今ではミディアムぐらいの短さになっていた。
「えっと、雫恩……だよな? 髪形変えた?」
「ええ、少し気分転換にと思って。本日はよろしくお願いしますわ春名さん、颯音さん」
雫恩はすっきりとした表情を笑顔を浮かべた。




