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第222話

「あ、遅いぞ二人とも!」


 大きい扉の前で待って手を振っている颯音の前で、俺と海都は息を整える。


「ゼェ……ゼェ……お前な、全力で走んなよな! つか、道中のモンスター無視し過ぎ! 俺と海都がどれだけ苦労したか!」


「え!? いちいち倒してたの? 無視すればよかったのにー……痛っ!」


 俺と海都は颯音の頭を小突いた。

 大分落ち着いた俺はは颯音に尋ねる。


「で、ここが中ボスモンスターの部屋なのか?」


「おう。ここなんだけど、今他のプレイヤーが挑んでいるみたいだから入れない」


「そうなんだ。それなら休憩するわ」


 俺は壁を背にして腰を下ろすと、海都も隣に来て座った。

 そんな海都に聞いてみた。


「今日、何階まで行く予定なんだ?」


「うーん、時間かかると思って五階層までだったんだけど、この調子なら十階層かなぁ。まぁ夕飯過ぎちゃうけど」


「途中で出れないの?」


「途中で出ると最後に倒した中ボスモンスターがいる階から再スタート……だっけ?」


「そうだよ」


 颯音は同意する。


「なんかあるのか?」


「あー……兄ちゃんに連絡したいだけなんだけど……まぁあとでも大丈夫だろう」


 駄弁りながら待っているとゆっくりと扉が開く。


「お、終わったみたい。他のプレイヤーが来ないうちに突撃しよ」


「はいよ」


 俺たちが部屋に入ると扉は閉まり、四角い部屋の中心にモンスターが出現した。

 枝のように分かれている氷の角、二メートルぐらいの体格を持ったアイシクルレインディアというモンスターだ。


「来るぞ!」


 中ボスモンスターは雄叫びを上げると前足を持ち上げ地面を蹴ると、広範囲に地面から氷柱が生えてきて、俺たちはそれぞれ避ける。

 俺は盾を回転刃に変形させた。


「アカガネ!」


『はーい!』


 アカガネは回転刃の中心にある窪みに嵌ると、刃の部分から炎が噴き出る。

 俺は体を回転させて思いっ切り回転刃を投げた。

 回転刃は氷柱を切り裂きながらモンスターの方に飛んでいくが、氷の壁が出現して阻まれてしまった。


「ぶっ飛べえええ! 【共鳴技・フルブラストナックル】!」


 いつの間にか接近していた颯音がモンスターの腹部に共鳴技を食らわせ、モンスターは宙に浮きあがる。


「【アストラルノヴァ】!!」


 炎を纏った矢がモンスターに当たると爆炎が広がり、モンスターを包み込んだ。

 俺はその間に回転刃を回収した。

 ドンとモンスターが地面に落ちる。

 モンスターの体力は残り半分。


「一気に畳みかけるぞ!」


 ほぼ一方的にモンスターの体力を削り、あっという間に倒すと部屋の後ろに階段が出現した。


「先行きますか」


 二人は頷き、六階層に向かう。


「へぇー、すっげぇなぁ……」


 階段を上った先は雪原エリアでは全然見ない青空が広がっていて、辺り一面に氷の木々が生えていた。


「ここってクリスタルタワー内……だよな?」


「クリスタルタワー内だよ。事前に調べて知っていたけど、実際に見てみると凄いなぁ~」


「次景色が変わるの十一階だよな。次はなんなの?」


「それは秘密だよ。実際に行ってからの方がいいじゃん?」


「まぁそれもそうだな」


 しばらく散策していると、戦闘音が聞こえ、俺たちは物陰に隠れて様子をみた。

 幹が足のように動き、木の中心に顔面があるモンスター、アイストレントが二体とプレイヤーが四人と対峙していた。

 颯音が小声で尋ねてくる。


「どうする? 援護する?」


「他のプレイヤーの戦闘に勝手に参加するのはマナー違反だからな。それに、苦戦して無さそうだし大丈夫だろう」


「了解」


 俺たちは音を立てないようにその場から離れた。 

 次の階層に行く階段を探して彷徨っていると、モンスターが入ってこられない安全エリアを見つけ休むことにした。

 休んでいると颯音が言う。


「今更だけど、火属性系のスキルを持っているのが二人いると楽だね」


「颯音も火属性系のスキル持ってんだろう? なんで使わないんだ?」


「【烈火の拳】のこと? 転職の時に割り振ってないから使えないよ。SPに余裕あれば取りたいけど」


「ふーん」


 しばらく休んでそろそろ行こうかと思っている矢先、足音が聞こえ警戒しながら待っているとさっきアイストレント二体と対峙していたプレイヤーたちが安全エリアに入ってくる。

 疲れ切っているのか俺たちに気づかずに腰を下ろして目が合い、俺は軽く会釈した。


「先客がいたのか、悪い直ぐに移動するよ」


 鎧姿の人が慌てて体を起こすと、残りメンバーも立ち上がった。


「俺たちそろそろ行くんで使ってください」


「……申し訳ない。助かる」


 少しボロボロな姿に俺は気になり尋ねた。


「回復手段はありますか?」


「あはは……ここに来るまでに使い果たしてしまってね。少し休んでからダンジョンを出るつもりだ」


「そうですか」


 俺はスキル【治癒蜂兵】を使って四人の体力を回復させた。


「君は……ヒーラーなのかい?」


「まぁ違いますけど……それじゃ俺たちはこれで」


「あ、ああ。君! 名前は?」


「俺は春名って言います」


「私はクラン『ブルーフォレスト』のレインだ。この礼は必ずする」


「別にいいんですが……まぁ何処かであったらで」


 それだけ言って俺たちは安全エリアを出て階段探しを再開した。



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