第220話
雪原エリアに転移した俺たちはお店で装備投影をしてから街を出る。
ダンジョンはかなり奥の方にあるらしく時間が掛かるそうでヒスイとギンに乗って向かうことになった。
ギンに颯音、俺と海都がヒスイという割り振りだ。
俺たちを乗せてヒスイとギンは颯爽と雪原を掛けていく。
「うお!? なんだ!?」
「ごめんなさ~~~い!!!」
他のプレイヤーの近くを横切って驚かせ颯音は叫びながら謝った。
ダンジョンに近づいてきたためかプレイヤーの数が増えていっている。
「颯音! そろそろ降りよう!」
「了解! ヒスイ! ギン!」
颯音の合図でヒスイとギンは減速し、止まってから降りた。
「おい、モンスターを連れているぞ」
「テイム成功した奴いるんだ」
プレイヤーたちの声が聞こえて、遠くからこっちを見ている。
「早く移動しよう」
「ヒスイ、ギン」
「「ワフ!」」
二体は颯音と【共鳴】して両腕にある籠手と一体になる。
俺はクモガネのスキル【凍てつく鱗粉】で姿を消してその場から離れた。
少し道を外れて、プレイヤーの姿が居ないのを確認してからスキルを解除。すかさず、シロガネのスキル【治癒蜂兵】で減った体力を回復させた。
そんなことをしていると海都が言う。
「おい、クリスタルタワーが見えてきたぞ」
海都が指差している方を見ると天まで聳え立っている水晶で出来た塔が木々の隙間から見えた。
すっげぇ綺麗だけど太陽が出ている時は直視できなさそうだな。
クリスタルタワーを見据えて進んで行くと、プレイヤーが沢山集まっている広場に出る。
その先にはクリスタルタワーからプレイヤーの列が並んでいた。
ピラミッドの時のように並んでダンジョン内に入るんだな。
「よし、俺たちも行くか」
最後尾に並んでしばらく待っていると上空の方が騒がしいことに気が付き、見上げるとスキルを放ってクリスタルタワーに横穴を開けるプレイヤーや壁を登っているプレイヤーがいた。
その人たちを見ていると前にいた人の呟きが聞こえてくる。
「あいつら、終わったな」
「どういうことですか?」
男性の言葉を聞いて思わずに気になって俺は尋ねた。
「ん? ここのダンジョンは初見か?」
「はい」
「なら、見てればわかるさ」
その男性は上を見るように指をさし、少しすると上空で騒いでいたプレイヤーたちが一斉に魔法陣に飲み込まれて消え去ってしまった。
「このダンジョンの入り口はあの大きな扉だけだ。それ以外で侵入をしようとすると、あんな風に雪原エリアの何処かに飛ばされる仕様だ」
ランダムに転移させられるってことは運が悪ければ強い個体のモンスターが沢山いる最奥に転移される可能性もあるってことだよな。
……中々にエグイ仕様だ。
「お前もやるなよ」
「あれ見てやろうと思いませんよ」
「そりゃそうだ」
「教えて頂きありがとうございました」
「おう、気にするな」
そう言って男性は仲間の方に体を向け話し出した。
俺も二人と適当に駄弁りながら時間を潰していると、列はどんどん進んで行きようやく自分たちの番が来て大きな水晶でできた扉の前に立つと、俺たちは光に包まれ、気が付くと辺り一面が水晶の通路に立っていた。
「すっげぇ! 中、めっちゃ綺麗じゃん!」
「こんな場所、リアルの方でも見たことない……」
二人はそれぞれの反応を見せる。
そんな二人をほっといて俺はマップを見てみると一階と表示されていた。
階段を探して次の階層に行くんだっけなぁ。
「適当に進むか?」
そう聞くと颯音が答える。
「色々と探検したいし、良いと思う」
「俺もそれで」
「じゃあ適当に行きますか。その前に、クモガネ、アイン、アカガネ」
俺は氷属性であるクモガネとアイン、火属性であるアカガネを呼び出す。
他の子たちは寒さに弱いから今回はこの三体かな。
『アカガネ! 熱い!』
クモガネはアカガネから距離を取るために俺の後ろに隠れる。それで、熱さを凌げているか?
『主……我もアカガネ殿の熱さには耐えられない……』
アインも俺の後ろに隠れる。
『私、共鳴してるね』
少し寂しそうなアカガネは【共鳴】を使って黒い球体と一体化する。
「クモガネ、アイン。ちゃんと謝れよ」
そう言うと二体は頷いて【共鳴】を使い、黒い球体と一体となってからアカガネに謝った。
アカガネは二体のことを許したけど、微妙に距離を開けている気がする。
「春名、行くぞー」
「おう」
俺はとりあえず様子見することにして、先に行く二人の後を追った。




