第234話
「マザースパイダーの体力桁違いだなぁ」
改めてマザースパイダーの体力を確認して驚く。
流石眷族ってとこだな。ディルたちも元の姿の時はあんな感じで体力が多いのかな?
落ち着いた時にでも聞いてみよう。
『ハルナ、戦いに集中してる?』
「ちゃんと集中してるよ」
槍を展開してマザースパイダーに向けると、目の前にウインドウ画面が出現。
このエリアでの【女皇蟲の祝福】が無効になりますがよろしいですか? と書かれていた。
こんな注意喚起が出るんだな。
このエリアか……まぁそんなに来る予定もないし構わんか。
俺は【YES】のボタンを押した。
「シャアアアアアアアア!!!」
突然、マザースパイダーが耳を劈く叫び声を上げると森全体が揺れ、木々の隙間から眷族である蜘蛛系のモンスターが姿を見せる。
「やっべぇことしたな、これは……!」
砂煙を立てながら猛ダッシュしてくるマザースパイダーを、赤と白の翅を展開して上空に逃げる。
「げっ!? やばいやばい!」
マザースパイダーは禍々しい口を大きく開いた瞬間、紫色のぶっとい光線を発射され、俺は速度を上げて回避した。
あんな遠距離攻撃を持ってんのか……厄介だな。
「そうポンポンとは打てないようだな……今のうちに」
『ハルナ! 前!』
コガネいに言われ前を見ると数十体にも及ぶ足が全体的に半透明な蜘蛛が迫っていた。
反応が遅れて沢山の蜘蛛に跳び付かれ全身噛まれ、沢山のデバフが付き、共鳴が解除され落下してしまう。
マザースパイダーは下で口を開いて待機している。
「アカガネ! 俺ごと燃やせ!」
『我慢してねハルナ!』
赤い球体から高温な炎が噴き出て俺は炎に飲み込まれ、纏わり付いていた蜘蛛のモンスターは焼き払えた。
すかさず、翅を再展開し、一気に高度を上げる。
『ハルナ、回復は私に任せてあいつに集中』
シロガネが【治癒蜂兵】を召喚して減った体力を回復してくれた。
「サンキュー、シロガネ」
『礼は良いから、前!』
前方から空を飛ぶ蜘蛛が飛んでくる。
マザースパイダーは俺の様子を見ているようだ。
「コガネ、一気に蹴散らすぞ」
『分かってる』
「【共鳴技・スパイダースネットボルト】!!」
電気を纏うワイヤーを一斉に伸ばして飛んでくる蜘蛛のモンスターを引き裂いて行く。
『は、ハルナ……! 湖にモンスターが……!』
一通り倒し終えるととアオガネが慌てた様子で伝えてきて、下を見ると湖の周りにモンスターが集まりだしていた。
「まずいっ! ビートル隊!」
『『『『お任せを!』』』』
ビートル隊は魔導書に吸い込まれ杖になり、杖を手に取り急いで湖の上空に移動する。
湖に入ろうとするモンスターを六種類の魔法を駆使して近づけさせない。
最後の共鳴技を放とうとして唱え始めると、急に空が暗くなり、見上げると地上に居たはずのマザースパイダーが降ってくる。
詠唱をキャンセルして盾を展開して防ごうとしたけど、重すぎて受け止めれず湖に沈んでしまった。
「ごほっ……ごほっ……くっ……」
湖に沈んだ俺はマザースパイダーの眷族の蜘蛛に引き上げられ手足を拘束されてしまう。
マザースパイダーは不敵な笑みを浮かべ、禍々しい口を開く。
……色んなデバフがついたせいで思考が纏わない。
コガネたちが呼びかけているけど、どんどん意識が遠くなっていく。
『まったく、世話が焼けるな~ハルナは』
コガネの声が鮮明に聞こえると、指が勝手に動きメニュー画面を開く。そのままコガネの進化項目に進んでいくと、俺の目の前に『女皇蟲の祝福の効果を使用して、個体名コガネを究極進化させますか?』と表示され、俺の意識と関係なく指が動き『YES』とボタンを押した。
強制的にコガネの共鳴が解除され、コガネから眩い光が放つとマザースパイダーと周囲のモンスターを吹き飛ばした。
俺が湖に落ちる瞬間、何かに支えられ光る床に置かれた。
光が収まると、床じゃなくコガネの背中に乗っていることに気が付く。
「コガネ……?」
コガネはさらに大きくなり、黄色かった体毛は黄金色で足は青色。体のあちらこちらには黄金色の突起物が生えていて、腹部に見たことない紋様が入っていた。
『ハールナ。もう大丈夫?』
「え、ヒガネなのか?」
コガネの隣には、コガネより少し小さく、毒々しく派手な色をしたヒガネの姿があった。




